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2024年9月19日木曜日

レア鍋日記2024年 (随時更新しています)

→レア鍋日記とは

こちらはたまに更新しています。

■2024・9・19 ニャン鍋
足ツボ

ないだろうと思いながら「足ツボ」を検索したら、なんと2首もあった。

足ツボに点字ブロックが気持ちいい※良い子は真似してはいけません
柴田瞳(出典調査中)

足ツボが効かないところが面白い辛いもの好きなのも愛おしい
yuki 作者ブログ(note)「作業用 50首」

「足ツボ」でなく「ツボ」で検索してみたところ、以下の2首を発見した。

「お仕事中すみませんけど馬の耳のツボに関する本ありますか」
石川美南『裏島』

ヤクルトを運ぶ女性に尻尾振る貴方のツボはそこだったのね
ゆすらうめのツキ「かばん 新人特集号」2010・12

上記「yuki」という作者の歌をざっと見ていて、レア鍋賞的な単語が多い気がして(感覚でしかないけれど)、しかもそれらが、他の語との組み合わせ方もレアである気もする。
たまたま目に入った「現在進行形」を見てみよう。

現在進行形

吾も少し関わっている 少女らの現在進行形の思い出
俵万智『かぜのてのひら』

現在進行形のことばかりだしきっとどうにかなっているんだ
辻井竜一『遊泳前夜の歌』2013 

連写するシャッターの音で出来た顔は現在進行形の神話
作者ブログ(note)「作業用 50首」

「連写・現在進行系・神話」という、飛躍含みの取り合わせが、飛躍だけれどかすかに軌跡というか、軌跡の気配ぐらいだが、感じられて、いい感じのレア感だと思った。

■2024・8・22 ナイ鍋


本日の闇鍋短歌、約13万首
「やっかむ」という語を使った短歌は見当たりません。

ただし、【妬む】や【嫉妬】はものすごくいっぱい。

【嫉む(そねむ)】は5首
能面の泥面【でいがん】がもつ翳りみきしみじみとせる嫉みをせむか 
生方たつゑ『青粧』
ほか

■2024・8・15 このそのあのどの 【ワン鍋賞】
いわゆる「こそあど言葉」を意識的に使っている歌を探してみた。

・このそのあのどの
 4つとも含む歌はこれ1首
それともこの・あの・その・どの・順接のだれもがアンサンブルの出身
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016

・このそのあの

この椅子に坐るすなはちその椅子にまたあの椅子に坐らないこと
香川ヒサ『ヤマト・アライバル』

この出入口は草地や森に、その出入口は地下や湖底に、あの出入口は駅や街に、繋がる
松平修文『トゥオネラ』

・このあのどの
この木あの木そのむこうの木 どの影も影にためらいがある
沖ななも『天の穴』1995

自分もいつのまにか詠んでいた。
すれちがうあの船この船手を振ればどの船にもいる片目の水夫
高柳蕗子『回文兄弟』

■2024年6月21日
 電荷・電化【ワン鍋賞】殿下【ニャン鍋賞】


本日の闇鍋データ短歌総数 129.428首

わけあって「でんか」という音の語を含む歌を探したところ、
「電荷」はこれ一首のみでした。

何げなき冬に触れたるセヱタァにをのこふたりの電荷ゆきかふ
和里田幸男(出典調査中)

「電化」もこれ一首のみ。

後部シートに電化製品を転ばせて郊外という町の平たさ
棉くみこ(出典調査中)

「殿下」は2首あった!

いかばかり殿下はこの国の溜息の象徴として「ん」を発せり
山下一路(かばん誌 時期調査中 『スーパーアメフラシ』には未収録)

でも恋は出もの腫れもの出くわしたでんでん虫のでっかい殿下
高柳蕗子『あたしごっこ』



■2024年2月17日 すごろく【レア鍋賞】

わけあって「すごろく」の歌をさがしたら、以下3首しかなかった。

すごろくのように突然ふりだしに戻りたくなる日曜の夜
本多忠義『禁忌色』

振り出しにダダもこねずに回帰した双六の駒褒めてあげなきゃ
久保芳美『金襴緞子』

飴をくちにいれたまま寝て飴味のよだれをたらす すごろくしたい
橋爪志保『地上絵』

■2024年2月17日 あらま・あらまし【ワン鍋賞】

たて笛の高いドに指をあわせて「あらまあ二月あらまあ五月」
北川草子『シチュー鍋の天使』

あらましは黄色い本に書かれていたのだ オリンピックのまえに
詞書:Where is the emergency shelter?(避難場所はどこですか?)
山下一路『スーパーアメフラシ』  

「あらまし」(概略)を探すつもりで「あらま」という文字列で検索したところ、「あらまし」(であればよいのに)が7首、「あらまほし」が4首あり、「あらまし」(概略)は1首だけ、そしてオマケ的に「あらまあ」の歌が見つかりました。

■2024年2月8日 三千世界【レアじゃなかった賞】

「三千世界」だなんて、現代短歌ではレアで当たり前だと思えるのだが、そのわりには詠まれている気がする。
こういうケースは「レアじゃない賞」としてここに取り上げようと思う。

先行して有名な歌などがあると、いまあまり使わない語も、短歌の世界には生き残りやすい。「三千世界」といえば良寛の

あわ雪の中にたちたる三千大千世界(みちあふち)またその中にあわ雪ぞ降る

という、すごく迫力があって美しい歌が存在する。
そして、高杉晋作の、おそらく歴史ドラマなどで耳にして一般に知られている都々逸。

三千世界のカラスを殺し 主と朝寝がしてみたい

「三千世界のカラス」がこれまた印象的。
良寛の雪の白と晋作のカラスの黒は、三千世界に舞うものとして対照的であることも、無意識のうちにイメージが重ね合わさる効果もあるような気がする。

