2024年2月12日月曜日

ちょびコレ20 指をたてる

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。


 指をたてる

「指を立てる」ということを詠み込んだ歌を探したところ、7首みつけた。

中指を立てる千年先からも空色の爪がよく見えるやうに
魚村晋太郎『銀耳』

望むまま世界は歪む中指を立てて眼鏡を押し上ぐるたび
光森裕樹『鈴を産むひばり』

小野さんが中指たてて風向きをはかるしぐさでじっとしている
藤田千鶴『白へ』

中指のあらん限りを立てている松のさびしき武装蜂起は
吉岡太朗『世界樹の素描』2019

杉の木を指とおもへば寒の指一本立ててゐるさみしさや
渡辺松男『時間

気の弱い奴のはずだが指立てて指に風呼ぶ今朝のあいつは
坪内稔典『豆ごはんまで』

鳶の尾の乱れぬさまを言うならば指をするどく斜めに立てよ
依田仁美『異端陣』2005


ご覧の通り7首中の4首は「中指」である。

世間では、「中指を立てる」のは「ファックサイン」であって、相手を侮辱する品のない仕草である。

短歌の中ではどうなのか。
短歌に品のないことをめったに書かないし、読者も、はなから下品なイメージは想定しないで読む人も少なくない。

でも、その気で読むと、「ファックサイン」の含みもあるように見えてくる歌もあるなあ。あ、余計なこと言っちゃったかな。


なお、「立てる」と書いてないけれど、次の歌の指はいかにも立っている。むろんちっとも下品じゃない。

たくさんの空の遠さにかこまれし人さし指の秋の灯台
杉崎恒夫『食卓の音楽』1987

2024年2月12日




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