2022年1月10日月曜日

青014 コップ越しに青澄む世界亡き母の入れ歯洗浄剤を落とせば 大野道夫

生きる意欲から解放する!


コップ越しに青澄む世界亡き母の入れ歯洗浄剤を落とせば
 大野道夫 『秋意』2015年

〈青〉のイメージの裾野は広いが、そのなかのかなりベーシックなイメージとして〔鎮静〕というのがあると思う。この「青澄む世界」の〈青〉はそこに分類できそうだ。「亡き母」に安らぎを与えてくれる。

「入れ歯」は生きる意欲を具現化したものだ。
(食事という生命維持の基本を維持するために身体の老化に抵抗するから。)

一方、死は、命のあらゆる重荷をおろすことである。
この洗浄剤の〈青〉は、入れ歯から生きる意欲を洗浄して、生きるという重荷から解放している。


これが〈父〉だったら、癒やされ方の印象が違ってくるのかどうか。

あまり違わないような気もするけれど、〈青〉は短歌のなかでなんとなく「父系」のイメージカラーである。(誰も申し合わせていないが結果としてそうなっている。)
そのため、これはもし〈父〉だったら、〈父〉という役目からの解放だけでなく、〈父〉として純化されるイメージもかすかに交じる気がする。




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