ラベル 88レア鍋賞 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 88レア鍋賞 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年8月1日金曜日

レア鍋日記2025年 (随時更新しています)

→レア鍋日記とは

ごくたまに更新しています。

データベースの登録数が増えたせいで、ワン鍋ニャン鍋賞が減り、それどころか3首のレア鍋賞もなかなか見つからなくなってきました。
その日の気分で、5首ぐらいでもレア鍋賞に入れてもいい、ということにします。


※新しい順で掲載

■2025年8月1日 あまり詠まれていない職業

いろんな職業の詠まれる頻度を調べている。
あまり詠まれていない職業は多い。
というか、「職業」といって思い浮かぶ職業が少なくて、
「あまり詠まれていない職業」探しは行き当たりばったりです。

ナイ鍋
以下、ちょっとはあるかと思ったが歌が見あたらなかった職業
 バーテン 清掃員 ネイリスト

ワン鍋賞 ユーチューバー
10年経って 丘を ユーチューバーが走っていった
伊舎堂仁(作者ブログnote有料記事24・1・21)

ワン鍋賞 ディレクター
ラジオ局がもし月光の牢獄ならディレクターとはいかなる罰か
ルビ:牢獄【ひとや】
藤原龍一郎『ラジオ・デイズ』

ワン鍋賞 ヤクルトおばさん
ああ我もヤクルトおばさんの年齢となり水鳥のそば腰かけている
ルビ:年齢【とし】
前田康子『キンノエノコロ』

ワン鍋賞 パフォーマー
舞台で死ねいま蘇生して明日も死ねわがパフォーマー首くくり栲象
ルビ:舞台【ここ】 栲象【たくざう】
橘夏生『セルロイドの夜』

ニャン鍋賞 パティシエ
百万個フィナンシェ焼けば宥されて天駆けるべし美貌のパティシエ
小林真実 「かばん」誌(時期調査中)
パティシエが三人がかりででも何も作らなくって夕日をみている
吉岡太朗『ひだりききの機械』2014 
※ただし、他に「シェフ」3首、「コック」3首、「料理人」4首がありました。

ニャン鍋賞 旅芸人 
弱者すなはちわれより少し撫肩に描かれピカソの旅芸人等
ルビ:旅芸人等【サルタンバンク】
塚本邦雄
あおむけに靴紐むすび起きるとき昔旅芸人だった気がした
雪舟えま『たんぽるぽる』2011

ニャン鍋賞 占星術師
蛮族の占星術師を出し抜いて星空の下に君を連れ出す
植松大雄『鳥のない鳥籠』2000
駅前の占星術師はこの駅ができる前からこの場所にいた
鈴木晴香『夜にあやまってくれ』2016
※「占い師」は5首あった。

ニャン鍋賞 配達員
覗き穴越しの夕暮れ穴底にいるのは僕か配達員か
木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』2016
帰りたい配達員から帰ってほしいわたしがすぐに受け取る荷物
鈴木ジェロニモ「鈴木ジェロニモ自選短歌180首」作者ブログnote2023/3/11

ニャン鍋賞 作業員
素裸のマネキンはこぶ作業員の能面のやうな顔をうやまふ
前川佐重郎(出典調査中)
二百円を我に乞いたる自称元除染作業員にこの冬遇わず
齋藤芳生『花の渦』2019


■2025年6月16日 ワン鍋賞 保母
         ニャン鍋賞 カウンセラー

 本日の闇鍋短歌総数 132,357首

いろいろな職業の詠まれる頻度を見ていたら、「保母」という語を詠む歌がたった1首しかないことに気づいた。
現実に多くの人が従事していて日常耳にすることも多いのになぜだろう。

子を保母にあずけて駅へ急ぐ朝どうしても嘘つきのようにさみしい
早川志織『クルミの中』2004

また「カウンセラー」も、保母さんほど日常接するわけではないとはいえ、2首しかないのは意外だった。

わたくしに敵なんかゐないと言ひ聞かすカウンセラーは魔女に似てゐる
浦河奈々『マトリョーシカ』
飲み込んだ言葉がきっとあるはずのカウンセラーよ 駅まで雨だ
虫武一俊『羽虫群』

ついでに、他の職業の歌数も書いておく

アナウンサー:5首
予報士 6首
スパイ:7首
キャスター:9首
芸人:9首
刑事:12 警部:3 計15首
巡査:10首 お巡りさんorおまわりさん:6 計16首 
歌手:26首
探偵:26首
俳優:11/女優;15 計26首
力士:27 お相撲さんorおすもうさん:5 計32首 
選手:33首(種目はいろいろ)
医師:76 医者51 計127首
教師:67  先生:228 計:295首




■2025年4月7日 ワン鍋賞 仮縫い

ねえちょっとじっとしていて千本の仮縫いのまま生きてもいいの
藤本玲未『オーロラのお針子』2014

「仮縫」という語を含む歌は、約13万2千首のなかで、これ1首でした!!

■2025年4月7日 ワン鍋賞 遣唐使

口いっぱい桃の花びら頬張らすときだけ正直癖遣唐使
鈴木有機「かばん」2002・5

「遣唐使」という語を含む歌は、約13万2千首のなかで、これ1首でした!!
「遣隋使」の歌はありませんでした。

俳句で
おんおんと遠はるせみや遣唐使
冬野虹『網目』

を見つけました。

歴史の授業で習った語、歴史上の人物名、を含む短歌のアンソロジー
そのうちやってみたい。

■レア鍋賞 幕府

ちょっと様子見で「幕府」を探してみたら!

さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく
望月裕二郎『あそこ』2013

倒置せよ波浪注意のうしみつに足利幕府濡れ濡れて来
和合亮一 作者ブログ2015・10・27

肉体が幕府であれば刺激もとめやまざる舌はさながら出島
小池光『日々の思い出』

俳句も2句発見

鮟鱇の鍋の鎌倉幕府かな
大畑等 『ねじ式』2009

パンジーが幕府をひらけさうですね
土井探花 現代俳句協会HP 第40回兜太現代俳句新人賞受賞作

うん、いい手応えだ!

■2025年4月6日 レア鍋賞 ナポリタン 4首

本日の闇鍋全データ 180,432歌句
     うち短歌 131,894首
  このなかに「ナポリタン」を詠み込んだ歌は4首だけ。

ばくぜんと死を考える朝っぱら ナポリタン・スパたのむ昼過ぎ
白瀧まゆみ『自然体流行』1991

夕日色したナポリタンを食べている間は弱虫でもよいこととする
月夜野みかん 「五線譜もしくはストライプvol.1」 (2013年11月2刷)

夕焼けで炒めたようなナポリタン食う常連に猫背が似合う
鈴木ジェロニモ 「鈴木ジェロニモ自選短歌180首」(作者note 2023/3/11)

枝分かれした運命のいくつかのピーマンだけが具のナポリタン
山中千瀬『死なない猫を継ぐ』2025


 妙にシリアスですね。また、偶然でしょうが、この少ないなかで2首が、ナポリタンの色を夕焼けと結びつけているのがちょっとおもしろいと思いました。
 
 俳句も探してみました。

秋暑し演歌のようなナポリタン
石原ユキオ 作者サイト「石原ユキオ商店」

手持ちデータに「ナポリタン」を含む句はこの1句しかなかったので、ネットで探したところ、

六月のゆふぐれ色のナポリタン
草子洗 2020・6・18毎日新聞「季語刻々今昔」

永き日の病室母のナポリタン
晴田そわか 作者note 2023・2・6

の2句を見つけました。

俳句でも、この少ない数の中、「ナポリタン」と夕暮れの色が結びついていることに注目。理由はわからないけれど、意外に思いつきやすいのかもしれません。

川柳も探してみたのですが、「ナポリタン」は投稿サイトでは多く見られる題材のようです。



■2025年3月30日 レア鍋賞 木の股 3首

本日の闇鍋全データ 180,432歌句
うち短歌 131,558首

木の股に澄みつつしろき春雪の卵ほどなる玉のやさしさ
北原白秋『橡』1943

世界樹がふるえながら葉を落とす 木の股の形状きそいあい
山下一路『世界同時かなしい日に』2024

木の股から生まれて春のこどもたち味蕾ひろげて春をたべる
高柳蕗子「短歌」2023/05 (豆歌集『雑霊のシナプス』2025)


