2021年4月7日水曜日

レア鍋日記 2021年

レア鍋日記とは

■【ニャン鍋賞スペシャル】眼を縫う

2021年12月21日

「眼を縫う」なんてレアで当たり前ですが、複数あること、しかも現代の短歌じゃなくて、古典俳句といっしょだなんて、と驚いてしまいました。
作品どうしも顔を見合わせていそう。

ともだちに子どもができた「おめでとう」クマの目を縫うようにさみしい
兵庫ユカ『七月の心臓』2006

花さくや目を縫はれたる鳥の鳴く
小林一茶
追記:「眼を縫われた鳥」について。食用に飼う鳥を太らせるため目を潰して床下に飼うことがあったそうだ。

■【ワン鍋賞】ぴったりという意味の「ぴちぴち」

2021年11月8日
本日の闇鍋短歌総数118,069首

「ぴちぴち跳ねる」ほうの「ぴちぴち」はまあまあありましたが、ぴったりきつい感じを表す(かなと思われる)のはこの1首しかありませんでした。

ぴちぴちの皮膚にぴちぴち水はねて皮膚と皮膚とはひったりと寄る
東直子(出典調査中)

■【ワン→ニャン鍋賞】~になろうとも

2021年9月9日
本日の闇鍋短歌総数 117,526首

「になろうとも」って、「あんまりないだろうけど、でもあったらいいな」
というそそられ感があって検索。
あった!1首だけ。えらいぞ!

缶詰はこわい 煮付けになろうともひたむきに群れつづけるイワシ
工藤玲音『水中で口笛』

★追記
念の為ネットで探してみたらもう1首発見。ニャン鍋賞になりました。

野茂がもし世界のNOMOになろうとも君や私の手柄ではない
枡野浩一(作者アカウントのTweetより)

■【ニャン鍋賞】サスペンダー

2021年9月2日
サスペンダー。ぴくっと詩的な〝引き〟を感じます。

本日の闇鍋短歌データ117159首
うち「サスペンダー」を含むのは以下2首。

それなりに地に着く暮し 掛け渡すサスペンダーの赤ふとぶとと
岡井隆『ヴォツエック/海と陸』 

ずり落ちたサスペンダーを戻すとき寿命が二秒生えてきたこと
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』

■【レア鍋賞】仲間はずれ

2021年9月2日
冬の雨真夏の嵐 戦争はどれにも似てないなかまはずれ
植松大雄『鳥のない鳥籠』2000

連なれる五本の指の一本は仲間はずれのようである
山崎方代(出典調査中)

四歳児四人おんなじポーズにて仲間外れを蹴るガオレンジャー
塩谷風月「かばん」2001・12

俳句では1句発見。
「闇鍋」の俳句データがまだ少ないので、1句しかないのかもしれません。

うすいくちびる仲間はずれの鳥がいて 穴井太

■【ナイ鍋】

2021年7月19日
「どぎまぎ」という語を使った短歌がみあたりませんでした。
日常でも使わなくなったか?

短歌に詠まれることなく死語になっちゃう単語もあるようです。

本日の闇鍋総数162350
うち短歌115733

なお俳句にも川柳にも見当たらないので、
現代俳句協会DBもあたってみましたがナシ。
川柳「おかじょうき」のDBに1句だけ発見。

動物園猿に見られてどぎまぎだ 中道文子
「月刊おかじょうき」2008年7月

■【レア鍋賞】 補正

こういう単語はどうかなあと思って検索。
161706歌句のうち短歌3首ありました。(俳句川柳なし)

光暈のまなこにしばし失ふも光補正に姉あらはるる
和里田幸男(出典調査中)

完全に崩れちゃったらもう無駄だ補正下着と補正予算は
松木秀『RERA』

脳内で補正する愛 今ひとつ身の入らない交わりのあと
柴田瞳(出典調査中)

■【ニャン鍋賞】赤血球と白血球

2021年5月23日
本日の闇鍋全データ171696歌句
赤血球と白血球ともに2首ずつでした。

蕗むきつつおもふべきことならざれど馬の赤血球七百万
塚本邦雄(出典調査中)

なんとなく赤血球のかたちして電子レンジのお皿が回る
松木秀『親切な郷愁』2013

白血球4600 田中から先の尖った武器を授かり
ナイス害「なんたる星」2017.8

「白血球超異常値」と言うときの医者の華やぎ否われの……昏
江田浩司(出典調査中)

この他に俳句1句を見つけました。
たんぽぽの絮に白血球騒ぐ
加藤光樹(出典調査中)

