2024年4月7日日曜日

ちょびコレ23 「40」

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)

40

なぜ「40」なのか?
たまたま、所属誌「かばん」が40周年をむかえるので、
「40」(四〇、四十、四拾、よんじゅう)
を含む短歌を探してみようと思った。ただそれだけです。

 思いのほか多いので、ありがちな(たとえば「四〇歳になった感慨」みたいな)歌は少なくしました。

ことだまの80bytesは全角で40文字まで空爆無料
鈴木有機 「かばん」2003/5

真っ直ぐに尾鰭のばして浮上する鯉の仰角約四十度
杉崎恒夫

石鹸がタイルを走りト短調40番に火のつくわたし
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』
 ※モーツァルト 交響曲第40番 ト短調 K. 550 

小工場に酸素熔接のひらめき立ち砂町四十町夜ならむとす
土屋文明『山谷集』
 ※東京都江東区に昔あった地名。今も通りの名として残っている。

ネクタイと海を間違う砂浜の平均気温四十度強
笹井宏之『ひとさらい』

少年のしぐさのように吸われゆく四十度ほど左翼を下げて
三枝昻之『農鳥』

スプーン一杯に満たざる蜜を集めたる四十日ののちに死ぬとぞ
稲葉京子『忘れずあらむ』

四十になっても抱くかと問われつつお好み焼きにタレを塗る刷毛
吉川宏志『青蝉』

四十トンあまりの鯨つぎつぎに跳びたる海はしばらくゆらぐ
秋葉四郎

満月の四十階のバーに飲む酔ってまだ飲むドライマティーニ
佐佐木幸綱

にんげんは地中せいぶつ大江戸線地下四十メートルの六本木駅
鈴木良明「詩客」2013-06-28

杉垣をあさり青菜の花をふみ松へ飛びたる四十雀二羽
正岡子規『竹の里』

死のきはの猫が嚙みたる指の傷四十日経てあはれなほりぬ
小池光『梨の花』

四十年使ひなれたる塗椀に汁盛る朝の夏至の葱の香
馬場あき子『あさげゆふげ』

事務所まで戻れば四十円安い愛のスコール駅で飲み干す
山川藍『いらっしゃい』

千葉君は四十過ぎてもときどきはT先生に怒られている
千葉聡『グラウンドを駆けるモーツァルト』

呑むための器ばかりが増えてゆく四十半ばの白い白い闇
ルビ:四十【しじふ】
大松達知『ぶどうのことば』

四十路びと面さみしらに歩みよる二月の朝の洎芙藍の花
ルビ:面【おも】 洎芙藍【さふらん】
北原白秋『桐の花』




2024年4月7日

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