■2025年3月30日 レア鍋賞 印鑑5首

印鑑を押してください捨印を押してください捨ててください
松木秀『RERA』

牛乳からカゼインなるを取り出して固めてできた印鑑を押す
松木秀『色の濃い川』

印鑑を押して力を抜くまでのつかの間散漫の心はあらず
尾崎左永子(出典調査中)

両親が人間になる玄関の鏡台の印鑑ひとつだけ
藤本玲未『テリーヌの夢』2025

正直じいさんが足りない 吉相の印鑑たちをヒトにもどせ
高柳蕗子「かばん」202306 (豆歌集『雑霊のシナプス』2025)

★ここに自分の歌が交じるのが嬉しい感じ
■2025年3月30日レア鍋賞 PARCO 6首

夕照はしづかに展くこの谷のPARCO三基を墓碑となすまで
仙波龍英『わたしは可愛い三月兎』1986

夕ぐれは109の後方にPARCO三基をしたがへて来る
松原未知子『戀人(ラバー)のあばら』1997

昭和二十三年六月十三日太宰治死す 嗚呼!夕照のPARCO
藤原龍一郎『花束で殴る』2002

はじめてのロンドン帰り秋の日に金子由香利を聞きたるPARCO
中村幸一『あふれるひかり』2016

被曝だ、と笑い男らが吉祥寺PARCOを出でて夕立の中へ
染野太朗『人魚』2016

戦場はルサンチマンのスクランブルPARCO本気で墓碑にするまで
山下一路『世界同時かなしい日に』2024

仙波の歌が「PARCO」を詠んだ最初の歌、かどうかはわからないが、少なくともある程度知られて影響力を持った歌である。
山下の歌は仙波の歌を強く意識しているのは確かだが、他も、どの程度意識したかわからないが、夕暮れの光景でなんとなく「墓」だったり死に関わるものを詠み込む例が多いようだ。


■2025年3月24日 ワン鍋賞 はっけよい

 「はっけよい」「ハッケヨイ」「八卦良い」の3種類のテキストで検索。
 これ1首しかなかった。

はっけよいのこったのこった想いはねそなたの失脚願う愛情
久保芳美『金襴緞子』
■2025年3月16日 ワン鍋賞 前売り

「前売」という語を検索してみたところ、データベース闇鍋の13万首のなかにこれ1首しかなかった。

途方もなく未来のことを託される前売り券が重たくて春
塚田千束『アスパラと潮騒』2023

***






2024年9月19日木曜日

レア鍋日記2024年 (随時更新しています)

→レア鍋日記とは

こちらはたまに更新しています。

■2024・9・19 ニャン鍋
足ツボ

ないだろうと思いながら「足ツボ」を検索したら、なんと2首もあった。

足ツボに点字ブロックが気持ちいい※良い子は真似してはいけません
柴田瞳(出典調査中)

足ツボが効かないところが面白い辛いもの好きなのも愛おしい
yuki 作者ブログ(note)「作業用 50首」

「足ツボ」でなく「ツボ」で検索してみたところ、以下の2首を発見した。

「お仕事中すみませんけど馬の耳のツボに関する本ありますか」
石川美南『裏島』

ヤクルトを運ぶ女性に尻尾振る貴方のツボはそこだったのね
ゆすらうめのツキ「かばん 新人特集号」2010・12

上記「yuki」という作者の歌をざっと見ていて、レア鍋賞的な単語が多い気がして(感覚でしかないけれど)、しかもそれらが、他の語との組み合わせ方もレアである気もする。
たまたま目に入った「現在進行形」を見てみよう。

現在進行形

吾も少し関わっている 少女らの現在進行形の思い出
俵万智『かぜのてのひら』

現在進行形のことばかりだしきっとどうにかなっているんだ
辻井竜一『遊泳前夜の歌』2013 

連写するシャッターの音で出来た顔は現在進行形の神話
作者ブログ(note)「作業用 50首」

「連写・現在進行系・神話」という、飛躍含みの取り合わせが、飛躍だけれどかすかに軌跡というか、軌跡の気配ぐらいだが、感じられて、いい感じのレア感だと思った。

■2024・8・22 ナイ鍋


本日の闇鍋短歌、約13万首
「やっかむ」という語を使った短歌は見当たりません。

ただし、【妬む】や【嫉妬】はものすごくいっぱい。

【嫉む(そねむ)】は5首
能面の泥面【でいがん】がもつ翳りみきしみじみとせる嫉みをせむか 
生方たつゑ『青粧』
ほか

■2024・8・15 このそのあのどの 【ワン鍋賞】
いわゆる「こそあど言葉」を意識的に使っている歌を探してみた。

・このそのあのどの
 4つとも含む歌はこれ1首
それともこの・あの・その・どの・順接のだれもがアンサンブルの出身
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016

・このそのあの

この椅子に坐るすなはちその椅子にまたあの椅子に坐らないこと
香川ヒサ『ヤマト・アライバル』

この出入口は草地や森に、その出入口は地下や湖底に、あの出入口は駅や街に、繋がる
松平修文『トゥオネラ』

・このあのどの
この木あの木そのむこうの木 どの影も影にためらいがある
沖ななも『天の穴』1995

自分もいつのまにか詠んでいた。
すれちがうあの船この船手を振ればどの船にもいる片目の水夫
高柳蕗子『回文兄弟』

■2024年6月21日
 電荷・電化【ワン鍋賞】殿下【ニャン鍋賞】


本日の闇鍋データ短歌総数 129.428首

わけあって「でんか」という音の語を含む歌を探したところ、
「電荷」はこれ一首のみでした。

何げなき冬に触れたるセヱタァにをのこふたりの電荷ゆきかふ
和里田幸男(出典調査中)

「電化」もこれ一首のみ。

後部シートに電化製品を転ばせて郊外という町の平たさ
棉くみこ(出典調査中)

「殿下」は2首あった!

いかばかり殿下はこの国の溜息の象徴として「ん」を発せり
山下一路(かばん誌 時期調査中 『スーパーアメフラシ』には未収録)

でも恋は出もの腫れもの出くわしたでんでん虫のでっかい殿下
高柳蕗子『あたしごっこ』



■2024年2月17日 すごろく【レア鍋賞】

わけあって「すごろく」の歌をさがしたら、以下3首しかなかった。

すごろくのように突然ふりだしに戻りたくなる日曜の夜
本多忠義『禁忌色』

振り出しにダダもこねずに回帰した双六の駒褒めてあげなきゃ
久保芳美『金襴緞子』

飴をくちにいれたまま寝て飴味のよだれをたらす すごろくしたい
橋爪志保『地上絵』

■2024年2月17日 あらま・あらまし【ワン鍋賞】

たて笛の高いドに指をあわせて「あらまあ二月あらまあ五月」
北川草子『シチュー鍋の天使』

あらましは黄色い本に書かれていたのだ オリンピックのまえに
詞書:Where is the emergency shelter?(避難場所はどこですか?)
山下一路『スーパーアメフラシ』  

「あらまし」(概略)を探すつもりで「あらま」という文字列で検索したところ、「あらまし」(であればよいのに)が7首、「あらまほし」が4首あり、「あらまし」(概略)は1首だけ、そしてオマケ的に「あらまあ」の歌が見つかりました。

