2020年2月19日水曜日

ミニ9 眼を洗う

ひざにのせたあなたのアルミニウム色の目をやさしがるかに洗うさざなみ
飯田有子

たれかいま眸洗へる 夜の更に をとめごの黒き眸流れたり
葛原妙子『葡萄木立』

たつとりの初めて父を見たる眼が海の蒼さに洗われている
江田浩司

くじらより大きなビルの眼を洗う文明の飼育係となって
植松大雄『鳥のない鳥籠』

眼を洗ひいくたびか洗ひ視る葦のもの想ふこともなき莖太き
塚本邦雄『水葬物語』

少年が目を洗いいるたそがれを鞍馬天狗が帰る蹄音
寺山修司『月蝕書簡』

ビー玉一つ失くしてきたるおとうとが目を洗いいる春のたそがれ
寺山修司 『月蝕書簡』

風の街歩みきて乾く目を洗うぬ るき湯ふとも涙のごとし
久々湊盈子『あらばしり』

半島の政変、月の峠を来てみづからの眸を洗ひてのち夕餉す
西王燦『バードランドの子守歌』

水の中に眼を洗ひゐてみひらきつ杳く呼びつつ来るもののある
山本かね子『風響り』

眼を洗いたい、耳を洗いたい、鼻を喉を洗いたい。胸の内側まで洗いたい。
田丸まひる『硝子のボレット』

眼を洗ふこののちくるもの怖けれどわれに残されし時間なほ見ん
馬場あき子『あさげゆふげ』

霧雨に洗わせている血の眼 薬のように言葉を吐くな
二三川練『惑星ジンタ』

灼けているプールサイドにぴゅるるるるあれは目玉をあらう噴水
穂村弘『水中翼船炎上中』2018

水の中に眼を洗ひゐてみひらきつ杳く呼びつつ来るもののある
山本かね子『風響り』

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