2020年2月19日水曜日

ミニ12  ◯◯とわかる

「◯◯とわかる(分かる・解る・判る)」という文字列を含む短歌等をさがしてみました。
けっこう多いので今日の気分で抽出しました。

■お気に入り二首

のぎへんのノの字をひだりから書いてそれでも秋のことだとわかる
山階基  『穀物』創刊号

はつきりとわかる河内へ帰るとき生駒トンネル下り坂なり
勺禰子 『月に射されたからだのままで』

■いろいろな「◯◯とわかる」

靴ひとつ履きつぶすまで履くんだとわかる夜明けのあとのあかるさ
山階基「早稲田短歌」44

夢に出る父はこの頃大きくてうしろ姿でもう父とわかる
岡崎裕美子『わたくしが樹木であれば』

病窓に下界を見れば辛うじて犬だとわかるかたちのゆらぎ
廣西昌也『神倉』2012

飴色に蛹はかわる まっしぐらに忘れる途中とわかる 見とれる
やすたけまり『ミドリツキノワ』

感覚はいつも静かだ柿むけば初めてそれが怒りと分かる
服部真里子『行け広野へと』2014

茄子にぎる手の映りこむ一枚は朝だとわかる すごくありがとう
千種創一『砂丘律』2015

きみの指にしびれた腕を奏でられ目覚める場所がここだと解る 
荻原裕幸『新星十人』

暗がりにみづは見えねどほうたるのひかりが揺らぎ水面とわかる
白石瑞紀『みづのゆくへと緩慢な火』

手応えでだめだとわかるクローゼットの扉のレールのわずかな歪み
兵庫ユカ『七月の心臓』

■2021年4月29日短歌追加

白黒写真で色えんぴつを撮つてみる赤はなぜだか赤だとわかる
ルビ:白黒写真【モノクロ】
秋月祐一『この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく』2020

だいぶ褪せて陶犬とわかるのがかれこれ二ふんこちらむいてゐる
平井弘『遣らず』2021


【俳句】
鈴蘭とわかる蕾に育ちたる
稲畑汀子

白梅とわかるとほさでひきかへす
豊田都峰

うすらひのふれあふおととわかるまで
正木ゆう子

遠くから貴女とわかる白いブラウス
住宅顕信

■2021年4月29日追加

眼がひらき顔だとわかる雨月かな
田島健一『ただならぬぽ』2017

【川柳】
粉末になっても正座だとわかる
柳本々々

モザイクがかかって手錠だとわかる
松木秀

輪郭をなぞればジェラシーと分かる
丸山進

ごくたまに兵士と判る人がいる
南野耕平

雪だるまだったと分かる手術台
重森恒雄

耳がつめたいのでひとりだとわかる
峯裕見子

肉を焼く匂いでないとわかるはず
樋口由紀子

どろどろになってもどろどろだとわかる
石田柊馬

■2021年4月29日川柳追加

二年後に間違い電話だとわかる
菊池良雄

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