2020年12月24日木曜日

ミニ35 赤いポスト

郵便ポストが赤いのは……

落語で「空があんなに青いのも 電信柱が高いのも 郵便ポストが赤いのも みんなあたしが悪いのよ」というのを聞いたことがある。

これは、何か責められたときに「はいはい、そうですよ、どうせみんな私が悪いんでしょ」という拗ねた反応のセリフだ。

が、それはともかく、ポストの赤は、空の青と同列のベーシックなことなのだなあ。

ということ考えたついでに、ポストの赤を詠む短歌を探してみた。

空の青を詠む歌なら実にたくさんあるが、ポストの赤はどうだろう。どういう詩情を見出し得るだろうか、と。
本日のデータベースの短歌総数110,567首、うちポストを詠む歌は108首。
そのなかでポストの赤を詠む歌は以下の9首だった。

「俺は…俺は…」おれは今夜もポストなり赤く塗られてただ口あけて
加藤治郎(出典捜索中)


真夜中の赤きポストの能天気不幸の手紙何通呑みて
藤原龍一郎『19××』1997


赤きポストの傾きて立つところより残暑湧きつつとめどもあらず
小池光『日々の思い出』1988


まっぴらなまっぴるまにも立っている赤いポストはいつもの場所に
加藤千恵『ハッピーアイスクリーム』2001


あきかぜの吹く無人駅市振の赤いポストは遊女のやうな
木畑紀子『歌あかり』2008

※市振駅(いちぶりえき)は、新潟県糸魚川市にある、えちごトキめき鉄道・あいの風とやま鉄道の駅

いつまでも真っ赤な小学校なわけ無いじゃないポストじゃあるまいし
我妻俊樹 作者ブログ「喜劇 眼の前旅館」2010-03-12


木造の古家多き町並みに似合う郵便ポストの赤は
ルビ:古家【ふるいえ】
松木秀『親切な郷愁』2013


波音の聞こえ始める坂道にある旧式の赤いポストは
千葉聡『海、悲歌、夏の雫など』2015


澱みなく言い切るときに夕刊が至る わたしのポストが赤い
吉田恭大『光と私語』2019


見慣れた立ち姿、レトロで風情のある赤……。
おもしろい。
まだまだいけそう。
詠まれ続ければもっともっと味が出てきそう。

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