とにかく、こういう先行作品のおかげで、仏教用語である「三千世界」が、なんとなく知られており、かつ詩的なパワーをも帯びてきたのだと思う。

うなだれた花花のそばを歸るとき三千世界にただわれひとり
前川佐美雄『白鳳』

花虻はホトケノザに来てとまりたり三千世界のここがまん中
小谷博泰『河口域の精霊たち』

銀紙に歯をあつる瞬スパークす歯にあつまれる三千世界
渡辺松男『時間の神の蝸牛』


上記のなかでは渡辺松男の歌には特に驚かされる。衝撃の比喩に使うとは。
あの銀紙を噛んだときの独特の衝撃的な感覚を三千世界の存在感に例えるという、唯一無比でありながら、あの衝撃を表すならもうこの比喩にまさるものはなかろうと思えてしまう。

実は私にも「三千世界」を詠んだ歌があるけれど、「須弥山大運動会」という仏様の運動会を詠んだ連作のなかにあるので、「三千世界」という仏教用語が出てくるのは当然で、そういう意味では面白みが足りない。
休止する三千世界のすむずみに届け仏のはずむ息づかい
高柳蕗子『回文兄弟』

川柳にも、発想の近いおもしろい句があった。

三千世界にくちびるが切れた音
湊圭伍『そら耳のつづきを』


冬に荒れた唇がぴりっと裂ける。小規模で無音だが、意外な衝撃がある。

なお、短歌にも俳句にも川柳にも、より普通の取り上げ方で「三千世界」を詠む例は他にもあった。




2024年1月20日土曜日

ちょびコレ19 万華鏡

「ちょびコレ」とは、
「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)


万華鏡


「万華鏡」という語を含む短歌を検索してみたところ、この題材は、(今のところ)ステレオタイプなイメージが形成されていないみたいである。

 言い換えるなら、たぶんしばらくの間は、自分の発想を信じて詠めば新領域にあなたのフラッグを立てることができる可能性が高い。

 ただし、現時点では、すでに詠まれている歌はある意味とっても独自なものが多いので、偶然の類想は絶対避けたいところ。
以下の、イメージをゆさぶらずにおかない歌たちを読んでおいて損はない。


■本日のお気に入り 万華鏡と体感2首

花の破片うまれてやまぬ万華鏡のつめたい腕をつかんで生きる
井辻朱美『クラウド』2014


 万華鏡の中の美しいものを描写する歌は多いが、美を生み出し続ける万華鏡のパワーのほうを詠む歌は珍しいし、それにあやかるような表現をとっていること、それも「つめたい腕をつかんで生きる」と言ってのけている迫力は、おそらく追随をゆるさないものだと思う。
 言葉の姿構成も、生け花のようにすみずみまでしっかり意図をゆきわたらせて造形されているようだ。1字も動かせない完成度だと思う。


わたくしを万華鏡に澄ますとき一方の目は闇を見てゐる
森山緋紗「かばん」2023年12月号

 「わたくしを万華鏡に澄ます」という部分に、万華鏡とつながるような体感がある。
 この特殊な言い回しは、「『わたし』という部品をカチッとセットすることで万華鏡が完成する」というふうに、いつのまにか読者に感じとらせる。
 そして、万華鏡にセットしたとき使わないほうの目が「闇を見てゐる」というのも、「見てゐる」にあるそれとない能動性が、「気が散らぬように使わない部分の機能を停止させている」ことをそれとなく伝えてくる。
 すべての語が協力し合っている歌だと思う。

万華鏡の歌を調べているうちに、「ちょびコレ」とはいえないほど集まって、書きたいことも増えてしまったが、このままここに書いてしまおう。

■万華鏡内部の光景

夏の果て花火師たちを閉じ込めた万華鏡売る夜店をさがす
神﨑ハルミ(出典調査中)


もうこれきり動かないほどすばらしい景色を見せている万華鏡
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

万華鏡におほき熊ん蜂閉ぢこめて見むとしたれどいまに見るなし
小池光「時のめぐりに」2004



(複眼レンズ系?)

 ※万華鏡には、内部に小さな欠片を入れるもののほか、複眼レンズを使うものがある。

万華鏡もて都市の夜みるときを曼荼羅めける極彩の満つ
大塚寅彦「詩客」2013-02-08

露店より買う万華鏡たわむれに街を破片にしてみる日暮れ
toron*『イマジナシオン』2022

ショッピング・カートに眠る子らのまなうらにバーコードの万華鏡
岡野大嗣『サイレンと犀』

覗き込む僕を模様にする君は悪夢のような万華鏡以て
Please keep me keen to kiss a knight of knowledge in a Kafkaesque Kaleidoscope.
中島裕介『Starving Stargazer』2008


(外側)

今日という日は晴れていてやさしくてどうしようもなく万華鏡の外
平井美奈子「早稲田短歌」44号



■覗く人

中腰の人々がいて口々に「はぁ」「ほぉ」漏らす万華鏡館
本多忠義『禁忌色』

たらちねの睡眠不足の母の目に吸収されてゆく万華鏡
木村友「かばん」2018/5

■その他

万華鏡みたいで人はおもしろい関わりあうと面倒だけど
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

6月のきみの国には万華鏡とかありますか? 走れ! ありますよ。 
杉山モナミ 作者ブログ「b軟骨」2007/5

誰しもの心にひとつあるという万華鏡へと夕陽を落とす
五十子尚夏『The Moon Also Rises』

でも触れてあなたを噛んでわたくしを残す日の万華鏡のかたむき
立花開『ひかりを渡る舟』


うーむ、ちょびっとのつもりでしたが、
けっこういっぱいでしたね。

2024年1月20日









2023年12月10日日曜日

レア鍋日記 2023年 (随時更新しています)

 →レア鍋日記とは

たまに更新しています。


■2023・12・10 古希(空鍋)

先月古希を迎えたので、「古希」という語を詠む短歌を探したら、DB「闇鍋」にはひとつもなかった。

本日の闇鍋 総数174,843歌句
      うち短歌126,588首
        俳句 33,607句
        川柳 14,073句
        (その他 都々逸などが少しあります。)

なお、「還暦」は7首、「喜寿」4首、「米寿」3首、「卒寿」3首があり、
なぜ「古希」だけないのか、気になります。
「コキ」という固くて短い語感が歌人の詩心をくすぐらないのかな?

