2019年10月28日月曜日

富士の見立て(11) シュールで雄大な構図の両国橋

ほとゝぎす富士と筑波の天秚に両国橋をかけたかとなく 黒人 E(天明期)

F:富士と筑波を天秤に。これって、もしかして、すごいシュールな絵?

G:ホトトギスの声は古来「○○カケタカ」と聞きなされていて、この歌ではそれを「天秤にかける」として、両国橋を、二つの山を載せた天秤に見立てている。

F:これぞ見立て歌の代表っていう感じ。


F:あ、こっちの両国橋は股のぞきですね。

踏み跨ぐ両国橋の股ぐらに富士のすゝへの風薫る也 馬鹿人 K1806

F:両国橋で股といえばこっちの歌もある。これまたなんとも(笑)ですね。
 さっきの両国橋の歌とはちょっと違って、橋の股の下からのアングルで富士を見あげている。
 ところで、「富士のすゝへの風薫る」っていうのは、もしやアレですか?

G:アレ。
 諺に「沈香も焚かず屁もひらず」とあるが、富士山に限って双方出来る。

F:くすっ。富士の見立てってほんとうにシモネタが多いですね。「逆さ富士」とか。

G:そうですが、それ一つに行きどまらないほうがいい。「逆さ富士」は、死後の世界という別の暗示にも転じられる。シモネタで片付けたら惜しいこともある。

F:なるほど。ーーでも、もうひとつ股のぞき。

武蔵野に今日ハ遠慮もしら雪の富士を股から見る若菜摘み 貞意 D

On broad Musashi Moor today the snow brings informality 
as plucking young greens we see between our legs Mt Fuji!

F:股のぞきで見上げる富士とか若菜摘みとか、この歌も思わせぶりですが(笑)、それは置いといて、富士を遠慮なく股から見上げるような言い方が楽しいですね。
(続く)

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