2022年1月9日日曜日

青016  赤青の蛇口をまわし冬の夜の湯をつくりおり古きホテルに 吉川宏志

「赤」「青」は対極のような位置づけで用いられることもあるが、両方あることで「完全」を表す場合もある。

 この歌には、その特性がうまく生かされていると思う。

 赤青の蛇口をまわし冬の夜の湯をつくりおり古きホテルに
吉川宏志 『石蓮花』

「赤青の蛇口をまわし」てちょうどよい温かさの「湯をつく」る。

 そんなちょっとした場面描写なのに、その事実以上の何かが添っているようだ。

 赤と青を混ぜるということ、根源的なものを混ぜ合わせてほどよい環境を手作りするということ、それははるか〝あめつちのはじまり〟に通じそうな感じだ。

〈赤・青〉のセットの〔対極〕+〔完全〕に加えて、「つくる」という語を用いたこともあり、歌のなかの人物は意識していないだろうが、かすかな神様気分のここちよい湯気が漂っている。


赤と青の歌についてはこちらもごらんください

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