還暦等の歌を1首ずつあげておきます。

白南風や遠山なみに空ありてわれは還暦の少年となる
三枝昻之『世界をのぞむ家』2008

果てる昭和の母が故郷の秋天にくしけずりくしけずる喜寿の白髪
三枝昻之『塔と季節の物語』

死ぬること話題とならぬ日はあらず米寿の義父の眉の毛長し
久々湊盈子 (出典調査中)

長くながくかかりて選ぶ夏帽子卒寿の母に気力のわきて
中川佐和子 『夏の天球儀』2022


■2023・10・19 ヒーローたち
(ワン鍋賞・ニャン鍋賞)
スパイダーマン、スパイダーマン、バットマン、デビルマン、キカイダー、セーラームーン、仮面ライダー


本日の闇鍋短歌126440首のなかでスーパーヒーローを思いつく限り検索してみた。

【ワン鍋賞】
吸い付かせ踏ん張らせども翌朝はまた落ちているスパイダーマン
武富純一『鯨の祖先』2014

バットマン交通事故死同乗者ロビン永久記憶喪失
穂村弘『ラインマーカーズ』
(たった1首がこの内容では気の毒……。)

デビルマン群れ飛ぶやうな大茜ひたに地上のわれを囲へり
有沢螢『朱を奪ふ』

「ジロー、チェンジ、キカイダー」と命じても「ううう」と呻く加藤治郎は
穂村弘(出典調査中)

美少女戦士セーラームーン「月にかわってお仕置きよ!」願わくば世界に
藤原龍一郎

【ニャン鍋賞】
甘酒の香る歳月の門にしろがねの仮面ライダー仁王立ちにて
井辻朱美『クラウド』2014

二代目の仮面ライダーやつてきて「ライダーキック!」と叫びつつ蹴る
喜多昭夫『青夕焼』1989

なお、大人気は「ウルトラマン」18首、「アンパンマン」11首。
また、「鉄腕アトム」も人気で8首。他に「鉄腕」なしの「アトム」(内容からみて手塚漫画のアトムを詠んでいると思われる歌)7首もある。
「鉄人28号」も6首と健闘。
「キン肉マン」「月光仮面」「少年ジェット」「ゴレンジャー」なし。

■オバQ(ワン鍋賞)

★ヒーローじゃないけど

落書きは白いチョークのオバQか性器かせつなく夕日があたる
藤原龍一郎(出典調査中)

「オバQ」という語を使う短歌はこれ1首

なお「ハットリくん」も1首だけあったが、作者も出典もあやふやなので、今回はノーカウント。

■田んぼに落ちる 2023・10・12 (ニャン鍋賞)


まったく脈絡なく、「田んぼに落ちる」というフレーズが脳裏に浮かんできた。
私が子供の頃は、まあまあ都会に近いうちの近所の道端にも田んぼがあった。
あれなら、子どもとか酔っ払いとかが「田んぼに落ちる」ことは、きっとよくあることだったと思う。今だって田んぼのある場所ならば、なにかの拍子に落ちることはあるだろう。

「田んぼに落ちる」のは、泥だらけになる大事だが、さして危険ではない。「あの日、帰りに田んぼに落ちてえらい目にあった」と笑い話にできる。そういうところを生かして詠まれてないかな、と思って検索してみたら、
私の手持ちデータベース内にはたった2首しかなかった。
今なかったら、この先もほとんど詠まれまい、と思うので、ここに書いておく。

猫さえも横切らない一本道飽きて来た頃田んぼに落ちる
ふらみらり「かばん」2012・9

この歌は私が「きっとある」と思った感じそのものだ。もしかすると、以前にこの歌を「かばん」誌で目にしていたから、先に書いたようなことを考えた可能性もある。

田んぼに落ちて笑いあうふたりには巨大すぎるアメリカザリガニ
山下一路『スーパーアメフラシ』2017

こちらの歌はクセモノ。
普通なら「二人」は恋におちるもの。その勢い余ってか思いがけず田んぼに落ち、それでも面白がって笑っていたら、さあタイヘン。
どんぐりには親切などじょうが現れたが、この田んぼには巨大なアメリカザリガニがいて、二人は……、という映画みたいな歌。
(ただし、この作者には社会詠が多い。おもしろおかしく暮らしていたらいきなり大国のえじきになる、というような比喩ともなり得る歌だと思う。)

■緩衝材 2023・8・12 (ニャン鍋賞)

「緩衝材」って短歌では見かけない言葉じゃないかな、と思ってちょっと検索。

本日の闇鍋 短歌総数125,484首
うち、「緩衝材」を詠み込んだ歌は2首でした。

ちぷたぷと緩衝材を潰してるちぷたぷ、きみはおでこ広いな
秋月祐一『この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく』

残りたる春のいくつか押し出して緩衝材に穴だけがある
toron*「胎動短歌」vol.3 2023/5

■梱包材 2023・8・12 (ワン鍋賞)

ついでに「梱包材」も検索したら、これ1首だけでした。

梱包材つぶし飽きたらひねるのをはじめてからの記憶が荒い
山階基『風にあたる』2019

■プチプチ 2023・8・12 (ワン鍋賞)

ついでのついで、「プチプチ」も探したら1首ありました。

プチプチをプチプチするのがとまらないきもちはゴドーを待っている
杉山モナミ 「かばん」2011.9

■ビニール紐 2023・8・12 (レア鍋賞)