■2024年2月8日 三千世界【レアじゃなかった賞】

「三千世界」だなんて、現代短歌ではレアで当たり前だと思えるのだが、そのわりには詠まれている気がする。
こういうケースは「レアじゃない賞」としてここに取り上げようと思う。

先行して有名な歌などがあると、いまあまり使わない語も、短歌の世界には生き残りやすい。「三千世界」といえば良寛の

あわ雪の中にたちたる三千大千世界(みちあふち)またその中にあわ雪ぞ降る

という、すごく迫力があって美しい歌が存在する。
そして、高杉晋作の、おそらく歴史ドラマなどで耳にして一般に知られている都々逸。

三千世界のカラスを殺し 主と朝寝がしてみたい

「三千世界のカラス」がこれまた印象的。
良寛の雪の白と晋作のカラスの黒は、三千世界に舞うものとして対照的であることも、無意識のうちにイメージが重ね合わさる効果もあるような気がする。

とにかく、こういう先行作品のおかげで、仏教用語である「三千世界」が、なんとなく知られており、かつ詩的なパワーをも帯びてきたのだと思う。

うなだれた花花のそばを歸るとき三千世界にただわれひとり
前川佐美雄『白鳳』

花虻はホトケノザに来てとまりたり三千世界のここがまん中
小谷博泰『河口域の精霊たち』

銀紙に歯をあつる瞬スパークす歯にあつまれる三千世界
渡辺松男『時間の神の蝸牛』


上記のなかでは渡辺松男の歌には特に驚かされる。衝撃の比喩に使うとは。
あの銀紙を噛んだときの独特の衝撃的な感覚を三千世界の存在感に例えるという、唯一無比でありながら、あの衝撃を表すならもうこの比喩にまさるものはなかろうと思えてしまう。

実は私にも「三千世界」を詠んだ歌があるけれど、「須弥山大運動会」という仏様の運動会を詠んだ連作のなかにあるので、「三千世界」という仏教用語が出てくるのは当然で、そういう意味では面白みが足りない。
休止する三千世界のすむずみに届け仏のはずむ息づかい
高柳蕗子『回文兄弟』

川柳にも、発想の近いおもしろい句があった。

三千世界にくちびるが切れた音
湊圭伍『そら耳のつづきを』


冬に荒れた唇がぴりっと裂ける。小規模で無音だが、意外な衝撃がある。

なお、短歌にも俳句にも川柳にも、より普通の取り上げ方で「三千世界」を詠む例は他にもあった。




2023年12月10日日曜日

レア鍋日記 2023年 (随時更新しています)

 →レア鍋日記とは

たまに更新しています。


■2023・12・10 古希(空鍋)

先月古希を迎えたので、「古希」という語を詠む短歌を探したら、DB「闇鍋」にはひとつもなかった。

本日の闇鍋 総数174,843歌句
      うち短歌126,588首
        俳句 33,607句
        川柳 14,073句
        (その他 都々逸などが少しあります。)

なお、「還暦」は7首、「喜寿」4首、「米寿」3首、「卒寿」3首があり、
なぜ「古希」だけないのか、気になります。
「コキ」という固くて短い語感が歌人の詩心をくすぐらないのかな?

還暦等の歌を1首ずつあげておきます。

白南風や遠山なみに空ありてわれは還暦の少年となる
三枝昻之『世界をのぞむ家』2008

果てる昭和の母が故郷の秋天にくしけずりくしけずる喜寿の白髪
三枝昻之『塔と季節の物語』

死ぬること話題とならぬ日はあらず米寿の義父の眉の毛長し
久々湊盈子 (出典調査中)

長くながくかかりて選ぶ夏帽子卒寿の母に気力のわきて
中川佐和子 『夏の天球儀』2022


■2023・10・19 ヒーローたち
(ワン鍋賞・ニャン鍋賞)
スパイダーマン、スパイダーマン、バットマン、デビルマン、キカイダー、セーラームーン、仮面ライダー


本日の闇鍋短歌126440首のなかでスーパーヒーローを思いつく限り検索してみた。

【ワン鍋賞】
吸い付かせ踏ん張らせども翌朝はまた落ちているスパイダーマン
武富純一『鯨の祖先』2014

バットマン交通事故死同乗者ロビン永久記憶喪失
穂村弘『ラインマーカーズ』
(たった1首がこの内容では気の毒……。)

デビルマン群れ飛ぶやうな大茜ひたに地上のわれを囲へり
有沢螢『朱を奪ふ』

「ジロー、チェンジ、キカイダー」と命じても「ううう」と呻く加藤治郎は
穂村弘(出典調査中)

美少女戦士セーラームーン「月にかわってお仕置きよ!」願わくば世界に
藤原龍一郎

【ニャン鍋賞】
甘酒の香る歳月の門にしろがねの仮面ライダー仁王立ちにて
井辻朱美『クラウド』2014

二代目の仮面ライダーやつてきて「ライダーキック!」と叫びつつ蹴る
喜多昭夫『青夕焼』1989

なお、大人気は「ウルトラマン」18首、「アンパンマン」11首。
また、「鉄腕アトム」も人気で8首。他に「鉄腕」なしの「アトム」(内容からみて手塚漫画のアトムを詠んでいると思われる歌)7首もある。
「鉄人28号」も6首と健闘。
「キン肉マン」「月光仮面」「少年ジェット」「ゴレンジャー」なし。

■オバQ(ワン鍋賞)

★ヒーローじゃないけど

落書きは白いチョークのオバQか性器かせつなく夕日があたる
藤原龍一郎(出典調査中)

「オバQ」という語を使う短歌はこれ1首

なお「ハットリくん」も1首だけあったが、作者も出典もあやふやなので、今回はノーカウント。

■田んぼに落ちる 2023・10・12 (ニャン鍋賞)


まったく脈絡なく、「田んぼに落ちる」というフレーズが脳裏に浮かんできた。
私が子供の頃は、まあまあ都会に近いうちの近所の道端にも田んぼがあった。
あれなら、子どもとか酔っ払いとかが「田んぼに落ちる」ことは、きっとよくあることだったと思う。今だって田んぼのある場所ならば、なにかの拍子に落ちることはあるだろう。

「田んぼに落ちる」のは、泥だらけになる大事だが、さして危険ではない。「あの日、帰りに田んぼに落ちてえらい目にあった」と笑い話にできる。そういうところを生かして詠まれてないかな、と思って検索してみたら、
私の手持ちデータベース内にはたった2首しかなかった。
今なかったら、この先もほとんど詠まれまい、と思うので、ここに書いておく。

猫さえも横切らない一本道飽きて来た頃田んぼに落ちる
ふらみらり「かばん」2012・9

この歌は私が「きっとある」と思った感じそのものだ。もしかすると、以前にこの歌を「かばん」誌で目にしていたから、先に書いたようなことを考えた可能性もある。

田んぼに落ちて笑いあうふたりには巨大すぎるアメリカザリガニ
山下一路『スーパーアメフラシ』2017

こちらの歌はクセモノ。
普通なら「二人」は恋におちるもの。その勢い余ってか思いがけず田んぼに落ち、それでも面白がって笑っていたら、さあタイヘン。
どんぐりには親切などじょうが現れたが、この田んぼには巨大なアメリカザリガニがいて、二人は……、という映画みたいな歌。
(ただし、この作者には社会詠が多い。おもしろおかしく暮らしていたらいきなり大国のえじきになる、というような比喩ともなり得る歌だと思う。)

■緩衝材 2023・8・12 (ニャン鍋賞)

「緩衝材」って短歌では見かけない言葉じゃないかな、と思ってちょっと検索。

本日の闇鍋 短歌総数125,484首
うち、「緩衝材」を詠み込んだ歌は2首でした。

ちぷたぷと緩衝材を潰してるちぷたぷ、きみはおでこ広いな
秋月祐一『この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく』

