100円
百円を詠む歌は多いので、かんたんに分類しました。
百円玉
百円硬貨落とせば道に花は咲く きれいな気持ちで死んでいきたい
阿波野巧也 『ビギナーズラック』2020
床の間のテレビに百円入れるときなんかこわれているような音
薬局の店頭に積む百円のシャンプー一個われ用に買ふ
母の持つ化粧ポーチを覗いたら同じマニキュア百円親子
おびただしきは家の百円ライター赤き色を好むは何
死者との交信はすすんでますか 百円で買った富士山の水
百円の傘にたとへば八つ当たりしたら壊れるだらう まだ要る
絶望が出入りする頬 百円の手鏡覗くほど堕ちてない
のど赤きつばくらめって本当にいるんだね春百円ショップ
特別養護老人ホームの如くありブックオフには百円の本
街灯にわたしの吊された死体、へいきよ百円のハンバーガーたち
空腹を訴える子と手をつなぐ百円あれどおにぎりあらず
殺されて切り刻まれて串刺しにされて焼かれて百二十円
足立尚彦『冬の向日葵』2020
長崎の市電はなんとおおらかにどこまでも行く百二十円
田中徹尾『吟』2020
十冊で百五十円也赤川次郎の本が雨につよいことがわかりぬ
高瀬一誌『スミレ幼稚園』1996
霰うつ砂丘の古書肆レーニンの全集”一冊二百円也”と
山田富士郎『羚羊譚』2000
二百円で買ったゆううつタコ焼きの湯気にちぢれていく花がつお
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010
二百円の半割メロンにかしこみ注ぐビシソワーズをかしこみ啜る
西五辻芳子『金魚歌へば』2014
二百円を我に乞いたる自称元除染作業員にこの冬遇わず
行くだけで三百円もかかるけどいい古書店があったいい町
惜しみなく胸びれをふるミドリフグ(三百円)にも懶い春が
種付料三百万円ノーザンテーストの写真見ており疲れていたり
君と食む三百円のあなごずしそのおいしさを恋とこそ知れ
四百円にて吾のものとなりたるを知らん顔して咲くバラの花
爆竹で月へゆこうとする人に新五百円玉あげました
五百円持って疾走誰も見てないと思った伝線バレた
じんわりと汗ばむ五百円玉で鳥の冷たい心臓を購う
この夏を如何に過ごさん財布よりこぼるる五円玉を数へて
五百円玉を無言で受け取って握りしめてはどこへ行くのか
一時間五百円にて青春は売られておりぬマクドナルドで
五百円札のうす青色の中キャベツが笑う<たそがれ横丁>
「アントニオ猪木のまねのスマイルとチーズバーガー」「五百円です」
六本木まで六八〇円で行き、もらった券でウォーホル展入る
〈詞書〉アンディ・ウォーホル展「永遠の15分」2014年2月1日(土)~5月6日(火・休)
久真八志「かばん」2015・5
七百円の中トロを食ふ束の間もわれを忘れることができない
田村元『北二十二条西七丁目』2012
阿波野巧也 『ビギナーズラック』2020
春の夜に妻の手品を見ていたり百円硬貨がしろじろと跳ぶ
吉川宏志『青蝉』1995
百円玉ひとつ十円玉ふたつ入れて取り出す「愛の紅茶」を
小池光『時のめぐりに』2005
このわかりにくさはなんだ新雪の中に百円を落としたような
松木秀『RERA』2010
百円玉入れると映るテレビありなぜだかいつもさびしい場所に
穂村弘(出典調査中)
床の間のテレビに百円入れるときなんかこわれているような音
穂村弘『水中翼船炎上中』2018
散財をすべし 百円玉入れる度クレーンの爪の空振り
廣野翔一 個人誌「浚渫」2017
新雪に落ちた百円玉ひとつこころに沈むかなしみがある
長谷川径子『固い麺麭【ぱん】』2016
百円を伏せておくとき銀いろの水面に浮かんでくる桜花
飯田彩乃『リヴァーサイド』2018
百円ショップ
百円のカチューシャ付けてラヴリーと言われる貧乏ファインプレー
伊藤綾乃「かばん新人特集号」2015/3
薬局の店頭に積む百円のシャンプー一個われ用に買ふ
奥村晃作『父さんのうた』1991
とりあえずで買った百円均一の食器のままで町になじんだ
戸田響子『煮汁』2019
母の持つ化粧ポーチを覗いたら同じマニキュア百円親子
溝井亜希子「かばん」2004・6
おびただしきは家の百円ライター赤き色を好むは何
高瀬一誌『レセプション』1989
死者との交信はすすんでますか 百円で買った富士山の水
山下一路『スーパーアメフラシ』2017
百円の傘にたとへば八つ当たりしたら壊れるだらう まだ要る
山階基「風にあたる拾遺」(「未来」2013・8)
絶望が出入りする頬 百円の手鏡覗くほど堕ちてない
柴田瞳(出典調査中)
百円ショップで買つたと言ひてヘアブラシ長のむすめがわれにくれたり
小池光『梨の花』2019
夢よりも鮮やかでしょうこの虹は百円ショップで売っていたのよ
松木秀『5メートルほどの果てしなさ』2005
百円ショップから帰るとき見上げてたプラスティックな冬の満月
松木秀『色の濃い川』2019
のど赤きつばくらめって本当にいるんだね春百円ショップ
沼谷香澄 「Tongue」7号 2004・4