ついでのついでのついで 「ビニール紐」(本当の名称はわからないが)も探したら、3首ありました。

白いビニール紐に縛られ笑む人も若かったねと言われるだろう
東直子 短歌日記『十階』

汚れたるビニール紐が足首にからまるいたるところに国境
野樹かずみ『路程記』

荷を巻けるビニール紐を切りたれば撥ね上がり空のなにかを切りぬ
ルビ:空【くう】
梅内美華子『真珠層』2016

2022年12月22日木曜日

レア鍋日記 2022年

 →レア鍋日記とは


■【レア鍋】視神経


2022年12月22日
本日の闇鍋全短歌データ 124,027首

「視神経」って短歌によく使われている気がしていましたが、私の「闇鍋」には3首しかありませんでした。

解体の部品を垂らすケーブルは視神経のごとしも 絡まる
加藤治郎『昏睡のパラダイス』1998

視神経は交叉したまま モノレールの窓に青葉の街暮れてゐる
魚村晋太郎『銀耳』2004

視神経の束をあげたいヘッドライトは夜の湿度を切りひらくだけ
平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』2021

まず、それぞれにすごくビジュアルとしていい歌だ、と感じます。
視神経って普通はあんまり見たことがないものですから、これは目に浮かべるための一般的比喩表現ではなく、感覚的に目に浮かびそうな気がする(特に3首目)、というレベルのビジュアルです。実体験でなく、イメージ体験を喚起する、というか。


「視神経」という言葉からなんとなく、この写真みたいな感じに細かく枝が広がっているものを思い浮かべてしまうんですが、いかがでしょう?
上記の短歌も、少なくとも1首目,2首目はこれみたいです。

そこまで考えて、現物は見たことはない、だから実体験の喚起ではないけど、画像でこういうものを見たかもしれない、だとすると普通の比喩かしらと思えてきてしまいました。

気になって調べてみたら、その結果、確かにそういう画像はありました。

が、おどろいたことに、枝分かれしているのはどうやら血管であり、視神経ではないみたいです。

なんだこれ? 問題発生かしら???
まあでも、詩歌的には、事実より通念、そしてなにより語感やイメージがものをいうのであって、上記の作品を貶めるつもりは毛頭ありません。念のため。

さて、ついでなので、俳句と川柳も探してみました。
俳句は私の「闇鍋」と、現代俳句協会のDBその他大型DBでも探しましたが、一句もありませんでした。

川柳では、「闇鍋」で次の1句を発見。
視神経に一本薔薇の木が混じる
情野千里『川柳作家全集49』
視覚イメージとしては上の方に置いた短歌作品と似た捉え方をしているようです。
「視神経」のイメージ描写として非常に美しく、「視神経」という語のイメージ領域を拡大する作品だと思います。

「おかじょうき」のDBにはナシ。

なお川柳データバンク※には上記情野千里の句のほかに2句ありました。興味がある方はご自分で見てきてください。
※このサイトは、類想句を避けるなどのトラブルを防ぐことを目的の一つとしているようです。また、「無断で利用することは著作権上の例外を除き著作権者の許諾が必要」と書いてあります。それは法律通りです。著作権侵害は特別な場合を除いて親告罪ですから、このサイトに作品を置いてあるということは、無断使用はトラブルになるぞという警告の意味があると思えます。だたその法律なかで例外として「引用」は認められています。情野千里の句は、既に他のサイトでも引用されていて代表作のようですし、「引用」の条件を意識しなが引用させていただきました。

 

■【ニャン鍋】エゴサーチ

2022年10月20日
本日の全短歌データ 123,831首

「エゴサーチ」は2首あった。感触としてはもっとありそうな語。
新しい人の歌の入力が足りないのかも。

エゴサーチにあつらえむきの日に階下ふたり離別の手順を終えて
睦月都 2012年短歌研究新人賞応募作

エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)

上記の

エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)
をみて、ついでに「リツイート」も調べた。この他に4首発見。

「釜石にいくためにガソリンが欲しい」リツイートできず涙流しぬ
田中濯『氷』

フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)

会心のツイートしたあとRT確認しにゆく自意識あわれ
ムラムラと承認欲求湧く夜は褒められツイートRTせり
上記2首 笹公人「詩客」2012-10-12

なお「ツイート」(「リ」なし)は6首あった。

■【レア鍋】フォロワー

フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)

を見て、ついでに検索してみたら「フォロワー」はこのほか2首あった。

青空を鳥のかたちに切り抜いて摑む/離れるフォロワーの数
大西久美子『イーハトーブの数式』

陸上部女子限定のグループ名「さくらんなー」はフォロワー多数
千葉聡『短歌は最強アイテム』2017

■【レア鍋】リスニングテスト

2022年10月18日
本日の全短歌データ123,825首

「リスニングテスト」なんてなさそう、と思いながらきまぐれに検索してみたら3首もあった。

リスニングテストが聞こえるアメです「始め」と言ったらなめてください
伊舎堂仁『トントングラム』2014

リスニングテストの漏れる校舎から欧米人の巨大な会話
岡野大嗣「詩客」2017-06-03

君の声思い出してるリスニングテストの問いと問いのあいだに
近江瞬『飛び散れ、水たち』2020


■【レア鍋】ヒメジョオン

2022年8月26日
本日の短歌全データ122,967首


もう誰も月を覚えていない昼はるじおん咲きひめじょおん咲き
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』2015

ヒメジョオン摘む人の誰もいなければ胸の高さに咲く線路脇
田宮智美『にず』2020

折ればほら茎に空洞がないものはヒメジヨヲンよとわが庭の花
永田和宏『置行堀』2021

ありふれた野草で、見た目は地味だけど名前が素敵、というねじれがあるから、もっと詠まれているかと思ったが、意外にも3首だけ。

■【ニャン鍋】スクロール

2022年8月9日
本日の短歌全データ122,966首

スクロールして行く度に果ては来てまた銀紙を噛んだ味だよ
久哲 うたのわH22.10.28

携帯の着信記録スクロールすればひらたく癒されている
江國凛(出典調査中 だいぶまえの「かばん」)

