ここは、日々なんとなく見つけたちょっとした短歌コレクションの置き場です。
ミニアンソロジーにしたいけれど、そこまでの歌数がない。でも、レア鍋賞ほど少ないわけでもない……。
そんな感じのときここに書いておきます。
■2022・4・30 飲食店3 定食屋
斉藤真伸『クラウン伍長』
定食屋うなだれている父たちが食らう撃ちぬかれたる蓮根
八木博信『ザビエル忌』
定食屋のしょうゆの瓶を握ったら見知らぬ人との握手のようで
戸田響子『煮汁』
あなたとは行かない駅にそのたびにかならず食べに寄る定食屋
山階基(風にあたる拾遺2012-2015)
■2022・4・30 飲食店2 おでん屋・うどん屋・そば屋
3首(作者は2人)。少ないなあ。これはレア鍋のほうにも書かねば。
ひとに売る自伝を持たぬ男らにおでん屋地獄の鬼火が燃ゆる
寺山修司『田園に死す』
おでん屋の湯気にわれらも茹でられて竹輪とがんもになりて別れる
田村元『昼の月』2021
詩的働きがラーメン屋と似通っているかどうか、少なすぎてなんともいえない。
10首中に顔に言及する歌が2首もある。偶然だろうか。
うどん屋に小さく座り人はみな顔よりうどん吸い込んでいる
東直子「ル・ファール」
岩盤浴終えて帰りのうどん屋にすっぴんのわれの啜る素うどん
植田美紀子『ミセスわたくし』
田村元『昼の月』
盗まうとすれば盗める長ねぎの箱あり朝の蕎麦屋の前に
大松達知『ぶどうのことば』2017
天ぷらをささやくように揚げる音聞きおり三時半のそば屋に
俵万智『サラダ記念日』
■2022・4・29 飲食店1 ラーメン屋
本日の闇鍋短歌データうち「ラーメン屋」の歌は7首。
そこからピックアップします。
ダクトから噴き出す風の臭いする体になって出るラーメン屋
飯田和馬「うたらば」vol16
乗せられたバスから見えたラーメン屋、結局行けなかったラーメン屋
千種創一『砂丘律』2015
リビングとベッドの間にラーメン屋なくて小さなどん兵衛ひとつ
田村元『昼の月』2021
詩歌の言葉の世界の「ラーメン屋」は特別な場所。
なお、私の俳句川柳データに「ラーメン屋」はナシ。ちょっと意外。
■2022・4・28 立ったまま
「立ったまま」といえばこの歌がいちばん有名だと思う。
一本の樫の木やさしそのなかに血は立ったまま眠れるものを
寺山修司『血と麦』
他にどんな「立ったまま」があるか探してみた。
本日の闇鍋短歌データ122,333首
うち「立ったまま」を含む短歌16首
すこしピックアップします。
立ったまま枯れているなんてわりあいにぼんやりとしているんだな木は
渡辺松男(出典調査中)
立ったままはふはふ言って食べているおでんのゆげの向こうのあなた
俵万智『サラダ記念日』
立ったまま眠るキリンは一晩中星のはじける夢をみている
杉崎恒夫「かばん」93・6
麒麟はね、立ったまま死ぬ頭頂の角より順に粉になるため
東直子「短歌研究」2011・11
ちんぽこという川を背におじさんは立ったままものがたりであった
望月裕二郎『ひらく』2009
潮風に恍惚と鳴るそのかみの立ったまま死にたる男をおもう
井辻朱美『水族』
缶詰をあければ満ちる海の私語わからないけど立ったまま聞く
小島なお『展開図』
立ったまま交わるまひるふる雪をわすれてわれら同志であった
佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』
俳句で
冬の森みな立ったままダイ・イン
安西篤
というのも見つけました。
■2022・4・27 一反もめん
山下一路『スーパーアメフラシ』2017
老いてなおうさぎは白きままにして一反木綿のごとくのびおり
花山周子『林立』2018
未来にはいまだ形のなきものを一反木綿の飛びさうな空
川野里子『硝子の島』2017
俳句
高橋龍『句控 上屋敷』2018
一反木綿雨後をふくらむジャック&ベティ
野間幸恵
川柳
なかはられいこ