2024年4月5日金曜日

ちょびコレ22 言葉のなかのダムとダムの歌

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)


言葉のなかのダムとダムの歌


私の短歌データベースで、何の気無しに、「ダム」という語で検索をかけたら、ばかにたくさん(63首も)出てきてしまった。
しかし、よく見ると「マダム」「ランダム」なども抽出してしまっている。

そこで、除外する語を思いつく限り入力。

マダム、ランダム、アダム、ノートルダム、ノートル・ダム、
ノストラダムス、サダム、ガンダム、ポツダム

おお、言葉のなかのダムたちよ。

こんなにいっぱい除外してようやく、「ダム」(水をせき止めるあれ)の歌だけに絞り込んだ。(21首になった。)

言葉のダムだけでなんだか満足感が大きくて失念しそうになったが、
ダムを詠み込んだ歌を少しピックアップ。


せつなさの一切を目にあらはして熊はおよぎてゐたりダム湖を
渡辺松男『牧野植物園』

太い喉が上下に動く わたしもそのダムが欲しい雨季の体に
櫻井朋子『ねむりたりない』

人去りし村にて仰ぐ上空のどこまでダムに抱かるるだらう
黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』

眼底を覗かれており隠されていたわたくしのダム湖の昏さ
遠藤由季『鳥語の文法』

あまえびの手をむしるとき左胸ふかくでダムの決壊がある
笹井宏之『ひとさらい』

この世から逃れられない 山奥のダムの底には無数の標識
伊波真人「かばん」新人特集2010/12

コロラドの生態系を変へるやうな激烈なダムは寝室にはない
岡井隆『ET』

ダムに落とした一滴の悪の味がするハーブのお茶を飲み干したあと
ルビ:
悪(を)
林和清『匿名の森』

谷と谷出会うところにダムがあり地図はみな暴かれた折り紙
西藤定『蓮池譜』

 ダムというものは、かつては陸地だったところを湖にすることがあり、人がすんでいた場所が水底に沈めていることなど、かなり詩的な刺激(歌に詠んでくださいよっていう感じの)がある。

 しかし、その誘いは、「ダム」という語に含まれているといっていいぐらいに強いから、ストレートに受けて詠むのでは、素材そのままでしかない。だから、ストレートに受けずにそれとなくイメージを活かす、的な歌がたくさんあるのだろう。

 ところで、最後の歌、読んだ途とたんに「マップまっぷたつ! 」というフレーズがうかんできちゃった。ムダ事だと思ってまた笑いそうになった。 

2024年4月5日

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