■【ニャン鍋】招き猫

2022年7月9日
本日の短歌全データ 122,622首

招き猫倒れしという写実歌のおそろしければこの花吹雪
藤原龍一郎『19××』1997

招き猫の無表情の爪紅し すぐ分かります分かるはずです
東直子『十階』


なお、俳句と川柳も1句ずつ。

招き猫水中の藻に冬がきて
波多野爽波『骰子』

招き猫は造花ばかりが描いてある
中村冨二『千句集』

■【レア鍋】蓋がない

2022年7月9日
本日の短歌全データ 122,622首

「蓋がない」ということを詠む歌は以下3首でした。
(検索文字列「蓋がな」「蓋のな」「蓋の無」「蓋な」「蓋無」で抽出し無関係なものを取り除いた。)

蓋のない記憶と思ふ 菜の花の瓶詰めにぽんと山の香がして
田村元『北二十二条西七丁目』2012

この海にぴったりとした蓋がないように繋いだ手からさびしい
虫武一俊『羽虫群』

蓋のない深い器に沈みたい無心にならず轆轤をまわす
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』


なお俳句は見つからず、川柳は1句ありました。

蓋のない顔で笑ってくれました 徳永政二


■【ナイ鍋】社会の窓

いや、無いだろうとは思いましたが、俳句で見かけたので、負けたくない、とも思って探したら、やっぱ短歌のほうは無かった。(笑)
難しい題材ですが、うまく生かした歌があったら教えてください。
2022年6月23日

俳句
テキ屋きて社会の窓からいわし雲 
大沼正明『異執』2013

「ズボンの前」みたいな言い方はどうかな。
1首発見。

へこをせし昔男は知らざらむズボンに前あきのファスナーあるを
浜田蝶二郎『からだまだ在る』1997


「チャックが開いている」的なことを詠む歌を探してみました。
「チャクラ」だ。けど、なんだか近い!

「だばだばにあなた漏れてる気をつけて胸のチャクラが開きっぱなしよ」
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

チャックが開いた、けど背中のだった……。

唐突に下の名前で呼ばれたら背中のチャックが開いてしまうよ
岩倉曰『harako』2022


歌はすてきだけど、これも違いますね。

きみの背の感触残るわが背骨 チャックを開くように別れき
田中槐(出典調査中)

なお、英語ではXYZと言うことがあるらしいですよ。

「eXamine Your Zipper(チャックを確認しなさい)」の略だとか。ほんとかな。

あと、社会転じて「理科の窓」とかいう人もいるらしい。

■【ワン鍋賞】ぺっちゃんこ

2022年6月21日
本日の闇鍋短歌データ122,733首

日月の球体通り過ぎてゆきぺっちゃんこなり母の死顔
渡辺松男(出典調査中)


なお俳句でも1句発見

駅の裏死んでるバッタぺっちゃんこ
久留島元「詩客」2012-11-16-11863

■【ニャン鍋賞】算段 【レア鍋賞】散弾

2022年4月27日
本日の闇鍋短歌データ122,432首

「算段」なんて言葉詠まないだろうと思ったが、意外にも2首発見。

この病気では死にませんよといふなれば生きる算段をせねばならず
斎藤史『秋天瑠璃』
 
水撒きのホースより虹 乙女らは恋の算段 葉陰に揺れて
村田マチネ『バベル』

一方、「散弾」はけっこうありそうだと思ったが、さほどではなく、3首だった。

やわらかな風の散弾てのひらに五つ集めて風に戻した
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013

車中泊の朝に迎える散弾を喰らったような窓の凍結
中山俊一『水銀飛行』

夏の柳の枝は太くて木洩れ日が散弾みたいに頬辺を差す
久真八志「かばん」2013・9

■【ワン鍋賞】蹴っ飛ばす

2022年4月21日
闇鍋短歌データ121602

春は何か蹴っ飛ばすようにして起き上がり前に進むような季節だよな、と思い。
「蹴っ飛ばす」「蹴り飛ばす」を、ひらがな表記等も含めて検索したら、なぜかたったの1首しかありませんでした。

先生に蹴り飛ばされて伏す床にトイレスリッパ散らばっていく
鳥居『キリンの子』2016

珍しい語でもないのになんで少ないのかしら。

2022年12月追記
すみません。「蹴飛ばす」「蹴とばす」なら16首もありました。


■【ワン鍋賞】四捨五入

2022年4月17日
闇鍋短歌データ121602

年齢を四捨五入で繰り上げて憂えるような馬鹿を死刑に
枡野浩一(出典調査中)

■【ニャン鍋賞】うぬぼれ

2022年4月12日
闇鍋短歌データ121602

うち「うぬぼれ」or「自惚」という文字列を含む歌は以下の2首だけでした。

僕たちはうぬぼれ屋だからうぬぼれを売る 売り上げでひんしゅくを買う
宇都宮敦 朝日新聞夕刊2011年5月24

自惚の錯覚すなはち恋だから
 子供は要らない
  ザマア見やがれ
ルビ:自惚【うぬぼれ】
夢野久作『猟奇歌』(「夢野久作全集3」ちくま文庫1992)

■【ニャン鍋賞】大女

2022年3月30日
闇鍋短歌データ121568

うち「大女」(かな表記を含めて検索)を含む歌は2首でした。
「大きな女」など他の表現は対象外。

大女死すごと大き物語死して世界は荒涼とせり
松村由利子『大女伝説』2010

秋の夜を大女(おおおんな)となり怒りおり重たき足に月光を踏み
梅内美華子 『若月祭(みかづきさい)』1999



なお「大男」は以下5首発見。

大男が梅雨明けちかき街に来てそらの滑車をまはしはじめる
永井陽子『ふしぎな楽器』1986
チョコレートバーほどの電話取り出して大男話すいたくやさしく
米川千嘉子『一葉の井戸』2001
大男の黙狂ひとり暁【あかとき】の野辺に世界を支えて佇てり
山田消児『アンドロイドK』1999
ご近所の歯医者へ来たりて大男の太きおゆびに歯を抜かれたり
花鳥佰『しづかに逆立をする』2013
大男の欠伸チェロの黒ケース光は肩でうけとめるしかなく
東直子「短歌研究」201010
 

