2022年3月24日
一つ二つ「と数える」短歌を探してみた。
ただ数える歌ではなく「と」が重要。
「を数える」は対象外として、「と数え」「とかぞえ」「とかぞへ」というテキストで検索した。
他のいいかたをしたものは抽出できていない。
秋の雲「ふわ」と数えることにする 一ふわ二ふわ三ふわの雲
吉川宏志『曳舟』
母を一疋二疋とかぞえやるせなしこの山毛欅の蝉かの楢の蝉
渡辺松男(出典調査中) ※山毛欅=ぶな
きみたちも1鳩2鳩とかぞへなさい溶けてしまつてゐてもです
平井弘『遣らず』2021
人の死をひとつふたつと数えきて童の歌のななつで終わる
関野裕之『石榴を食らえ』2016
闇だろう 湯船に沈む悲鳴さえ一つ、二つと数えることは
鈴木智子『砂漠の庭師』2018
友の歯をひとつふたつとかぞへつつ白木の箸にひろふ火葬場
小熊秀雄(出典調査中)
数える歌にはおもしろいものが多いし、変わったものを数える歌もあるが、今回は「と数える」のみとした。他の数える歌も別の機会に集めてみたい。
【1・2と】
人間をいちまいにまいと数へをりフリーキックの撃たるる先の
大松達知『アスタリスク』
砂潜るわれが貝ならあふぎみて鯨は一羽二羽と数へむ
睦月都 短歌・2018年10月号
【ほか】
原発も棺も一基と数へゐるこの世の夜をひたに眠りぬ
飯田彩乃『リヴァーサイド』2018
一隻と数えたくなる雨の日のカラスはふいに首伸ばし喚ぶ
富田睦子『風と雲雀』2020
春ならば抱きしめていいことにする玉と数える野菜のことを
山階基『風にあたる』2019
2024年3月6日追記
【ちがうけど近い】
電柱はそっとかぞえてゆきましょう それがメッセージとなるまえに
杉山モナミ「かばん」2004・6
杉山モナミ「かばん」2004・6