ミニ11 冷蔵庫とたまご
ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は
穂村弘『シンジケート』
秋霊はひそと来てをり晨ひらく冷蔵庫の白き卵のかげに
ルビ:晨(あした)
小島ゆかり『月光公園』
冷蔵庫ひらきてみれば鶏卵は墓のしずけさもちて並べり
大滝和子『銀河を産んだように』
冷蔵庫には卵のための指定席秋のコンサートが始まるらしい
杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』
冷蔵庫の出口に近きたまごから順に食はれて最後のひとつ
田口綾子『かざぐるま』
はじめから孵らぬ卵の数もちて埋めむ冷蔵庫の扉のくぼみ
林和清
春暁にほのぐらく浮く冷蔵庫唸りあげをり鶏卵を抱き
黒瀬珂瀾『空庭』
冷蔵庫にほのかに明かき鶏卵の、だまされて来し一生のごとし
ルビ:一生(ひとよ)
岡井隆
生みたての卵は冷蔵庫に光りて放置死させるごときはかなさ
ルビ:光(て)
米川千嘉子『滝と流星』
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