ほとゝぎす富士と筑波の天秚に両国橋をかけたかとなく 黒人 E(天明期)
F:富士と筑波を天秤に。これって、もしかして、すごいシュールな絵?G:ホトトギスの声は古来「○○カケタカ」と聞きなされていて、この歌ではそれを「天秤にかける」として、両国橋を、二つの山を載せた天秤に見立てている。
F:これぞ見立て歌の代表っていう感じ。
F:あ、こっちの両国橋は股のぞきですね。
踏み跨ぐ両国橋の股ぐらに富士のすゝへの風薫る也 馬鹿人 K1806
F:両国橋で股といえばこっちの歌もある。これまたなんとも(笑)ですね。さっきの両国橋の歌とはちょっと違って、橋の股の下からのアングルで富士を見あげている。
ところで、「富士のすゝへの風薫る」っていうのは、もしやアレですか?
G:アレ。
諺に「沈香も焚かず屁もひらず」とあるが、富士山に限って双方出来る。
F:くすっ。富士の見立てってほんとうにシモネタが多いですね。「逆さ富士」とか。
G:そうですが、それ一つに行きどまらないほうがいい。「逆さ富士」は、死後の世界という別の暗示にも転じられる。シモネタで片付けたら惜しいこともある。
F:なるほど。ーーでも、もうひとつ股のぞき。
武蔵野に今日ハ遠慮もしら雪の富士を股から見る若菜摘み 貞意 D
On broad Musashi Moor today the snow brings informalityas plucking young greens we see between our legs Mt Fuji!
F:股のぞきで見上げる富士とか若菜摘みとか、この歌も思わせぶりですが(笑)、それは置いといて、富士を遠慮なく股から見上げるような言い方が楽しいですね。
(続く)
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