残りたる春のいくつか押し出して緩衝材に穴だけがある
toron*「胎動短歌」vol.3 2023/5

■梱包材 2023・8・12 (ワン鍋賞)

ついでに「梱包材」も検索したら、これ1首だけでした。

梱包材つぶし飽きたらひねるのをはじめてからの記憶が荒い
山階基『風にあたる』2019

■プチプチ 2023・8・12 (ワン鍋賞)

ついでのついで、「プチプチ」も探したら1首ありました。

プチプチをプチプチするのがとまらないきもちはゴドーを待っている
杉山モナミ 「かばん」2011.9

■ビニール紐 2023・8・12 (レア鍋賞)

ついでのついでのついで 「ビニール紐」(本当の名称はわからないが)も探したら、3首ありました。

白いビニール紐に縛られ笑む人も若かったねと言われるだろう
東直子 短歌日記『十階』

汚れたるビニール紐が足首にからまるいたるところに国境
野樹かずみ『路程記』

荷を巻けるビニール紐を切りたれば撥ね上がり空のなにかを切りぬ
ルビ:空【くう】
梅内美華子『真珠層』2016

2022年12月22日木曜日

レア鍋日記 2022年

 →レア鍋日記とは


■【レア鍋】視神経


2022年12月22日
本日の闇鍋全短歌データ 124,027首

「視神経」って短歌によく使われている気がしていましたが、私の「闇鍋」には3首しかありませんでした。

解体の部品を垂らすケーブルは視神経のごとしも 絡まる
加藤治郎『昏睡のパラダイス』1998

視神経は交叉したまま モノレールの窓に青葉の街暮れてゐる
魚村晋太郎『銀耳』2004

視神経の束をあげたいヘッドライトは夜の湿度を切りひらくだけ
平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』2021

まず、それぞれにすごくビジュアルとしていい歌だ、と感じます。
視神経って普通はあんまり見たことがないものですから、これは目に浮かべるための一般的比喩表現ではなく、感覚的に目に浮かびそうな気がする(特に3首目)、というレベルのビジュアルです。実体験でなく、イメージ体験を喚起する、というか。


「視神経」という言葉からなんとなく、この写真みたいな感じに細かく枝が広がっているものを思い浮かべてしまうんですが、いかがでしょう?
上記の短歌も、少なくとも1首目,2首目はこれみたいです。

そこまで考えて、現物は見たことはない、だから実体験の喚起ではないけど、画像でこういうものを見たかもしれない、だとすると普通の比喩かしらと思えてきてしまいました。

気になって調べてみたら、その結果、確かにそういう画像はありました。

が、おどろいたことに、枝分かれしているのはどうやら血管であり、視神経ではないみたいです。

なんだこれ? 問題発生かしら???
まあでも、詩歌的には、事実より通念、そしてなにより語感やイメージがものをいうのであって、上記の作品を貶めるつもりは毛頭ありません。念のため。

さて、ついでなので、俳句と川柳も探してみました。
俳句は私の「闇鍋」と、現代俳句協会のDBその他大型DBでも探しましたが、一句もありませんでした。

川柳では、「闇鍋」で次の1句を発見。
視神経に一本薔薇の木が混じる
情野千里『川柳作家全集49』
視覚イメージとしては上の方に置いた短歌作品と似た捉え方をしているようです。
「視神経」のイメージ描写として非常に美しく、「視神経」という語のイメージ領域を拡大する作品だと思います。

「おかじょうき」のDBにはナシ。

なお川柳データバンク※には上記情野千里の句のほかに2句ありました。興味がある方はご自分で見てきてください。
※このサイトは、類想句を避けるなどのトラブルを防ぐことを目的の一つとしているようです。また、「無断で利用することは著作権上の例外を除き著作権者の許諾が必要」と書いてあります。それは法律通りです。著作権侵害は特別な場合を除いて親告罪ですから、このサイトに作品を置いてあるということは、無断使用はトラブルになるぞという警告の意味があると思えます。だたその法律なかで例外として「引用」は認められています。情野千里の句は、既に他のサイトでも引用されていて代表作のようですし、「引用」の条件を意識しなが引用させていただきました。

 

■【ニャン鍋】エゴサーチ

2022年10月20日
本日の全短歌データ 123,831首

「エゴサーチ」は2首あった。感触としてはもっとありそうな語。
新しい人の歌の入力が足りないのかも。

エゴサーチにあつらえむきの日に階下ふたり離別の手順を終えて
睦月都 2012年短歌研究新人賞応募作

エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)

上記の

エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)
をみて、ついでに「リツイート」も調べた。この他に4首発見。

「釜石にいくためにガソリンが欲しい」リツイートできず涙流しぬ
田中濯『氷』

フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)

会心のツイートしたあとRT確認しにゆく自意識あわれ
ムラムラと承認欲求湧く夜は褒められツイートRTせり
上記2首 笹公人「詩客」2012-10-12

なお「ツイート」(「リ」なし)は6首あった。

■【レア鍋】フォロワー

フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)

を見て、ついでに検索してみたら「フォロワー」はこのほか2首あった。

青空を鳥のかたちに切り抜いて摑む/離れるフォロワーの数
大西久美子『イーハトーブの数式』

陸上部女子限定のグループ名「さくらんなー」はフォロワー多数
千葉聡『短歌は最強アイテム』2017

■【レア鍋】リスニングテスト

2022年10月18日
本日の全短歌データ123,825首

「リスニングテスト」なんてなさそう、と思いながらきまぐれに検索してみたら3首もあった。

リスニングテストが聞こえるアメです「始め」と言ったらなめてください
伊舎堂仁『トントングラム』2014

リスニングテストの漏れる校舎から欧米人の巨大な会話
岡野大嗣「詩客」2017-06-03

君の声思い出してるリスニングテストの問いと問いのあいだに
近江瞬『飛び散れ、水たち』2020


■【レア鍋】ヒメジョオン

2022年8月26日
本日の短歌全データ122,967首


もう誰も月を覚えていない昼はるじおん咲きひめじょおん咲き
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』2015

ヒメジョオン摘む人の誰もいなければ胸の高さに咲く線路脇
田宮智美『にず』2020

折ればほら茎に空洞がないものはヒメジヨヲンよとわが庭の花
永田和宏『置行堀』2021

ありふれた野草で、見た目は地味だけど名前が素敵、というねじれがあるから、もっと詠まれているかと思ったが、意外にも3首だけ。

■【ニャン鍋】スクロール

2022年8月9日
本日の短歌全データ122,966首

スクロールして行く度に果ては来てまた銀紙を噛んだ味だよ
久哲 うたのわH22.10.28

携帯の着信記録スクロールすればひらたく癒されている
江國凛(出典調査中 だいぶまえの「かばん」)

■【ニャン鍋】招き猫

2022年7月9日
本日の短歌全データ 122,622首

招き猫倒れしという写実歌のおそろしければこの花吹雪
藤原龍一郎『19××』1997

招き猫の無表情の爪紅し すぐ分かります分かるはずです
東直子『十階』


なお、俳句と川柳も1句ずつ。

招き猫水中の藻に冬がきて
波多野爽波『骰子』

招き猫は造花ばかりが描いてある
中村冨二『千句集』

■【レア鍋】蓋がない

2022年7月9日
本日の短歌全データ 122,622首

「蓋がない」ということを詠む歌は以下3首でした。
(検索文字列「蓋がな」「蓋のな」「蓋の無」「蓋な」「蓋無」で抽出し無関係なものを取り除いた。)

蓋のない記憶と思ふ 菜の花の瓶詰めにぽんと山の香がして
田村元『北二十二条西七丁目』2012

この海にぴったりとした蓋がないように繋いだ手からさびしい
虫武一俊『羽虫群』

蓋のない深い器に沈みたい無心にならず轆轤をまわす
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』


なお俳句は見つからず、川柳は1句ありました。

蓋のない顔で笑ってくれました 徳永政二


■【ナイ鍋】社会の窓

いや、無いだろうとは思いましたが、俳句で見かけたので、負けたくない、とも思って探したら、やっぱ短歌のほうは無かった。(笑)
難しい題材ですが、うまく生かした歌があったら教えてください。
2022年6月23日

俳句
テキ屋きて社会の窓からいわし雲 
大沼正明『異執』2013

「ズボンの前」みたいな言い方はどうかな。
1首発見。

へこをせし昔男は知らざらむズボンに前あきのファスナーあるを
浜田蝶二郎『からだまだ在る』1997


「チャックが開いている」的なことを詠む歌を探してみました。
「チャクラ」だ。けど、なんだか近い!

