おびただしい古典和歌を読破し、今は和歌のB面ともいうべき狂歌を研究されているロビン・D・ギル(Robin D Gill)さんと、2018年秋にFacebookで「友達」になった。
ロビン・D・ギルさんって、もしかして、と思った方はいないだろうか。
ギルさんは、かつて『誤訳天国』(87年・白水社)『英語はこんなにニッポン語――言葉くらべと日本人論』(89年・ちくま文庫)などで知られたジャパノロジストだ。(当時の名はロビン・ギル。)
私も当時『英語はこんなにニッポン語』を読み、この書名から想像し得る範囲を超えて溢れやまぬ豊饒を感じた。このギルという人は水中で息のできる人、言葉を鰓呼吸できる人なんじゃないか、と思ったのだった。(誓って言うが、その時点で「ギル」が「鰓」だなんて気づいていなかった。)そのギルさんとひょっと「友達」になるとは、さすがFacebookである。
日本を離れたギルさんは、日本の古典俳句や狂歌を研究に没頭し、『Rise, Ye Sea Slugs!』(03年/古今の海鼠の俳句約千句の英訳)、題名からして面白い『Fly-ku!』(04年/一茶の名句「やれうつな」を生み出した言葉の土壌形成の考察)、『Cherry Blossom Epiphany』(07年/宗祇から江戸後期までの三千の桜の古句の英訳)、等々を出版。その後、狂歌に魅せられ、狂歌大観、近世上方と江戸狂歌本の三大シリーズをはじめ、万葉集まで遡って古歌何十万首を読破。狂歌を七、八万首も集め、その知識を芯に、『古狂歌 滑稽の蒸すまで』他五冊を出版して現在に至る、という。いま狂歌らは群をなし彼の脳内を泳ぎ回っているらしい。
そういうわけで自称「古歌の首狩」のギルさんは2019年1月に来日され、そのとき直接お会いすることができた。二十年ぶりだというのに日本語ペラペラじゃないですか!(スゴーイデスネとなぜかこちらがガイジン口調。)
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