2022年6月17日金曜日

ちょびコレ11 わがめぐり

 ここは、日々なんとなく見つけたちょっとした短歌コレクションの置き場です。


ミニアンソロジーにしたいけれど、そこまでの歌数がない。でも、レア鍋賞ほど少ないわけでもない……。

そんな感じのときここに書いておきます。


■ わがめぐり


「わがめぐり」というフレーズ、短歌ではまれに使われます。こんなかんじ。

わがめぐり次々と鳩が降り立ちて赤き二本の足で皆立つ
奥村晃作『鴇色の足』

せめてわがめぐりの夜と睦みいん一缶の水沸き立たしめて
岡井隆『土地よ、痛みを負え』

ただひとりの人を得むとて罠となるわがめぐりに木草は芽ぐむ
久我田鶴子 『久我田鶴子歌集』現代短歌文庫

女よ、いま他国の死こそ泡立ちてわがめぐりまかがやく真夏の鏡
佐佐木幸綱 『夏の鏡』1976
雨の名の乏しきフランスの雨よ、降るならばわが巡りに降れよ
小川真理子 『母音梯形(トゥラペーズ)』2002

かがみつつ亀を見てゐるわがめぐりまひるの白い楕円閉ぢたり
小島ゆかり『憂春』

わがめぐりのみにゆらめき世界より隔つる冬の陽炎のあり
蜻蛉は透き羽にひかりためながらわがめぐりを舞ふ死者の軽さに
大塚寅彦『現代短歌最前線』(北溟社)上巻自選100首

近づきてゆきたれば遊行柳消え立ちどまるわがめぐりうすらひ
集団にてみみずたしかに鳴きたるはわがめぐりにて闇のまさかり
渡辺松男 『雨(ふ)る』2016

吹雪晴れひかりに瞑るわがめぐり か か か か 木乃伊のわらい
渡辺松男(出典調査中)

風立てどわがめぐりのみ静まりてせばまりて小さく息を吐きたり
筒井富栄『風の構図』

夕立の香に囲まれているごとしバス停のわが周りは娼婦
藤沢蛍『時間(クロノス)の矢に始まりはあるか』

春の日のベンチにすわるわがめぐり首のちからで鳩は歩くを
内山晶太『窓、その他』 

わがめぐり眞空となる時のあり 群集のなか・万の短歌(うた)の中
ルビ:短歌【うた】
齋藤史(出典調査中)


なお、「わがめぐり」という言い方、俳句ではぜんぜん見かけないような気がしています。
(私のデータベースだけでなく現代俳句協会のサイトでも見つかりませんでした。)


2022・6・17

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