◯「一のわれ」と「二のわれ」という二種類の「われ」を詠む歌がある。
私の知っている中でもっとも古いのはこれ。
一の吾君を得たりとこをどりす二のわれさめて沈みはてたる
前田夕暮『収穫』1910
◯そしてぽつぽつ。
炎天をゆく一のわれまた二のわれ
阿部青鞋『ひとるたま』1983(俳句)
一のわれ二のわれがいて物欲しげなるあり方を二が批判する
小高賢『秋の茱萸坂』 2014
◯そして発展型?
一のわれ欲情しつつ山を行く百のわれ千のわれを従え
渡辺松男『寒気氾濫』1997
一のわれ死ぬとき万のわれが死に大むかしからああうろこ雲
渡辺松男『泡宇宙の蛙』1999
木枯吹く一億分の一の我
鈴木伸一 「吟遊」第17号
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