2024年6月4日火曜日

ちょびコレ25 レジ袋

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)

レジ袋


短歌的には、「レジ袋」という5音の呼び名が使いやすいように思うが、他に「買い物袋」「スーパーの袋」といった表現も採用されている。

最初にいちばんのお気に入り1首

この星に投身をする少女のように海底へ降りてゆくレジ袋
山下一路 「かばん」2020.3(題詠「塵も積もれば」)

私のデータベースの短歌中、もっとも美しく悲しく詠まれたレジ袋である。
また、こういう捉え方で詠んだ歌は、今のところこの歌だけ。
この歌は、「かばん」恒例の新春題詠イベントで、「塵も積もれば」という題に対して詠まれたもので、そこも鑑賞ポイントにプラスアルファしたい。
(イベントでは54首出詠された中で1位の得票だった。)


●レジ袋を下げてあるく

レジ袋を詠む歌の中で比較的多い取り上げ方は、レジ袋を下げて歩くシチュエーションで、さまざまな心情的な機微を描き出す、というもの。

大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋
俵万智 『サラダ記念日』

感情の作り置きってできないと言いあいながら持つレジ袋
小野田光 『蝶は地下鉄をぬけて』

レジ袋右手から左手にもちかえる木幡神社の大楠の手前
谷口純子 『ねずみ糯』2015

3首目。神社の大樹の前で、レジ袋の持ち手を変える。
ひとりでに遠く引いた視点からの絵になる。
なんだか記述以上のことを感じる。
小さな人間が、スーパの袋(おそらく食料が入っている)を下げて歩いている。
その手が疲れたか痛くなったか、ちょっと持ち替えて(小さな問題を解決)また歩き出す。
神の前で、普通でまっとうな、日々の命のふるまい、っていう感じだからかなあ?

●レジ袋が他のものに見える

兎ひとつ座れる形にレジ袋ベンチにありて夕暮れてゆく
小潟水脈 『時時淡譚』

枯れ枝にはためく白い木蓮はずっと前からレジ袋だった
千種創一 『砂丘律』2015

これはあるなあ。
風に飛ばされていく姿は、いろんな生き物に見える。

●その他の捉え方

風に舞うレジ袋たちこの先を僕は上手に生きられますか
法橋ひらく 『それはとても速くて永い』2015

レジ袋いりませんってつぶやいて今日の役目を終えた声帯
木下龍也 『つむじ風、ここにあります』2013

●レジ袋は2020年7月1日有料化された。
 そのことを詠む歌もあったが、いまのところ読んでそのままの世間話という感じ。



2024年6月4日


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