■【ナイ鍋】まんじり

2021年5月16日
本日の闇鍋全データ161641歌句のなかに、
「まんじり」を使ったものはひとつもなかった。

■【ニャン鍋賞】パンパカパン

2021年5月6日 本日の闇鍋 短歌データ115221首。
パンパカパンなんて少ないだろうと思ったら、なんと2首もありました。
また、俳句も、「パンパカパ」を1句発見。

死ののちもこの家族なり春彼岸ぱんぱかぱーんと弁当ひらく
小島ゆかり『憂春』2005

パンパカパンは何が開いているんだろう、パカのときに。 朝ちょっとだけ泣く
橋爪志保「京大短歌」22号

俳句
本日の闇鍋 俳句データは32347句。

貧貪と鳴らし半馬鹿派で行こう
ルビ:貧貪【ヒンドン】 半馬鹿派【パンパカパ】
大沼正明『異執』

■【ニャン鍋賞 ふくわらい】

2021年5月1日 本日の闇鍋全短歌データ115083首
そう多く詠まれているとは思わなかったが、やっぱり、2首しかなかった。

福笑いのからだ今ごろ痛んでるのではないかな さくらは生きて
杉山モナミ「かばん」2016・4

福笑い君が笑った円盤の大きな銀に乗りにけるかも
三好のぶ子「かばん」1998・1


■【ワン鍋賞】ずらずら

2021年4月28日 本日の闇鍋全短歌データ 115062首
「ずらずら」という語、日常ではよく使うが、短歌の用例はたった1首しかなかった。
「づらづら」はなかった。

納豆や不二家の歌がずらずらと朝日歌壇に載るを想像す
松木秀『RERA』


■【ニャン鍋賞】ベニテングタケ
2021年4月28日
本日の闇鍋全短歌データ 115062首
そのなかに「ベニテングタケ」を詠む歌が2首あった。
(少ないと言いたいのでなく、2首もあった、という感じ。)

地に立てる吹き出物なりにんげんはヒメベニテングタケのむくむく
渡辺松男『寒気氾濫』

ゆるやかに死ぬというのはベニテングタケになることですか そうだよ
吉川宏志『燕麦』

■【ニャン鍋賞】どれどれ
2021年4月28日
本日の闇鍋全短歌データ 115062首
「どれどれ」の用例は2首あった。

どれどれ春の支度にかかりませう紅【あか】い椿が咲いたぞなもし
北原白秋『桐の花』1913

どれどれおほとうでも打っていただこう むかしのままの桃が咲いてる
※「おほとう」に傍点
三枝昻之(出典調査中)