■【ナイ鍋】おっちょこちょい

2022年3月22日
闇鍋短歌データ121526首
「おっちょこちょい」という語を詠み込んだ歌なし。

5月17日追記「そそっかしい」を2首発見。
頬に一針縫いあとのあるきみのそのそそっかしさを海に還すね
東直子「かばん」200208
そそかしい走禽即死 空涙そおっと注ぐ蘇生せぬよう
高柳蕗子『あたしごっこ』

■【ワン鍋賞】粗忽

2022年3月22日

原因をつきつめてのちはかなきはつねとおもえば粗忽の釘ぞ
藤原龍一郎『切断』 

■【ニャン鍋賞】あんぽんたん

2022年3月22日

あぽぉーあぽぉーあんぽんたんのあっぽぉぱあでんじゃあでりしゃすAPPLE-PIE
神﨑ハルミ
(ピコ太郎よりはるか昔の作品。発表時期は定かではないのですが、作者がこの筆名を使っていたのははるか昔だから。)

青中の水中のああ自在片安本丹の背鰭峻烈
ルビ:青中【あおなか】、水中【みずなか】、安本丹【あんぽんたん】
依田仁美『異端陣』2005

■【レア鍋賞】まぬけ

2022年3月22日

うたうならデスクの隅の海綿のようにまぬけに孔をひらいて
佐藤弓生

あほまぬけ あほまぬけとぞビラ数へあほまで終りぬ九十三枚
※下線部分は傍点
安田純生『白珠』

護岸工事の音もまぬけな月曜日へたくそだった今日の仮病を
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

■【ナイ鍋】おちおち

2022年3月17日
闇鍋短歌データ121101首
「不安でおちおち眠れない」などの「おちおち」を使った歌は、今のところ1首も収録されていない。

■【ワン鍋賞】てんてこ舞い

2022年2月13日
闇鍋短歌データ120980首

ちかごろ耳にしなくなったコトバ。
短歌に使われることも少なそうだが、どうだろうと思って探したら、1首だけ発見。

オリジナルのダンスを華麗に踊りますてんてこ舞いと呼ばれております
久保芳美「かばん新人特集号」2010・12

■【レア鍋賞】~をあなたに

2022年2月11日
闇鍋短歌データ120980首

「忘れな草をあなたに」という歌があるけれど、そういうふうに末尾が「~をあなたに」である短歌ってどうかなあと思って探してみたら3首あった。

うつくしき雨降り込めるフィルムの発火してゆくさまをあなたに
古谷空色(出典調査中:だいぶ前の「かばん」誌)

いつかまた逢えなくなるねと天界のブラックリストと野望をあなたに
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

かばんにはもれなく風、それももう目も眩む熱風をあなたに
鈴木智子『砂漠の庭師』2018

「~をあなたに贈る」など、「~をあなたに」が末尾でない例ならもっとありますが、すごく違う感じです。

■【ワン・ニャン・レア鍋賞】「○行」

2022年2月9日
闇鍋短歌データ120980首
うち「あ行」2首
  「か行」3首
  「さ行」3首
  「た行」1首
  「ら行」1首
  「ぱ行」1首

うへへへと忘却の彼方でカクレンボああお下劣なおまえのあ行
久保芳美『金襴緞子』金欄椴子

ネアンデルタールの水墨画のようなア行音 永遠といいaeonという
井辻朱美『クラウド』2014

かき・くるみ・きのこ・くり・くこ・こめ・かうじ秋はカ行の稔り豊けし
丹波真人『花顔』

名字にはたぶんカ行が似合うひと日射に耐えていたまっ白く
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

炎暑の車道が膨らみそうでわたしには月の世界とカ行のひとが
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘
俵万智『サラダ記念日』

そら、スカイ、スペース、砂漠 サ行とはとても広くて一色なもの
松木秀『RERA』

サ行音爽やかなものと感受せぬ金がざらざら一首を読めり
ルビ;金【キム】
大口玲子(出典調査中)

潮騒のやうなるサ行の訛りかなわたしは寿司も獅子も大好き
ルビ;寿司【すす】 獅子【すす】
逢坂みずき『虹を見つける達人』

崇福寺 正覚寺下 思案橋 サ行の音の響きあふ町
ルビ;音【おん】
三輪良子『木綿の時間』2016

た行しか知らぬ私は「土」と言う あなたのために「好き」の代わりに
大嶋航(出典調査中)

手の中のラ行のひとにさくら散るはんらはんらやあぶなうつし絵
依田仁美『異端陣』2005

ぽんと、ごくふつうの大きさの声で言うとききらめくあなたの「ぱ」行
杉山モナミ 「かばん」202112

「○行」を詠むということは、語感・音感をとらえ、それを読者と共有できる、という強気が必要だ。読者はその強気をうれしく感じる。そういう題材だと思う。


■【ニャン鍋賞】義憤

2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「義憤」2首

天の川って義憤に似てるひかりの波しゅるるる消えるまで抱きしめる
杉山モナミ「かばん」2019・08

義憤にも似た感情を壜に詰め色とりどりのピクルスにする
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』

■【レア鍋賞】ピースサイン


2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「ピースサイン」3首

喰ひのこされるまでゐてどうだつたのかザリガニらの鋏のぴいす
平井弘(出典確認中)

うまいこと利き手で鼻をかむひとの空いた片手でするピースサイン
山階基 (出典確認中 風にあたる拾遺2012-2015)

十年後に見て騙されたりしないよう小さめのピースサインにしとく
近江瞬『飛び散れ、水たち』

■【レア鍋賞】ほじる

2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「ほじる」4首
(「ほじくる」だけなら2首)

憎まれたグリンピースはほじくられチキンライスは冷めていったの
久保芳美『金襴緞子』

まずすべてほじくってから食べたきを西瓜の種は奥にまだある
染野太朗『人魚』2016

レーズンパンのレーズンすべてほじりだしおまえをただのパンにしてやる
戸田響子『煮汁』

相部屋の感想聞けば「鼻くそがほじれないんだ。鼻くそたまる」
俵万智『未来のサイズ』

■【レア鍋賞】くずもち

2022年1月19日
闇鍋短歌データ120240首
うち「くずもち」4首

橋を渡る娘たちはみな髪をまとめくずもちの中のあんこのごとし
小川佳世子『ゆきふる』2016
   くずまんじゅうのことかな?

