AとBの対比みたいな関係を詠む歌がたまにあるので、ピックアップしました。
AとB
臨月のママにさよなら 靴を脱ぎ天使A組天使B組
東直子『春原さんのリコーダー』1996
東直子『春原さんのリコーダー』1996
国境を越えゆく鳥にあこがれて旅発ちしA旅発てぬB
藤原龍一郎 『19××』1997
牛AのカルビがBに重なりて運ばれてくる清潔な皿
魚村晋太郎 『銀耳』2004
死をかうくわんしあふシリウスAとBこんどの死にはBなるさくら
渡辺松男『雨(ふ)る』2016
A・B二艘の船があります別れた理由を時速で書きなさい
山下一路『スーパーアメフラシ』2017
つめたい橋の上のA点うつぶせのあなたのB点まじわる時点
東直子「かばん」200404
Aだねと言われてBへ歩みだすオレの進路は危ういだろう
工藤吉生 作者ブログより 毎日新聞「毎日歌壇」採用作
あやしいと思えばあやしくせつないと思えばせつないかげのA、B、
工藤吉生 作者ブログより 「ドラゴンクエスト3短歌」から
A級が七人 BC級五十二人 射殺一人の 計六十人
黒瀬珂瀾『空庭』2009
流通は一つ大河かA書店に無い文庫本、B書店にも無い
高野公彦『水苑』2000
A3をどうにか折ってB4にするかのような別れ話だ
ナイス害『フラッシュバックに勝つる』2017
AとBとC
Cが出てくるのもありました。
海底はお花畑で AはBを食ひCはAを食ひDはCを食ふ
王紅花『夏の終りの』2008
王紅花『夏の終りの』2008
通行人A、B、Cを跳ね飛ばし甲、乙、丙に捕まったひと
松木秀『親切な郷愁』2013
A棟、B棟、日暮れてC棟碁会所のあけつぱなしの窓、小窓、窓
光森裕樹『鈴を産むひばり』2010
青空のくびから上は宝石うんうん朝食にみえるa,b,c,a,b,c,
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012
蝶Aと蝶Bもつれあふやうに飛んでここにはゐない蝶C
石川美南(出典調査中)
石川美南(出典調査中)
うれしい、自分も詠んでました。
A遠をたぐって君が生きるなら僕はB遠を解いて還る
題詠「お互い様」
高柳蕗子「かばん」201701
題詠「お互い様」
高柳蕗子「かばん」201701
ところで、私の手持ちデータの俳句には例がみつからなかった。
川柳には以下2句があった。
BさんとダンスはするがAが好き
勝部操子(出典調査中)
勝部操子(出典調査中)
下駄箱に死因AとBがある
飯田良祐『実朝の首』
関連して、「1の我、2の我」という言い方があります。自分ABという感じです。
お時間がありましたらご覧ください。
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