「だばだばにあなた漏れてる気をつけて胸のチャクラが開きっぱなしよ」
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

チャックが開いた、けど背中のだった……。

唐突に下の名前で呼ばれたら背中のチャックが開いてしまうよ
岩倉曰『harako』2022


歌はすてきだけど、これも違いますね。

きみの背の感触残るわが背骨 チャックを開くように別れき
田中槐(出典調査中)

なお、英語ではXYZと言うことがあるらしいですよ。

「eXamine Your Zipper(チャックを確認しなさい)」の略だとか。ほんとかな。

あと、社会転じて「理科の窓」とかいう人もいるらしい。

■【ワン鍋賞】ぺっちゃんこ

2022年6月21日
本日の闇鍋短歌データ122,733首

日月の球体通り過ぎてゆきぺっちゃんこなり母の死顔
渡辺松男(出典調査中)


なお俳句でも1句発見

駅の裏死んでるバッタぺっちゃんこ
久留島元「詩客」2012-11-16-11863

■【ニャン鍋賞】算段 【レア鍋賞】散弾

2022年4月27日
本日の闇鍋短歌データ122,432首

「算段」なんて言葉詠まないだろうと思ったが、意外にも2首発見。

この病気では死にませんよといふなれば生きる算段をせねばならず
斎藤史『秋天瑠璃』
 
水撒きのホースより虹 乙女らは恋の算段 葉陰に揺れて
村田マチネ『バベル』

一方、「散弾」はけっこうありそうだと思ったが、さほどではなく、3首だった。

やわらかな風の散弾てのひらに五つ集めて風に戻した
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013

車中泊の朝に迎える散弾を喰らったような窓の凍結
中山俊一『水銀飛行』

夏の柳の枝は太くて木洩れ日が散弾みたいに頬辺を差す
久真八志「かばん」2013・9

■【ワン鍋賞】蹴っ飛ばす

2022年4月21日
闇鍋短歌データ121602

春は何か蹴っ飛ばすようにして起き上がり前に進むような季節だよな、と思い。
「蹴っ飛ばす」「蹴り飛ばす」を、ひらがな表記等も含めて検索したら、なぜかたったの1首しかありませんでした。

先生に蹴り飛ばされて伏す床にトイレスリッパ散らばっていく
鳥居『キリンの子』2016

珍しい語でもないのになんで少ないのかしら。

2022年12月追記
すみません。「蹴飛ばす」「蹴とばす」なら16首もありました。


■【ワン鍋賞】四捨五入

2022年4月17日
闇鍋短歌データ121602

年齢を四捨五入で繰り上げて憂えるような馬鹿を死刑に
枡野浩一(出典調査中)

■【ニャン鍋賞】うぬぼれ

2022年4月12日
闇鍋短歌データ121602

うち「うぬぼれ」or「自惚」という文字列を含む歌は以下の2首だけでした。

僕たちはうぬぼれ屋だからうぬぼれを売る 売り上げでひんしゅくを買う
宇都宮敦 朝日新聞夕刊2011年5月24

自惚の錯覚すなはち恋だから
 子供は要らない
  ザマア見やがれ
ルビ:自惚【うぬぼれ】
夢野久作『猟奇歌』(「夢野久作全集3」ちくま文庫1992)

■【ニャン鍋賞】大女

2022年3月30日
闇鍋短歌データ121568

うち「大女」(かな表記を含めて検索)を含む歌は2首でした。
「大きな女」など他の表現は対象外。

大女死すごと大き物語死して世界は荒涼とせり
松村由利子『大女伝説』2010

秋の夜を大女(おおおんな)となり怒りおり重たき足に月光を踏み
梅内美華子 『若月祭(みかづきさい)』1999



なお「大男」は以下5首発見。

大男が梅雨明けちかき街に来てそらの滑車をまはしはじめる
永井陽子『ふしぎな楽器』1986
チョコレートバーほどの電話取り出して大男話すいたくやさしく
米川千嘉子『一葉の井戸』2001
大男の黙狂ひとり暁【あかとき】の野辺に世界を支えて佇てり
山田消児『アンドロイドK』1999
ご近所の歯医者へ来たりて大男の太きおゆびに歯を抜かれたり
花鳥佰『しづかに逆立をする』2013
大男の欠伸チェロの黒ケース光は肩でうけとめるしかなく
東直子「短歌研究」201010
 

■【ナイ鍋】おっちょこちょい

2022年3月22日
闇鍋短歌データ121526首
「おっちょこちょい」という語を詠み込んだ歌なし。

5月17日追記「そそっかしい」を2首発見。
頬に一針縫いあとのあるきみのそのそそっかしさを海に還すね
東直子「かばん」200208
そそかしい走禽即死 空涙そおっと注ぐ蘇生せぬよう
高柳蕗子『あたしごっこ』

■【ワン鍋賞】粗忽

2022年3月22日

原因をつきつめてのちはかなきはつねとおもえば粗忽の釘ぞ
藤原龍一郎『切断』 

■【ニャン鍋賞】あんぽんたん

2022年3月22日

あぽぉーあぽぉーあんぽんたんのあっぽぉぱあでんじゃあでりしゃすAPPLE-PIE
神﨑ハルミ
(ピコ太郎よりはるか昔の作品。発表時期は定かではないのですが、作者がこの筆名を使っていたのははるか昔だから。)

青中の水中のああ自在片安本丹の背鰭峻烈
ルビ:青中【あおなか】、水中【みずなか】、安本丹【あんぽんたん】
依田仁美『異端陣』2005

■【レア鍋賞】まぬけ

2022年3月22日

うたうならデスクの隅の海綿のようにまぬけに孔をひらいて
佐藤弓生

あほまぬけ あほまぬけとぞビラ数へあほまで終りぬ九十三枚
※下線部分は傍点
安田純生『白珠』

護岸工事の音もまぬけな月曜日へたくそだった今日の仮病を
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

■【ナイ鍋】おちおち

2022年3月17日
闇鍋短歌データ121101首
「不安でおちおち眠れない」などの「おちおち」を使った歌は、今のところ1首も収録されていない。

■【ワン鍋賞】てんてこ舞い

2022年2月13日
闇鍋短歌データ120980首

ちかごろ耳にしなくなったコトバ。
短歌に使われることも少なそうだが、どうだろうと思って探したら、1首だけ発見。

オリジナルのダンスを華麗に踊りますてんてこ舞いと呼ばれております
久保芳美「かばん新人特集号」2010・12

■【レア鍋賞】~をあなたに

2022年2月11日
闇鍋短歌データ120980首

「忘れな草をあなたに」という歌があるけれど、そういうふうに末尾が「~をあなたに」である短歌ってどうかなあと思って探してみたら3首あった。

うつくしき雨降り込めるフィルムの発火してゆくさまをあなたに
古谷空色(出典調査中:だいぶ前の「かばん」誌)

いつかまた逢えなくなるねと天界のブラックリストと野望をあなたに
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