一折のくず餅下げて会いにゆく そうですねえと答えるために
東直子『青卵』2001

み墓べに今日はまゐりぬ亀井戸の葛餅買ひて帰り来にけり
古泉千樫

君の好きな葛餅と颯の好きなウルトラマン持ち 361号室へ
永田淳『竜骨(キール)もて』2020

2022年7月24日日曜日

随時更新 不思議の花園だより

 うちのベランダは不思議の花園です。

2020年の春、きまぐれで鉢を買い、種をまいたり球根を植えたりしはじめました。

そうしたら、おかしな花が咲くんです。
モンスター化するっていうか、そういう花は咲いたらすぐ枯れる。

ふつうに咲く花もあって、それはそれで不思議。

というわけで、ここにはうちのベランダの花の写真をアップします。


フェイスブック報告用に写真をまとめたものもあります。


去年の夏はしょぼいひまわりが咲いたが、今年はその分を補うような感じ。

2022年7月 ちっちゃいひまわりが咲いたけど・・・。



同日、あさがおはまともです。
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2022年5月 スイートピーはわりにまともに咲いている。



スイートピーに豆がなりました。調べたところ毒があるとか。

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2022年5月 忘れていたけどここにはなにかの球根を植えたんだった。
わりとまともそうに咲き始めた。
(枯れるのが速いかも。ひとつの花は1日で枯れちゃう。)

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2022年3月 怒りのチューリップ

茎が短い。
まちがえて早く咲いちゃったとか?


すごい!どんどん枯れる。

奥の鉢もチューリップで、茎がまだ短いのに、もう咲く気でいるみたい。
だめっぽい。

(奥のチューリップ、写真とらなかったけど、咲く前に枯れちゃった。)
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2021年10月 すごい溢れんばかり。
種をまいて忘れていたんだけど、
夏に葉っぱがどんどん生い茂って、
雑草かしらなんて思っていた。
秋、いきなりものすごい数の花が咲き始めました。
鉢がちいさくて倒れそう。
そんなに咲いてだいじょうぶなの?

植物って個性が強いなあ。
(チューリップとバラを見間違えるような植物オンチです。
むろん花の名前とか全然知らないし、植物の生態も、なんか新鮮。)
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2021年9月 あさがおがまだ咲き続けている。


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2021年夏 ひまわりが咲いた、けど。
思ってたのとちがう。
こんな小さい鉢じゃだめだったかな。


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2021年夏 おお! あさがおだ。ちゃんとあさがお。



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春、気まぐれに百均で鉢などを買った。
テキトーに土を入れ、テキトーに種をまき、テキトーに水をやった。




2022年7月1日金曜日

ちょびコレ マッチング 並べて読みたい歌 2022

 まったく別々に詠まれた2首に、批評マインド〟が刺激されることがあります。

もしかして偶然に本歌取り?とか、
歌合せだったらいい勝負じゃんとか、
時を超えて応答しているみたいとか、
歌人の個性の違いがおもしろいとか、
同じ作者の作なら進化や変化を感じるとか。

「並べて読みたい歌」セット。
そういうものを見つけたらとりあえずここに書きとめます。

ただし、私は、優劣には興味がない。歌を並べて優劣を決めたいわけではない。
そこのところ、よろしくおねがいします。

▼2022/7/1 鳥・人・言葉


人が鳥になるとかならないとかを詠む短歌はときどき見かけるのだが、次の歌はそのなかでも少し特殊だ。
重なる感じで捉えている。

ねむりゆく私の上に始祖鳥の化石のかたち重ねてみたり
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』

眠ることと死は少し似ている。
始祖鳥の化石といえば太古の鳥の死骸。
そして、見た目が老化の姿にも少し通じてもいる。
眠るたびに始祖鳥の化石に近づいていく、というようなことを歌から感じ取る。

化石は、死骸が石化したもの。死後に長く残るものに変質したものだ。
骨だらけでなんだか文字みたい。

そして、この歌をみるたび脳の片隅に次の句がうかぶ。

タソガレドリは言葉の鳥か我も言葉
山川蝉夫(『山川蝉夫句集』以後)

私の中では上記2つの作品がしっかり結びついている。

もうひとつ、
とぶ鳥はすべてことばの影となれわれは目つむる萱草に寝て
寺山修司『月蝕書簡』(未発表歌集)2008
というのを発見しました。

▼2022/5/15 蝿が手を揉む

まもりゐの縁の入り日に飛びきたり蠅が手をもむに笑ひけるかも
斎藤茂吉『赤光』1913

ひさしぶりに、
ふと声を出して笑ひてみぬ―
蠅の両手を揉むが可笑しさに。
石川啄木『悲しき玩具』1912

茂吉と啄木。
ほぼ同じ時期に似たような歌を詠んでいる。

蝿が手を揉むといえば、
多くの人は、一茶の、
やれ打つな蠅が手をすり足をする
を想起すると思う。
近代のこのふたりもそうだと思うが、そのうえでこういう歌を詠むだろうか。


▼2022/5/13
 2021年の記事と分離し、ついでに表記等を修正しました。

▼2022/5/13 他流試合 じいんじいんと滝の上

(このタイトル俳句みたい 笑)

■じいんじいん

切株はじいんじいんと ひびくなり
富澤赤黄男『蛇の笛』1952

花もてる夏樹の上をああ「時」がじいんじいんと過ぎてゆくなり
香川進『氷原』1980


なるほど、「じいんじいん」は時間が流れる音みたいな感じだ。
どちらも樹に関係がある。
富澤のほうは「時間」と書いてないけれども、「切株」には年輪があって自然に「時」への連想を促す。じんわりじんわり「時間」が地に深く響くような感じ。
かすかだが痛みが疼くような語感もある。

