2024年3月6日水曜日

ミニ63 ・・・と数える

2022年3月24日

一つ二つ「と数える」短歌を探してみた。

ただ数える歌ではなく「と」が重要。

「を数える」は対象外として、「と数え」「とかぞえ」「とかぞへ」というテキストで検索した。

他のいいかたをしたものは抽出できていない。


秋の雲「ふわ」と数えることにする 一ふわ二ふわ三ふわの雲

吉川宏志『曳舟』


母を一疋二疋とかぞえやるせなしこの山毛欅の蝉かの楢の蝉

渡辺松男(出典調査中)    ※山毛欅=ぶな


きみたちも1鳩2鳩とかぞへなさい溶けてしまつてゐてもです

平井弘『遣らず』2021


人の死をひとつふたつと数えきて童の歌のななつで終わる

関野裕之『石榴を食らえ』2016


闇だろう 湯船に沈む悲鳴さえ一つ、二つと数えることは

鈴木智子『砂漠の庭師』2018


友の歯をひとつふたつとかぞへつつ白木の箸にひろふ火葬場

小熊秀雄(出典調査中)


数える歌にはおもしろいものが多いし、変わったものを数える歌もあるが、今回は「と数える」のみとした。他の数える歌も別の機会に集めてみたい。



2023年10月18日追記

【1・2と】

人間をいちまいにまいと数へをりフリーキックの撃たるる先の
大松達知『アスタリスク』

砂潜るわれが貝ならあふぎみて鯨は一羽二羽と数へむ
睦月都 短歌・2018年10月号


【ほか】

原発も棺も一基と数へゐるこの世の夜をひたに眠りぬ
飯田彩乃『リヴァーサイド』2018

一隻と数えたくなる雨の日のカラスはふいに首伸ばし喚ぶ
富田睦子『風と雲雀』2020

春ならば抱きしめていいことにする玉と数える野菜のことを
山階基『風にあたる』2019


2024年3月6日追記
【ちがうけど近い】

電柱はそっとかぞえてゆきましょう それがメッセージとなるまえに
杉山モナミ「かばん」2004・6