かばんにはもれなく風、それももう目も眩む熱風をあなたに
鈴木智子『砂漠の庭師』2018

「~をあなたに贈る」など、「~をあなたに」が末尾でない例ならもっとありますが、すごく違う感じです。

■【ワン・ニャン・レア鍋賞】「○行」

2022年2月9日
闇鍋短歌データ120980首
うち「あ行」2首
  「か行」3首
  「さ行」3首
  「た行」1首
  「ら行」1首
  「ぱ行」1首

うへへへと忘却の彼方でカクレンボああお下劣なおまえのあ行
久保芳美『金襴緞子』金欄椴子

ネアンデルタールの水墨画のようなア行音 永遠といいaeonという
井辻朱美『クラウド』2014

かき・くるみ・きのこ・くり・くこ・こめ・かうじ秋はカ行の稔り豊けし
丹波真人『花顔』

名字にはたぶんカ行が似合うひと日射に耐えていたまっ白く
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

炎暑の車道が膨らみそうでわたしには月の世界とカ行のひとが
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘
俵万智『サラダ記念日』

そら、スカイ、スペース、砂漠 サ行とはとても広くて一色なもの
松木秀『RERA』

サ行音爽やかなものと感受せぬ金がざらざら一首を読めり
ルビ;金【キム】
大口玲子(出典調査中)

潮騒のやうなるサ行の訛りかなわたしは寿司も獅子も大好き
ルビ;寿司【すす】 獅子【すす】
逢坂みずき『虹を見つける達人』

崇福寺 正覚寺下 思案橋 サ行の音の響きあふ町
ルビ;音【おん】
三輪良子『木綿の時間』2016

た行しか知らぬ私は「土」と言う あなたのために「好き」の代わりに
大嶋航(出典調査中)

手の中のラ行のひとにさくら散るはんらはんらやあぶなうつし絵
依田仁美『異端陣』2005

ぽんと、ごくふつうの大きさの声で言うとききらめくあなたの「ぱ」行
杉山モナミ 「かばん」202112

「○行」を詠むということは、語感・音感をとらえ、それを読者と共有できる、という強気が必要だ。読者はその強気をうれしく感じる。そういう題材だと思う。


■【ニャン鍋賞】義憤

2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「義憤」2首

天の川って義憤に似てるひかりの波しゅるるる消えるまで抱きしめる
杉山モナミ「かばん」2019・08

義憤にも似た感情を壜に詰め色とりどりのピクルスにする
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』

■【レア鍋賞】ピースサイン


2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「ピースサイン」3首

喰ひのこされるまでゐてどうだつたのかザリガニらの鋏のぴいす
平井弘(出典確認中)

うまいこと利き手で鼻をかむひとの空いた片手でするピースサイン
山階基 (出典確認中 風にあたる拾遺2012-2015)

十年後に見て騙されたりしないよう小さめのピースサインにしとく
近江瞬『飛び散れ、水たち』

■【レア鍋賞】ほじる

2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「ほじる」4首
(「ほじくる」だけなら2首)

憎まれたグリンピースはほじくられチキンライスは冷めていったの
久保芳美『金襴緞子』

まずすべてほじくってから食べたきを西瓜の種は奥にまだある
染野太朗『人魚』2016

レーズンパンのレーズンすべてほじりだしおまえをただのパンにしてやる
戸田響子『煮汁』

相部屋の感想聞けば「鼻くそがほじれないんだ。鼻くそたまる」
俵万智『未来のサイズ』

■【レア鍋賞】くずもち

2022年1月19日
闇鍋短歌データ120240首
うち「くずもち」4首

橋を渡る娘たちはみな髪をまとめくずもちの中のあんこのごとし
小川佳世子『ゆきふる』2016
   くずまんじゅうのことかな?

一折のくず餅下げて会いにゆく そうですねえと答えるために
東直子『青卵』2001

み墓べに今日はまゐりぬ亀井戸の葛餅買ひて帰り来にけり
古泉千樫

君の好きな葛餅と颯の好きなウルトラマン持ち 361号室へ
永田淳『竜骨(キール)もて』2020

2021年4月7日水曜日

レア鍋日記 2021年

→レア鍋日記とは

■【ニャン鍋賞スペシャル】眼を縫う

2021年12月21日

「眼を縫う」なんてレアで当たり前ですが、複数あること、しかも現代の短歌じゃなくて、古典俳句といっしょだなんて、と驚いてしまいました。
作品どうしも顔を見合わせていそう。

ともだちに子どもができた「おめでとう」クマの目を縫うようにさみしい
兵庫ユカ『七月の心臓』2006

花さくや目を縫はれたる鳥の鳴く
小林一茶
追記:「眼を縫われた鳥」について。食用に飼う鳥を太らせるため目を潰して床下に飼うことがあったそうだ。

■【ワン鍋賞】ぴったりという意味の「ぴちぴち」

2021年11月8日
本日の闇鍋短歌総数118,069首

「ぴちぴち跳ねる」ほうの「ぴちぴち」はまあまあありましたが、ぴったりきつい感じを表す(かなと思われる)のはこの1首しかありませんでした。

ぴちぴちの皮膚にぴちぴち水はねて皮膚と皮膚とはひったりと寄る
東直子(出典調査中)

■【ワン→ニャン鍋賞】~になろうとも

2021年9月9日
本日の闇鍋短歌総数 117,526首

「になろうとも」って、「あんまりないだろうけど、でもあったらいいな」
というそそられ感があって検索。
あった!1首だけ。えらいぞ!

缶詰はこわい 煮付けになろうともひたむきに群れつづけるイワシ
工藤玲音『水中で口笛』

★追記
念の為ネットで探してみたらもう1首発見。ニャン鍋賞になりました。

野茂がもし世界のNOMOになろうとも君や私の手柄ではない
枡野浩一(作者アカウントのTweetより)

■【ニャン鍋賞】サスペンダー

2021年9月2日
サスペンダー。ぴくっと詩的な〝引き〟を感じます。

本日の闇鍋短歌データ117159首
うち「サスペンダー」を含むのは以下2首。

それなりに地に着く暮し 掛け渡すサスペンダーの赤ふとぶとと
岡井隆『ヴォツエック/海と陸』 

ずり落ちたサスペンダーを戻すとき寿命が二秒生えてきたこと
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』

■【レア鍋賞】仲間はずれ

2021年9月2日
冬の雨真夏の嵐 戦争はどれにも似てないなかまはずれ
植松大雄『鳥のない鳥籠』2000

連なれる五本の指の一本は仲間はずれのようである
山崎方代(出典調査中)

四歳児四人おんなじポーズにて仲間外れを蹴るガオレンジャー
塩谷風月「かばん」2001・12

俳句では1句発見。
「闇鍋」の俳句データがまだ少ないので、1句しかないのかもしれません。

うすいくちびる仲間はずれの鳥がいて 穴井太

■【ナイ鍋】

2021年7月19日
「どぎまぎ」という語を使った短歌がみあたりませんでした。
日常でも使わなくなったか?