香川の歌では暗示でなく、「時」が「過ぎてゆくなり」とはっきり書いている。
「時」が樹上を過ぎるといえば、鳴き過ぎる鳥や葉をざわめかす風を思わせることで、「時」の流れに速さを感じさせる。
「夏」といえば、人々が欲求をかなえたり目的を果たしたりするためにがんばる季節で、その虚しさはすでに詩歌に定着している(「夏草や兵(つはもの)どもが夢の跡 芭蕉」とか)こともあり、この歌の「じいんじいん」の語感にも、そうした痛みのようなニュアンスが少し含まれると思う。

他流試合、っていうか他人の空似っていうか、もう一組。

■滝の上

瀧の上に水現れて落ちにけり
後藤夜半『翠黛』
1940

瀧の水は空のくぼみにあらはれて空引き下ろしざまに落下す
上田三四二『遊行』1982

雰囲気違いますが川柳も。

なんぼでもあるぞと滝の水はおち
前田俉健(出典調査中)

▼2022/5/12 材料が同じ料理みたい


同じ材料から作ってぱっと見似ているけれど味が少し異なる料理、みたいだ。

テーブルに滴と蝿と向きあってまた永遠が見つかったの?
佐藤弓生『世界が海におおわれるまで』2001

八月のテーブルの角に蝿は黙りいま永遠にあなたのMより
杉山モナミ(杉山美紀)『短歌パラダイス』1997

▼2022/5/11 同一作者が時を経て……


同一作者が同じ題材を、時を経て別の言葉で詠み重ねる、というこちがあると思う。

A
身をそらす虹の
絶巓
処刑台
  高柳重信『蕗子』
※絶巓 ( ぜってん ) =てっぺん

B
魏は
はるかにて
持衰を殺す
旅いくつ
※持衰(じさい)=祈祷師

A 虹のあの形を、「反っている」と見るのは珍しい見立てだ。また、身を反らすのは、前に屈むのに比べたら、背筋のこわばる苦しい姿勢である。一方、虹といえば一般に美しいものとして描かれ、どこか遠い国への架け橋の比喩として使われることが多く、普通はそんなに緊張感を孕む語ではない。ところがこの句では、虹の頂点に処刑台があるという見立てだ。だとすれば、遠い国へのあこがれは、見かけは美しくとも、我が身を辛い姿勢に保って橋となそうとするものであり、その絶頂に、ひどく恐ろしいものが待っていて中断させられた、と読めるだろう。
B
大昔の日本人は、当時の文明国である魏の国をめざして海を渡った。古代の船は小さくて、嵐にあえば半分ぐらい沈んでしまうのに、人々が死を覚悟で新しい知識を求めた。「持衰」=祈祷師は、嵐があると神様に怒りを静めてくれるように祈る役目であり、祈りが通じないときは、その祈祷師は殺されたのだそうだ。
(「持衰」の説明は作者に聞いた。奇跡的偶然でこの作者は父だ。)

当初私は、この句を、「人類がたくさんの犠牲を払いながら、高い目標のために努力してきた、ということへの感慨を表したもの」と思っていたが、だいぶあとになって、犠牲といっても祈祷師のいたましさは特殊だと気づいた。
みんなのために真剣に役目を務めたにもかかわらず、失敗だったからといって仲間の手で殺されてしまった。
この句はそういう種類の犠牲者に特に手向けられた鎮魂句なのだと今は思うし、Aの句もこのB句と併せ読んでみて損はないだろう。

書かれた順序は、虹の句の方がずっと早く、結核で挫折したうんと若いときのものだ。かつて、「自分の努力には処刑台が待っていた」という形で提示されたテーマが、後年視点が変わることで、「魏ははるかにて」の句になったのではないかと思われる。


▼2022/5/12 非生物だが生身感のあるものを揉む感触

 同一作者が時を経て……

A
元旦に明るい色の胴体を揉めばぶよぶよするヤマト糊
穂村弘『水中翼船炎上中』2018

この人はかつてこういう歌を詠んだ。

B
孵るものなしと知ってもほおずきの混沌を揉めば暗き海鳴り
穂村弘『シンジケート』1990

題材は違うが内容は通じていて、新しいAのほうが「混沌」だの「暗き」だの「海鳴り」だの、詩歌的に意味ありげな言葉を使わないぶん、手作りであり鮮度が高く、つまり洗練されている。

「揉む」は短歌俳句で好まれるのかよく使われる。肩揉みに関するものや、草木を風が揉むさまに試練に耐える心情を重ねる、などをよく見かけるが、上記のような「非生命の手触り」を詠むものは少ないようなので、時間があったら集めてみたい。

残る世の人形揉めば泣きにけり 攝津幸彦 『鹿々集』

「非生命の手触り」とは少し違うが、この句にも注目した。


▼2022・4・17追記
 ■そのとき青いものがこぼれる……(2021/12/22)に、
  青いもの、赤いもの、黄色いものがこぼれる歌を追記しました。


▼2022/4/3 生きてることが・・・になる

作者はまったく意図しなくても、言葉の世界で勝手に歌たちが響き合うということがある。
それを読んだ人たちの脳内で意識しないまま響き合い、結果として言葉の世界のなかでうっすら関わり合い、なんらかの形でイメージを強め合ったり深め合ったりする可能性がある。

以下2首、「になる」の意味あいがやや違うので、本歌取りではなさそうだが、響き合いそうな感じ。

こんなにもふたりで空を見上げてる  生きてることがおいのりになる
穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』2001

似合う、ってきみが笑ったものを買う 生きてることが冗談になる
平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』2021


なお「○○と君が言うので、その結果XXする」という構造、これは当然よくあるものだが、その源流には、こういう有名な歌がある。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
俵万智『サラダ記念日』1987

この歌がこの言い方の最初っていうわけではなかろう。
が、人口に膾炙し、この言い回しの〝詩的ステータス〟がアップしたんじゃないかしら。爆発的に。