2021年9月23日木曜日

満63 すべてに通じる骨・血・肉

先日、「星」と「骨」「血」「肉」の組み合わせに注目してみたのですが、
それを書きながら、
「星」との組み合わせという切り口だけでなく、人体を構成する要素である「骨」「血」「肉」が短歌にどのぐらい使われていて、他の要素との結びつきはどうなのか、
という検証をすべきではないか、と思えてきました。

数値でできることはさっさとやっちゃいました。

あとから続編を書き足していくつもりです。


■短歌に骨・血・肉を詠み込む割合


右の図は、私の手持ちデータ(近現代短歌117,728首)の中で、「骨」「血」「肉」という語を含む歌の割合です。

 単位はなんだか原始的ですが%です。(もっとかっこいい統計の方法を使えればいいのですが、私にはよくわからないし、さほど厳密な話ではなく、ざっと比べるだけで用が足りますし。)


ご覧の通り、「骨」「血」「肉」の頻度はそう変わらず、どれもまあ200首あれば1、2首あるか、という高確率で用いられています。
歌の題材として、かなり重要なものと言えます。

■「骨+?」


 では、他の要素とのセットではどうなのか。

 まずは「骨」。

このグラフの見方はちょっとむずかしいのですが、

例えばグラフのいちばん上の
「骨28首/海3463首 0.81%」
とは、

「海」という語を詠み込んだ歌は3463首ある。
その中に「骨」を含む歌は28首あり、それは「海」の歌の0.81%にあたる。

ということを意味します。

「海と骨」といえば「秋の暮大魚の骨を海が引く」(西東三鬼)だけど俳句だ…。

 セット要素は、海、空などの基本的要素に加えて、人工物として「電車・列車」、地名として「東京」、抽象的なものとして「夢」なども加えてみました。

※「東京」は385首、「電車・列車」も637首しかなかったので、統計としてはあまり信用できません。

基準となる「全短歌」の骨率(「骨率」って変だな。笑)は、グラフの棒の色を変えて強調してあります。

どういう話題でも「骨」が出て来ているらしくて面白い。
「空+骨」「星+骨」はすでに取り上げましたが、他のセットも、どんな歌なのか読んでみたくなりませんか?
数が多いので今日はできません。すこしずつまとめたいと思います。

今日は、希少価値という意味で、骨率の少ない「夢」と「電車・列車」から1首ずつ紹介します。

肩甲骨だって翼の夢をみる あなたはなにをあざけりますか
虫武一俊『羽虫群』
遠くみゆる鉄橋を電車過ぐるなり暮れゆけば骨笛のやうなる電車
鎌倉千和『薔薇感覚』

■「血+?」

「東京」を詠む歌では、「血」率(笑)がだいぶ高いのですが、「東京」を詠み込む歌自体が少なく、該当歌もたった4首です。

 2番目の「青」の歌(手抜きして「青」という字を含む歌だけ抽出。靑、蒼、あお、あをなどの異なる表記は含みません。)は、3千首を超えていますから、その1%近くに「血」が詠み込まれているのは、なんとなく気になります。どんな歌なんだろう?

いやいや、それはこんどのお楽しみ。

ここでは希少な「街・都」と「雨」から1首ずつあげておきます。
(希少だけど歌数がけっこうあって、選ぶのがつらい……。岸上大作の超有名な歌を避けて…これいかが?)

霧雨に洗わせている血の眼 薬のように言葉を吐くな
二三川練『惑星ジンタ』2018

砂というよりも乾きの降る街を帰れば鼻に血の熱さかな
千種創一『砂丘律』2015

■「肉+?」


全体の0.6%に詠まれている「肉」ですが、今回設けたセット要素はどうもハズレみたいで、なんだか少なめです。大ヒットするような要素がきっとあるのでしょう。

気になるので、ちょっと追加で調べてみました。が、
「夜」34/6810:0.5%
「春」13/3842:0.34%
「夏」15/2929:0.51%
「秋」10/2588:0.39%
と、空振りばっかりでした。

時間のある時に腰を据えてやらなきゃだめみたいです。

ここではトップの「光」との組み合わせがちょっと気になりますね。光と肉……。

でも、今日は、特に希少な「街・都」と「電車・列車」から1首ずつにしておきます。

冬の街あるいてゆけば増強された筋肉みたいなダウンジャケット
永井祐『広い世界と2や8や7』2020

昼の列車に暖房ゆるくかよひつつ時間の果肉ならんか人は
小島ゆかり『憂春』2005

以上

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