碁はコウのままで幸せ いまいちばん食べたいバザーの百円ケーキ
雪舟えま 朝日新聞夕刊2012/6/26
百円のレインコートをもとどおりたためるつもりでいたのでしたよ
蒼井杏『瀬戸際レモン』2016
休日を百円ショップにともなへば祖母はいくつも人形を買ふ
福士りか『フェザースノー』2002
草食男子の精子のごとくわずかなり百円ショップの修正液は
笹公人『念力レストラン』2020
百円の本
ブックオフの百円コーナーだけだろう逸見政孝を忘れないのは
松木秀『RERA』2010
下流なるわたくしなればブックオフで『下流社会』を百円で買う
松木秀『RERA』2010
特別養護老人ホームの如くありブックオフには百円の本
松木秀『親切な郷愁』2013
古書店の外積みの百円コーナーに『日本植民地史』あるはるのあわゆき
池田裕美子 『ヒカリトアソベ』2007
その他の百円
百円を入れピーマンを取り出せばわざわざここまで来て礼をする
土井礼一郎 「かばん新人特集号」2018
街灯にわたしの吊された死体、へいきよ百円のハンバーガーたち
安井高志『サトゥルヌス菓子店』2018
干からびたシューマイ5ヶで百円に下がる夕べを泳ぐコーラン
増尾ラブリー「かばん」2004・6
一山で百円也のトマトたちつまらなそうに並ぶ店先
俵万智『サラダ記念日』1987
空腹を訴える子と手をつなぐ百円あれどおにぎりあらず
俵万智『オレがマリオ』2013
101円~499円
甘いのはキャラメルじゃなくミルクキャラメル 学んだ授業料は百五円
鈴木希実子 「早稲田短歌」43号
鈴木希実子 「早稲田短歌」43号
殺されて切り刻まれて串刺しにされて焼かれて百二十円
足立尚彦『冬の向日葵』2020
長崎の市電はなんとおおらかにどこまでも行く百二十円
田中徹尾『吟』2020
十冊で百五十円也赤川次郎の本が雨につよいことがわかりぬ
高瀬一誌『スミレ幼稚園』1996
茶も出さず金も返さず百五十円飲み込んだまま自販機の黙
ルビ:黙【もだ】
斎藤寛『アルゴン』2015
斎藤寛『アルゴン』2015
霰うつ砂丘の古書肆レーニンの全集”一冊二百円也”と
山田富士郎『羚羊譚』2000
二百円で買ったゆううつタコ焼きの湯気にちぢれていく花がつお
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010
二百円の半割メロンにかしこみ注ぐビシソワーズをかしこみ啜る
西五辻芳子『金魚歌へば』2014
たましいを買う二百円消費税込みでおまけにストラップがつく
木下竣介 朝日新聞夕刊2012/2/14
二百円を我に乞いたる自称元除染作業員にこの冬遇わず
齋藤芳生『花の渦』2019
行くだけで三百円もかかるけどいい古書店があったいい町
佐々木朔『一月一日』vol.3 2016
人間はひとりにひとつ持たされた三百円のおやつであった
三上春海「詩客」2018-07-07
惜しみなく胸びれをふるミドリフグ(三百円)にも懶い春が
秋月祐一『迷子のカピバラ』2013
種付料三百万円ノーザンテーストの写真見ており疲れていたり
藤原龍一郎 『19××』1997
君と食む三百円のあなごずしそのおいしさを恋とこそ知れ
俵万智『サラダ記念日』1987
四百円にて吾のものとなりたるを知らん顔して咲くバラの花
俵万智『サラダ記念日』1987
四百五十円にてわれと娘のみの戸籍謄本を交付さる 沼尻つた子
『ウォータープルーフ』2016
500円
五百円以内で食べてコンビニの袋ぺしゃりと項垂れてる
吉村実紀恵『カウントダウン』1998
吉村実紀恵『カウントダウン』1998
爆竹で月へゆこうとする人に新五百円玉あげました
笹井宏之『ひとさらい』2011
五百円持って疾走誰も見てないと思った伝線バレた
山川藍『いらっしゃい』2018
じんわりと汗ばむ五百円玉で鳥の冷たい心臓を購う
成瀬しのぶ「かばん」1999・5
この夏を如何に過ごさん財布よりこぼるる五円玉を数へて
村本有「早稲田短歌」43号 2014・3
五百円玉を無言で受け取って握りしめてはどこへ行くのか
東直子「短歌ヴァーサス」四号
一時間五百円にて青春は売られておりぬマクドナルドで
俵万智『かぜのてのひら』
五百円札のうす青色の中キャベツが笑う<たそがれ横丁>
俵万智『サラダ記念日』
「アントニオ猪木のまねのスマイルとチーズバーガー」「五百円です」
平川哲生(出典調査中)
501円~999円
一時間六百円で子を預け火星の庭で本が読みたし
大口玲子『トリサンナイタ』2012
大口玲子『トリサンナイタ』2012
六本木まで六八〇円で行き、もらった券でウォーホル展入る
〈詞書〉アンディ・ウォーホル展「永遠の15分」2014年2月1日(土)~5月6日(火・休)
久真八志「かばん」2015・5
七百円の中トロを食ふ束の間もわれを忘れることができない
田村元『北二十二条西七丁目』2012
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