短歌に詠まれることなく死語になっちゃう単語もあるようです。

本日の闇鍋総数162350
うち短歌115733

★
なお俳句にも川柳にも見当たらないので、
現代俳句協会DBもあたってみましたがナシ。
川柳「おかじょうき」のDBに1句だけ発見。

動物園猿に見られてどぎまぎだ 中道文子
「月刊おかじょうき」2008年7月

■【レア鍋賞】 補正

こういう単語はどうかなあと思って検索。
161706歌句のうち短歌3首ありました。(俳句川柳なし)

光暈のまなこにしばし失ふも光補正に姉あらはるる
和里田幸男(出典調査中)

完全に崩れちゃったらもう無駄だ補正下着と補正予算は
松木秀『RERA』

脳内で補正する愛 今ひとつ身の入らない交わりのあと
柴田瞳(出典調査中)

■【ニャン鍋賞】赤血球と白血球

2021年5月23日
本日の闇鍋全データ171696歌句
赤血球と白血球ともに2首ずつでした。

蕗むきつつおもふべきことならざれど馬の赤血球七百万
塚本邦雄(出典調査中)

なんとなく赤血球のかたちして電子レンジのお皿が回る
松木秀『親切な郷愁』2013

白血球4600 田中から先の尖った武器を授かり
ナイス害「なんたる星」2017.8

「白血球超異常値」と言うときの医者の華やぎ否われの……昏
江田浩司(出典調査中)

この他に俳句1句を見つけました。
たんぽぽの絮に白血球騒ぐ
加藤光樹(出典調査中)

■【ナイ鍋】まんじり

2021年5月16日
本日の闇鍋全データ161641歌句のなかに、
「まんじり」を使ったものはひとつもなかった。

■【ニャン鍋賞】パンパカパン

2021年5月6日 本日の闇鍋 短歌データ115221首。
パンパカパンなんて少ないだろうと思ったら、なんと2首もありました。
また、俳句も、「パンパカパ」を1句発見。

死ののちもこの家族なり春彼岸ぱんぱかぱーんと弁当ひらく
小島ゆかり『憂春』2005

パンパカパンは何が開いているんだろう、パカのときに。 朝ちょっとだけ泣く
橋爪志保「京大短歌」22号

俳句
本日の闇鍋 俳句データは32347句。

貧貪と鳴らし半馬鹿派で行こう
ルビ:貧貪【ヒンドン】 半馬鹿派【パンパカパ】
大沼正明『異執』

■【ニャン鍋賞 ふくわらい】

2021年5月1日 本日の闇鍋全短歌データ115083首
そう多く詠まれているとは思わなかったが、やっぱり、2首しかなかった。

福笑いのからだ今ごろ痛んでるのではないかな さくらは生きて
杉山モナミ「かばん」2016・4

福笑い君が笑った円盤の大きな銀に乗りにけるかも
三好のぶ子「かばん」1998・1


■【ワン鍋賞】ずらずら

2021年4月28日 本日の闇鍋全短歌データ 115062首
「ずらずら」という語、日常ではよく使うが、短歌の用例はたった1首しかなかった。
「づらづら」はなかった。

納豆や不二家の歌がずらずらと朝日歌壇に載るを想像す
松木秀『RERA』


■【ニャン鍋賞】ベニテングタケ
2021年4月28日
本日の闇鍋全短歌データ 115062首
そのなかに「ベニテングタケ」を詠む歌が2首あった。
(少ないと言いたいのでなく、2首もあった、という感じ。)

地に立てる吹き出物なりにんげんはヒメベニテングタケのむくむく
渡辺松男『寒気氾濫』

ゆるやかに死ぬというのはベニテングタケになることですか そうだよ
吉川宏志『燕麦』

■【ニャン鍋賞】どれどれ
2021年4月28日
本日の闇鍋全短歌データ 115062首
「どれどれ」の用例は2首あった。

どれどれ春の支度にかかりませう紅【あか】い椿が咲いたぞなもし
北原白秋『桐の花』1913

どれどれおほとうでも打っていただこう むかしのままの桃が咲いてる
※「おほとう」に傍点
三枝昻之(出典調査中)

※「おほとう」は麺類の「ほうとう」の異称らしい。

■【ニャン鍋賞】サラブレッド

2021年4月7日
本日の闇鍋全短歌データ 114743首
そのなかに「サラブレッド」は2首あった。

サラブレッド種嘶きたかくふるはする大気の冷えのむらさきを感ず
葛原妙子『橙黄』1950

「サラブレッドに乗りませんか」とアナウンス流れる春の夕べのバスに
佐藤涼子『Midnight Sun』2016

■【ワン鍋賞】ぽきぽき 【ニャン鍋賞】ぽかぽか

2021年4月1日
本日の闇鍋データ総数160493歌句
うち短歌114741首

■そのなかに「ぽきぽき」という語を含む歌は以下の1首だけ。

待つことを拒むゆうぐれぽきぽきと鳴る関節のところで折れる
田中槐

俳句は2句発見

ぽきぽきと折れば野が哭く曼珠沙華  萩原麦草
彼岸花ぽきぽき折って亡夫恋  五島瑛巳

「ぽかぽか」という語を含む歌は以下の2首だけ。

指二本握っただけであたたかく
三本握ってもっとぽかぽか
 林あまり『スプーン』2002

南天の実にぽかぽかとピアノ音あたってゐるを誰も気付かず
冬野虹『冬野虹作品集成』2015

なお、「ぽかぽか」は俳句でもあまり使われないようで、
私のデータには1句だけ。
現代俳句協会のデータベースにはありませんでした。

ぽかぽかと海を見てゐるコートかな
大谷弘至『大旦(おほあした)』2010

ついでにカウント。

「ぽくぽく」5首
「ぽけぽけ」ナシ
「ぽこぽこ」4首
でした。

■【ニャン鍋賞】わんさか

2021年4月1日
本日の闇鍋データ総数160493歌句
うち短歌114741首
そのなかに「わんさか」という語を使った歌は2首だけでした。

梢たかくあけびの熟れ実下がりをりわんさかわんさわんさかわんさと
ルビ:梢(うれ)
萩岡良博「詩客」2012-11-23

ソラリスの海で犬かきする夜の母とか星がわんさか浮かぶ
柳本々々「詩客」2018-05-05

■【ニャン鍋賞】テレパシー

2021年4月1日
本日の闇鍋データ総数160493歌句
うち短歌114741首

そのなかに「テレパシー」という語を詠み込んだ短歌は2首あった。
ただ、片方は入力ミスが疑われるため、ここには1首だけアップします。

テレパシーで元カレ元々カレにキス こどもちゃれんじ四月は豪華
初谷むい『花は泡、そこにいたって会いたいよ』2018

■【ワン鍋賞】腹ごしらえ

2021年3月25日
闇鍋データ中、「腹ごしらえ」という語を使った短歌は、これ1首だけでした。

片付けの前の腹ごしらえとして空けるツナ缶 網戸から風
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

■【ナイ鍋】むさくるしい

2021年3月23日
「むさくるしい」を落ちいた歌は本日の闇鍋短歌113378首のなかに1首もなかった。

■【ナイ鍋】ずかずか


2021年3月4日
「ずかずか」を用いた歌は、本日の闇鍋短歌データ112、156首のなかに一首もなかった。

なお、俳句は次の3句があった。
  づかづかと来て踊子にささやける 高野素十
  春愁をづかづか歩く渚かな 鈴木真砂女
  昼顔をづかづか踏んで稽古海女 鈴木真砂女

■【ワン鍋賞】あれよあれよ

2021年3月2日
いつの間にか覚えた技をかけてみてあれよあれよとさびしくなった
東直子「さがな。」2005・4

■【ワン鍋賞】あべこべ

2021年3月1日
あべこべな気持ちのままで応えるね  途中下車したバス停みたいだ
横井紀世江(出典捜索中)

■【ニャン鍋賞】 一のわれ、ニのわれ……

2021年2月27日

「一のわれ二のわれ」と、二種類の「われ」を詠む歌や句がまれにある。
闇鍋に2首ある。

一の吾君を得たりとこをどりす二のわれさめて沈みはてたる
前田夕暮『収穫』1910

一のわれ二のわれがいて物欲しげなるあり方を二が批判する
小高賢『秋の茱萸坂』 2014

★そして発展型?

