「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。
(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)
砂は降る みひらく秋の瞳孔に一億丁のカラシニコフに
佐藤弓生『薄い街』
カラシニコフのやうなれんこんの重さいやかんがへさせてもらはう
平井弘『遣らず』2021
辛子がらみのふまじめはれんこんの重さがカラシニコフのやうで
平井弘『遣らず』2021
内戦の国にかならずカラシニコフありて九十四歳に死す
松木秀『色の濃い川』
地球には一億丁のカラシニコフ ヒトをなんども滅ぼすに足る
嶋田恵一「かばん」2024・8
瞳孔、れんこん(カラシ〉。
カラシニコフはそういう連想脈を持っている。
カラシニコフはそういう連想脈を持っている。
最後の嶋田の歌を見て考えたのだが、ヒトをなんども滅ぼすに足る武器はカラシニコフだけではない。たとえば核兵器は地球を十個破壊できるほどあるそうだ。
つまり、殺傷力から言えば核兵器のほうが大きい。が、試みに上の句が「地球には一万発の核爆弾」(実際には一万七千とからしい)だったらどうだろう。
仮に置き換えて比べてみる
地球には一万発の核爆弾 ヒトをなんども滅ぼすに足る
地球には一億丁のカラシニコフ ヒトをなんども滅ぼすに足る
これは迷わずカラシニコフに軍配だ。
一万より一億のほうが多いし、人が手に持って使う「殺し合い」の生々しいむなしさがあるし、そういえば人名みたい。カラシニコフを手にした人に憑依して、みんなカラシニコフさんになってしまいそうだ。
しかも、その一方、「カラシニコフ」はなんとなく植物名ふうで風情もある。雑草の「ヤブガラシ」などがはびこるさまが、言語野のすみに見え隠れする。
もっと変な名称(日本語的に発音しにくくて風情がないような〉だったら、歌にこんなに詠まないだろうと思う。
(NHKの「映像の世紀」で2024年5月20日に「一億丁のカラシニコフ史上最悪の殺人兵器」を放送した。時期的に嶋田の歌はそれを見て詠んだ歌かもしれないが、そうでないかもしれないし、それはどうでもよくなるだろう。〉
仮に置き換えて比べてみる
地球には一万発の核爆弾 ヒトをなんども滅ぼすに足る
地球には一億丁のカラシニコフ ヒトをなんども滅ぼすに足る
これは迷わずカラシニコフに軍配だ。
一万より一億のほうが多いし、人が手に持って使う「殺し合い」の生々しいむなしさがあるし、そういえば人名みたい。カラシニコフを手にした人に憑依して、みんなカラシニコフさんになってしまいそうだ。
しかも、その一方、「カラシニコフ」はなんとなく植物名ふうで風情もある。雑草の「ヤブガラシ」などがはびこるさまが、言語野のすみに見え隠れする。
もっと変な名称(日本語的に発音しにくくて風情がないような〉だったら、歌にこんなに詠まないだろうと思う。
(NHKの「映像の世紀」で2024年5月20日に「一億丁のカラシニコフ史上最悪の殺人兵器」を放送した。時期的に嶋田の歌はそれを見て詠んだ歌かもしれないが、そうでないかもしれないし、それはどうでもよくなるだろう。〉
2024/8/22
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