私がこどもだったころ、ストレッチ素材といったら、ニットだけだったような……。
(s28生まれです。)
でも、ゴム紐はありました。
(ゴム紐は「押し売り」が売りに来る品ものの代表だった……。)
どうでもいいけど、パンツのゴムが無かったころは、いちいち紐でしばっていたんだなあ。
もろともにいつか解くべき逢ふことのかた結びなる夜半の下紐
※夜半(よは)の下紐(したひも)
相模『後拾遺和歌集』
輪ゴムは便利グッズ。
生活のあらゆる場面で使います。工夫次第でいくらでも用途がひろがる。
短歌の中ではどういう使われ方をしているでしょう?
本日の闇鍋データ119022首のなかに輪ゴムを詠む歌は15首ありました
輪ゴムと言えば? ーー束ねる!
輪ゴムのもっともありふれた用途は、束ねること。
あの独特の質感触感だけでも歌になりますね。
ゴムの輪を指に広げてぱちぱちと春の葉書を束ねて居たり
加藤治郎『昏睡のパラダイス』1998
輪ゴム二本で束ねる葉書 感情の過剰にいつも負かされており
小島なお『展開図』
月の温度、星の温度、瞳の温度を束ねて輪ゴムをかける指先
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016
文字・ことば信じえざるに生活の輪ゴムは二本重ねて使ふ
田口綾子「詩客」2011年11月
輪ゴムと言えば? ーー飛ばす!
ぼくたちのこころにかくもふりやまぬ隕石を撃ち落とした輪ゴム
山田航『さよならバグ・チルドレン』
消えてった輪ゴムのあとを自転車で追うのだ君も女の子なら
我妻俊樹 作者のブログ「喜劇 眼の前旅館」2010-04-30
指鉄砲で飛ばしたゴムの輪の中に時の青さが一瞬満ちた
千葉聡『微熱体』
輪ゴムと言えば? ーー劣化する!
劣化せし輪ゴムをあまた無造作に重ねゐたるは意味あるごとし
宇田川寛之 『そらみみ』
果たせざる約束の束留めんとし予定のごとく切れたるゴム輪
佐佐木幸綱『反歌』1989
音を立て伸びきるときにほとばしるあきらめかけた輪ゴムのにおい
山階基『風にあたる』2019
輪ゴムと言えば? ーー落ちている!
生活の中に輪ゴムを拾うとき憎しみのほんとうにかすかな息吹
田丸まひる『ピース降る』2017
何を止めていたのだろうか伸びきった輪ゴムを拾う息子の部屋で
平山繁美『手のひらの海』2019
輪ゴムと言えば? ーー???
口うつしされた輪ゴムがどうしてもどうしても輪ゴムの味がする
加賀田優子「詩客」2017-06-03
ドア開ける度によいしょと言ううちに輪ゴム取る時にもよいしょ出る
山川藍『いらっしゃい』
すれちがいふり返りみるぷくぷくの秋の手首に輪ゴム、キイロの
杉山モナミ 「かばん」2015ー09
俳句
手持ちデータのなかでは、
落ちている系2句 飛ばす系1句、劣化系1句、その他2句
七夕や輪ゴムが一つ落ちてゐる
阿部青鞋
雁わたる風か畳に輪ゴム踏み
桂信子
座敷から月夜へ輪ゴム飛ばしけり
川崎展宏
千切れけり賀状を束ねたる輪ゴム
若林哲哉「詩客」2018-01-13
ある昼をバナナにはまる輪ゴムかな
関悦史『六十億本の回転する曲がった棒』
枇杷すする母は手首に輪ゴムはめ
沢村和子
川柳
手持ちデータのなかでは、
束ねる系が2句 動力系2句(短歌俳句では見かけなかった)、劣化系2句、その他1句がありました。
思い出を束ねてのびている輪ゴム
二宮茂男 川柳絵句集『この指にとまって幸せだったかい』
輪ゴムにて耕衣と冬二束にする
飯田良祐「ハ゛ックストローク」4号
入り組んだ輪ゴムで動く少国民
山田ゆみ葉 「川柳カード」4号
一本の輪ゴムで走る僕の町
八戸むさし 2005/3 おかじょうき本社月例句会 題:『 町 』
伸びきった輪ゴムの中の無言劇
八戸むさし 2005/11 川柳ふぉーらむ「洋燈」月例句会 題:『 輪 』
無理強いが続き輪ゴムの自爆テロ
ひとり静 2003/1 川柳の仲間「旬」 127-128号
着着と輪ゴムが溜まる人嫌い
草地豊子
なお、おかじょうきのデータベースを見たらすごくたくさんありました。好まれる題なのかも。
0 件のコメント:
コメントを投稿