一のわれ欲情しつつ山を行く百のわれ千のわれを従え
渡辺松男『寒気氾濫』1997

一のわれ死ぬとき万のわれが死に大むかしからああうろこ雲
渡辺松男『泡宇宙の蛙』1999

俳句も探してみた。

炎天をゆく一のわれまた二のわれ  阿部青鞋『ひとるたま』1983(俳句)

こちらもやや関係あり?
木枯吹く一億分の一の我  鈴木伸一 「吟遊」第17号(俳句)

いかがです? 何か作ってみたくなりませんか?


■【ワン鍋賞】すばしこい・のろい


2021年2月19日

すばしこい野生の虎を見たことがない野生のヒトも見たことがない
山下一路『スーパーアメフラシ』2017

「すばしこい」(すばしっこい含む)という語を使った短歌は、活用形も含めて探したが、本日の闇鍋短歌111,722首のなか、これ1首だけだった。

なお「すばやい」(素速、素早も)は、活用形も含めて、20首に使われていた。

ついでに「のろい」※も活用形を含めて探してみたところ、1首しかなかった。

ひとりまたひとり行方をくらましてのろいマーチのような終電
木村友 2017・11東京文フリフリーペーパーより
   (第63回角川短歌賞予選通過作「オフライン」)

※「鈍い」は「のろい」と読めるが、「にぶい」と読むのが普通なので除外した。
※「のろのろ」は5首あった。
※「遅い」はいくらでもある。

■【ナイ鍋】しょぼ

2021年2月18日
(本日の近現代短歌収録数111,461首)

「しょぼ」という文字列を含む短歌が見当たらなかった。
目がしょぼしょぼする、しょぼい企画、など、日常ではよく使う語だと思うが、なぜか11万首余りある短歌のなかにひとつもなかった。
みんな、詠めば~。

なお、俳句では1句発見。

稲妻や恋人がしょぼくれている
田島健一『素朴な笛』(電子書籍)

(本日の俳句収録数 31,617句
 俳句は収録数が少なく、しかもいま整理中でだいぶ古典が混入している状態だから、統計的な信頼性は低い。)

2024・8・7追記
「しょぼ」は現在2首ある。

しょぼくれんじゃねえ勝利の女神いやさ貧乏神がほほえまねえそれだけのことで
依田仁美『異端陣』2005

この店のウエットティッシュしょぼくなるこうして日本しょぼくなりゆく
大松達知『ばんじろう』2024

 ■【ワン鍋賞】ワクチン・予防接種

2021年2月17日 
(本日の近現代短歌収録数111,461首)

本日、日本で新型コロナワクチンの接種が始まった。

これから増えそうだが、今まで「ワクチン」という語は滅多に短歌に詠まれなかった。データベース「闇鍋」には1首だけあった。


ワクチンがないと言はれて帰る朝乾き始める打ち水の跡
新井蜜『月を見てはいけない』2014


「予防接種」という語を詠んだ歌も1首しかなかった。


BCG予防接種の凸凹の肩を照らしに月光がくる
穂村弘『水中翼船炎上中』2018


なお、「予防注射」という語を含む歌はひとつもなかった。



2021年3月18日木曜日

ミニ38 柔道・空手

 柔道・空手を詠む歌を探してみた。


本日の闇鍋短歌112,901首の中に12首あった。

その中から8首ピックアップ。


去年から置きっぱなしの柔道着 その持ち主も今日卒業す
千葉聡『飛び跳ねる教室』2010

そのむかし空手をやっていた人に正拳突きを見せられている
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013

柔道三段望月兵衛明眸にして皓歯一枚を欠きたり
ルビ:望月兵衛(もちづきひやうゑ)/皓歯(かうし)
塚本邦雄『歌人』1982

たくさんの眼がみつめいる空間を静かにうごく柔道着の群れ
小島なお『乱反射』2007

少年は何も信じぬ骨肉が相打つ極真空手のほかは
八木博信『ザビエル忌』2018

柔道の受け身練習目を閉じて音だけ聞いていたら海です
小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』2019

虹色の帯を結んだ空手家が『はみだしっ子』を読んで号泣
平川哲生(出典調査中)

柔道部・バレーボール部・卓球部・ハンドボール部・吹奏楽部
(偶然短歌:ウィキペディア日本語版の文章の中から切り出されたもの)


「空手」「柔道」は、歌の題材としては新しいようだ。

上記のように、短歌では少ないがらぽつぽつ詠まれている。


ところで、俳句ではろくろく詠まれていないみたいだ。

私のデータにはなかった。

ネットで探したら、ないわけではなかった。

(でも、一つ読んだら百読んだ気がする類の、従ってカウントする気になれないものばっかりだった。いいのがあったら知らせてほしい。)


もっと驚いたのは、川柳でも、「空手」「柔道」はほとんど詠まれていないらしいことだ。

私の川柳コレクションは、新聞等やサラ川のようなのはほとんどなく、「現代川柳」と呼ばれているものなので、偏りがあるのだろうか。

だとしても、「空手」「柔道」が少ないのは意外である。


こういうのって、詠まず嫌いとか以前に、ただ単に詩心が見落としているだけで、そのことを全く意識することもない、という、そういう段階なんだろうなあ。


いいと思う句を見つけたら、あとから追加します。

2021年2月17日水曜日

レア鍋賞 2020年

2020年は出版でいそがしく、レア鍋を少ししか探しませんでした。


■すっぽかす

2020年9月20日

「すっぽかす」という語を含んだ歌は以下の1首しかなかった。


あと戻りできないフロアまで行ってそれでもすっぽかしたことがある
虫武一俊『羽虫群』


■金太郎飴

2020年3月26日

「金太郎飴」という語を含んだ短歌は以下2首しかなかった。


ぼたん園に巡査が四人自転車をひいてゆくなり金太郎飴
こずえユノ「かばん新人特集号」2010・12


金太郎飴の断面ひしゃげてる断ち切って断ち切って過去たち
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』


これ以前のレア鍋はこちらを御覧ください。

ワン鍋・ニャン鍋・レア鍋賞とは?

ワン鍋・ニャン鍋・レア鍋とは?

  データベース闇鍋を使って短歌などを検索していると、「え、こんなフツーの言葉があんまり短歌に使われていない?」と驚くことがあります。

そこで、用例が一首しかない場合を「ワン鍋賞」、二首しかない場合を「ニャン鍋賞」として讃えることにしました。

また、用例が3首以上でも、普通はよく使う語なのに、そのわりには歌にはあまり詠まれていない、という場合も、「レア鍋賞」として、ここにご紹介することにします。

ナイ鍋(または空鍋)も

ついでに、一般に使う語なのに短歌にまだ使われていないような単語をみつけたら書き留めておきます。


短歌はまだ幼くてカタコト

  短歌という定型詩は、一三〇〇年以上の伝統を背負う円熟した詩型だと思われがちですが、実は短歌はまだ幼く、日本語を使いこなせていない。実はカタコト状態なのです。  

  日本語の言語活動の現場を見渡すと、短歌はほんの一角を占めているだけであり、そこで使える語彙がかたよっているし、単語レベルで見ても、ある単語に意味がいくつもある場合に、短歌に用いられているのはその一部だけ、というふうに偏っていることが少なくないのです。

   短歌は、古典時代から少しずつ、ほんとに少しずつ、使える言葉や意味を増やしてきていていますが、まだまだ「完成された詩型」ではないのです。

安易に敬っちゃダメ! 

 それなのに、短歌という詩型は、完成されたものとして敬われてしまう面があります。

 江戸時代には「歌道」として敬われ、当時の新ジャンル、俳諧や川柳の基礎的教養と位置づけられました。(ゆえに過去を踏襲することが重視され短歌は何百年も停滞した、と学校で習った。)

 今でも、短歌に冠する言説において、伝統など、あたかも短歌には堂々とふりかぶる権威があるかのような言い回しを見かけますが、過去の成果がどんなにたくさんあったって、まだまだ足りない。過去を地固めしつつ、あくまで謙虚に、新しいことを取り入れることが大事であると思います。