何かが父母に似ている、あるいは、父母が何かに似ている、ということを詠む歌を集めてみました。
抽出日2022年1月1日
データ総数165,848歌句 うち短歌119,033首
うち父母と似るものを詠む歌 75首
■そういうものと似てますか!
親子が似るのは当然ですが、まずは、父母が珍しいものと似ている歌をピックアップ。
神仏・人形
田に遊び野草に遊ぶ神の背が父に似ている やがてさみだれ
永井陽子『なよたけ拾遺』
永井陽子『なよたけ拾遺』
かがまりて向かえばかなし父に似るつめたき仏のまなじりぬぐう
玉井清弘 『麹塵』
玉井清弘 『麹塵』
雛は母似こそなつかしき春ごとにわれは老い若き母はほほゑむ
馬場あき子『あさげゆふげ』
鳥獣植物・自然
ドードーに似ていた父の足の指ほろびたものに貸せ風の喉
井辻朱美『水晶散歩』
井辻朱美『水晶散歩』
朝靄の中でぼーつと立つてゐた父だよ アスパラガスに似てゐた
時田則雄『エゾノギシギシ』
木材でしきられた空間を住み処とし母は手長き蜘蛛に似ている
安藤美保『水の粒子』
人工物
木の床のところどころが擦り切れていてこんなにも父に似たバス
中沢直人『極圏の光』
中沢直人『極圏の光』
人物
父に似し腹話術師の去りしあと街のかたちにたそがれも消ゆ
寺山修司『月蝕書簡』(未発表歌集)2008
桜の日父に似る人あらはれてさなりわれ駅馬(はゆま)使ひといひたり
米川千嘉子(出典調査中)
そのほか
父といふ恋の重荷に似たるもの失ひて菊は咲くべくなりぬ
馬場あき子『阿古父』
漢字は父、ひらがなは母に似る文字が縦に並びて短歌面せり
ルビ:短歌面【たんかづら】
田口綾子『かざぐるま』2018
■子が父母に似る 自分が父母に似る
親に似るといえば、普通は子ども。ですから、自分自身が父母に似ることを詠む歌がたくさんあります。少し拾います。
高瀬一誌(出典調査中)
父に子の似ていく季節嘆かへば山羊の額かたく孤独に立つ
額【ぬか】
前登志夫『子午線の繭』
父のいない居間では私がいつもより父に似ているような気がする
木村友 201711文フリペーパー(第63回角川短歌賞予選通過作「オフライン」より)
亡母に似ると言はれし口をいろどるに又似る娘など持ちてもみたし
富小路禎子 『未明の調べ』
道浦母都子
母親の声に似ているわがくしゃみ身体のなかに母いるごとし
北辻一展『無限遠点』
〈きれいな眼、お母さん似〉羽虫とのキスで始まる春の静けさ
望月裕二郎 『ひらく』2009『あそこ』2013
吾児がわが母にほのかに似てくるを九月の朝のさざなみとなす
黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』
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