往診の鞄おおきくひらかれて見れば宇宙のすはだは青い
佐藤弓生 『眼鏡屋は夕ぐれのため』
まだ地上にとどいていない幾億の雨滴をおもう鞄をあけて
加藤治郎
イエスに肖たる郵便夫来て鮮紅の鞄の口を暗くひらけり
塚本邦雄
樹にされし男も芽ぶきびっしりと蝶の詰まれる鞄を開く
佐佐木幸綱『アニマ』
買いたての鞄ひらけば工房の匂いあるいは牛の内面
東直子「短歌研究」201111
残雪の山の宿ゆ帰り来て無人の家に鞄をあける
ルビ:宿(やどり)
小笠原和幸『春秋雑記』
雨の日に茶色の鞄こじあける捨ててしまつたわたしを捜し
新井蜜『月を見てはいけない』
いぬおとこ黑鞄開け十二使徒セツト価格で如何と嗤ふ
足田久夢 2016短歌研究応募作
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