2020年4月26日日曜日

ミニ23 マスクのイメージ(たぶん過去になる)


マスクは新型コロナウイルス(COVID コビット-19)のパンデミックで存在感を高めました。

コロナ以後の歌はこれから詠まれるわけで、将来比較しやすいように、今までに詠まれたマスクのを集めておきます。

東北震災の歌を散見します。
以前なら衝撃的光景だったものが、もはや全国的な日常風景になってしまった、
という変化を感じます。



中にこういう歌があった!予言みたい。

むかしむかし優しいガーゼ くりかへし洗ひしマスク持たされてゐき
目黒哲朗「詩客」2013-06-14


■ピックアップ

・感染防止用のマスクだけでなく、「面」という意味のマスクも混入しています。


あたたかいマスクの中で吸って吐くかぎり誰にも感染しない
木村友 第63回角川短歌賞予選通過作「オフライン」

鳥去にてなにの音なき林道白きマスクの女が来る
ルビ:去(い) 林道(はやしみち) 来(きた)
尾上柴舟

豚舎にむら雲おほふニンゲンはさらに鬼めき白マスクする
こずえユノ「かばん」新人特集号2010年12月

口の中にゴキブリが入ってこないようにマスクをして眠ります
穂村弘『ラインマーカーズ』

ものいへばいのちふるふる国にしてマスクの下にせく言の葉は
佐藤元紀

青春はまこときずつきやすくあれ ガーゼマスクの唇かわけるを
村木道彦

持つものは失はぬこと良しといふ大きなマスクの歯科医壮年
百々登美子『風鐸』

脱ぎました銀行強盗用マスクいくらなんでもペンギンは嫌
しんくわ『しんくわ』

面展百のマスクのならぶときあらはれたりし二百の虚空
米川千嘉子『一葉の井戸』

デンジマスク作り終えたる青年のハンダゴテ永遠に余熱を持てり
ルビ:永遠(とわ)
笹公人『抒情の奇妙な冒険』

おそろいのガーゼマスクでデートする恋人たちの感染列島
柴田瞳

避難民となりてさまよふ仙台駅東口みなマスクしてをり
大口玲子

眉毛だけ描いておほきなマスクかけ余震のつづく街へいでゆく
小林幸子『水上の往還』

白濁のマスクのしたにひりひりと湿る鼻先 急行がくる
堀合昇平『提案前夜』2013

マスクしてみな梟のやうに黙つて 前代未聞もつぎつぎ忘る
米川千嘉子『吹雪の水族館』

マスクして顔半分を覆つてなほ人間として歩まむとせり
目黒哲朗『VSOP』

マスクになぞらえる腹部にたくさん星の刺さった両手
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016

笑い声まだ響いてる ミル・マスカラスの覆面が剥された夜
ルビ:覆面【マスク】
穂村弘『ドライ ドライ アイス』1992

青春の太田雄貴だマスクしてスイッチ・オンを待つ扇風機
吉岡生夫 「詩客」2012-08-31

ナウシカのようなマスクね、そうだねとほほえみあって早める歩み
天野慶 「詩客」2012-11-09

紙マスクの紐にゆがめる耳たぶの横顔見えてひとは眠りぬ
大辻隆弘 「詩客」2013-01-04

マスクのうへ眼鏡くもつて見えないがわたしのところお帰りなさい
目黒哲朗「詩客」2013-06-14

一日中口づけていた 使い捨てマスクの裏に薄き口紅
前田康子『窓の匂い』

雪深き夜の電話に郡山過ぎるときマスクして眼を閉じよと言われき
田中濯

ごみ箱のなかでマスクが似たような折れかたをして重なっている
谷川電話『恋人不死身説』

顔面を覆ふマスクにおおはれて朝のホームに竝ぶ無名者
ルビ:竝(なら)
小池光『時のめぐりに』

こぼれゆく 君の非侵襲的陽圧換気のマスクから空気漏れ 時の砂
ルビ:非侵襲的陽圧換気(NPPV)
吉岡太朗『世界樹の素描』2019

みんなまけみんなまけぺらぺらのマスクに顔を包んであゆむ
加藤治郎『しんきろう』2012



ま、こんなところです。

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