「おほとう」は麺類の「ほうとう」の異称らしい。

■【ニャン鍋賞】サラブレッド

2021年4月7日
本日の闇鍋全短歌データ 114743首
そのなかに「サラブレッド」は2首あった。

サラブレッド種嘶きたかくふるはする大気の冷えのむらさきを感ず
葛原妙子『橙黄』1950

「サラブレッドに乗りませんか」とアナウンス流れる春の夕べのバスに
佐藤涼子『Midnight Sun』2016

■【ワン鍋賞】ぽきぽき 【ニャン鍋賞】ぽかぽか

2021年4月1日
本日の闇鍋データ総数160493歌句
うち短歌114741首

■そのなかに「ぽきぽき」という語を含む歌は以下の1首だけ。

待つことを拒むゆうぐれぽきぽきと鳴る関節のところで折れる
田中槐

俳句は2句発見

ぽきぽきと折れば野が哭く曼珠沙華  萩原麦草
彼岸花ぽきぽき折って亡夫恋  五島瑛巳

「ぽかぽか」という語を含む歌は以下の2首だけ。

指二本握っただけであたたかく
三本握ってもっとぽかぽか
 林あまり『スプーン』2002

南天の実にぽかぽかとピアノ音あたってゐるを誰も気付かず
冬野虹『冬野虹作品集成』2015

なお、「ぽかぽか」は俳句でもあまり使われないようで、
私のデータには1句だけ。
現代俳句協会のデータベースにはありませんでした。

ぽかぽかと海を見てゐるコートかな
大谷弘至『大旦(おほあした)』2010

ついでにカウント。

「ぽくぽく」5首
「ぽけぽけ」ナシ
「ぽこぽこ」4首
でした。

■【ニャン鍋賞】わんさか

2021年4月1日
本日の闇鍋データ総数160493歌句
うち短歌114741首
そのなかに「わんさか」という語を使った歌は2首だけでした。

梢たかくあけびの熟れ実下がりをりわんさかわんさわんさかわんさと
ルビ:梢(うれ)
萩岡良博「詩客」2012-11-23

ソラリスの海で犬かきする夜の母とか星がわんさか浮かぶ
柳本々々「詩客」2018-05-05

■【ニャン鍋賞】テレパシー

2021年4月1日
本日の闇鍋データ総数160493歌句
うち短歌114741首

そのなかに「テレパシー」という語を詠み込んだ短歌は2首あった。
ただ、片方は入力ミスが疑われるため、ここには1首だけアップします。

テレパシーで元カレ元々カレにキス こどもちゃれんじ四月は豪華
初谷むい『花は泡、そこにいたって会いたいよ』2018

■【ワン鍋賞】腹ごしらえ

2021年3月25日
闇鍋データ中、「腹ごしらえ」という語を使った短歌は、これ1首だけでした。

片付けの前の腹ごしらえとして空けるツナ缶 網戸から風
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

■【ナイ鍋】むさくるしい

2021年3月23日
「むさくるしい」を落ちいた歌は本日の闇鍋短歌113378首のなかに1首もなかった。

■【ナイ鍋】ずかずか


2021年3月4日
「ずかずか」を用いた歌は、本日の闇鍋短歌データ112、156首のなかに一首もなかった。

なお、俳句は次の3句があった。
  づかづかと来て踊子にささやける 高野素十
  春愁をづかづか歩く渚かな 鈴木真砂女
  昼顔をづかづか踏んで稽古海女 鈴木真砂女

■【ワン鍋賞】あれよあれよ

2021年3月2日
いつの間にか覚えた技をかけてみてあれよあれよとさびしくなった
東直子「さがな。」2005・4

■【ワン鍋賞】あべこべ

2021年3月1日
あべこべな気持ちのままで応えるね  途中下車したバス停みたいだ
横井紀世江(出典捜索中)

■【ニャン鍋賞】 一のわれ、ニのわれ……

2021年2月27日

「一のわれ二のわれ」と、二種類の「われ」を詠む歌や句がまれにある。
闇鍋に2首ある。

一の吾君を得たりとこをどりす二のわれさめて沈みはてたる
前田夕暮『収穫』1910

一のわれ二のわれがいて物欲しげなるあり方を二が批判する
小高賢『秋の茱萸坂』 2014

★そして発展型?

一のわれ欲情しつつ山を行く百のわれ千のわれを従え
渡辺松男『寒気氾濫』1997

一のわれ死ぬとき万のわれが死に大むかしからああうろこ雲
渡辺松男『泡宇宙の蛙』1999

俳句も探してみた。

炎天をゆく一のわれまた二のわれ  阿部青鞋『ひとるたま』1983(俳句)

こちらもやや関係あり?
木枯吹く一億分の一の我  鈴木伸一 「吟遊」第17号(俳句)

いかがです? 何か作ってみたくなりませんか?


■【ワン鍋賞】すばしこい・のろい


2021年2月19日

すばしこい野生の虎を見たことがない野生のヒトも見たことがない
山下一路『スーパーアメフラシ』2017

「すばしこい」(すばしっこい含む)という語を使った短歌は、活用形も含めて探したが、本日の闇鍋短歌111,722首のなか、これ1首だけだった。

なお「すばやい」(素速、素早も)は、活用形も含めて、20首に使われていた。

ついでに「のろい」も活用形を含めて探してみたところ、1首しかなかった。

ひとりまたひとり行方をくらましてのろいマーチのような終電
木村友 2017・11東京文フリフリーペーパーより
   (第63回角川短歌賞予選通過作「オフライン」)

※「鈍い」は「のろい」と読めるが、「にぶい」と読むのが普通なので除外した。
※「のろのろ」は5首あった。
※「遅い」はいくらでもある。

■【ナイ鍋】しょぼ

2021年2月18日
(本日の近現代短歌収録数111,461首)

「しょぼ」という文字列を含む短歌が見当たらなかった。
目がしょぼしょぼする、しょぼい企画、など、日常ではよく使う語だと思うが、なぜか11万首余りある短歌のなかにひとつもなかった。
みんな、詠めば~。

なお、俳句では1句発見。

稲妻や恋人がしょぼくれている
田島健一『素朴な笛』(電子書籍)

(本日の俳句収録数 31,617句
 俳句は収録数が少なく、しかもいま整理中でだいぶ古典が混入している状態だから、統計的な信頼性は低い。)

 ■【ワン鍋賞】ワクチン・予防接種

2021年2月17日 
(本日の近現代短歌収録数111,461首)

本日、日本で新型コロナワクチンの接種が始まった。

これから増えそうだが、今まで「ワクチン」という語は滅多に短歌に詠まれなかった。データベース「闇鍋」には1首だけあった。


ワクチンがないと言はれて帰る朝乾き始める打ち水の跡
新井蜜『月を見てはいけない』2014


「予防接種」という語を詠んだ歌も1首しかなかった。


BCG予防接種の凸凹の肩を照らしに月光がくる
穂村弘『水中翼船炎上中』2018


なお、「予防注射」という語を含む歌はひとつもなかった。



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