ミニアンソロジーにしたいけれど、そこまでの歌数がない。でも、レア鍋賞ほど少ないわけでもない……。
そんな感じのときここに書いておきます。
■ わがめぐり
「わがめぐり」というフレーズ、短歌ではまれに使われます。こんなかんじ。
わがめぐり次々と鳩が降り立ちて赤き二本の足で皆立つ
奥村晃作『鴇色の足』
せめてわがめぐりの夜と睦みいん一缶の水沸き立たしめて
岡井隆『土地よ、痛みを負え』
ただひとりの人を得むとて罠となるわがめぐりに木草は芽ぐむ
久我田鶴子 『久我田鶴子歌集』現代短歌文庫
女よ、いま他国の死こそ泡立ちてわがめぐりまかがやく真夏の鏡
佐佐木幸綱 『夏の鏡』1976
雨の名の乏しきフランスの雨よ、降るならばわが巡りに降れよ
小川真理子 『母音梯形(トゥラペーズ)』2002
かがみつつ亀を見てゐるわがめぐりまひるの白い楕円閉ぢたり
小島ゆかり『憂春』
わがめぐりのみにゆらめき世界より隔つる冬の陽炎のあり
蜻蛉は透き羽にひかりためながらわがめぐりを舞ふ死者の軽さに
大塚寅彦『現代短歌最前線』(北溟社)上巻自選100首
近づきてゆきたれば遊行柳消え立ちどまるわがめぐりうすらひ
集団にてみみずたしかに鳴きたるはわがめぐりにて闇のまさかり
渡辺松男 『雨(ふ)る』2016
吹雪晴れひかりに瞑るわがめぐり か か か か 木乃伊のわらい
渡辺松男(出典調査中)
風立てどわがめぐりのみ静まりてせばまりて小さく息を吐きたり
筒井富栄『風の構図』
夕立の香に囲まれているごとしバス停のわが周りは娼婦
藤沢蛍『時間(クロノス)の矢に始まりはあるか』
春の日のベンチにすわるわがめぐり首のちからで鳩は歩くを
内山晶太『窓、その他』
わがめぐり眞空となる時のあり 群集のなか・万の短歌(うた)の中
ルビ:短歌【うた】
齋藤史(出典調査中)
なお、「わがめぐり」という言い方、俳句ではぜんぜん見かけないような気がしています。
(私のデータベースだけでなく現代俳句協会のサイトでも見つかりませんでした。)
2022・6・17
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