2020年2月19日水曜日

ミニ17 冬大根vs.夏大根

冬のだいこんの味に言及する短歌は、2014年ごろに発行された歌集に集中していた。そしてこのごろ(現在2020年)見かけなくなった。
そういう偶然もあるだろう。
(どうかなあ。夏冬と大根の組み合わせで味に言及する例は、それ以前ではあんまり見ないように思う。あまり意識できないような何らかのきっかけがあったのかも。)

●冬大根
電車の外の夕方を見て家に着くなんておいしい冬の大根   
永井祐『日本の中でたのしく暮らす』2012

寒ければいよいよ甘し大根のやうなわれなり冬を愛する 
笹谷潤子『夢宮』2014

焼酎五、お湯五、風ある冬の夜の煮返して食ふだいこん旨し
高野公彦『流木』2014

ふかぶかと息を吐きつつ父親は冬の廚に大根を蒸す
ルビ:吐(つ)
服部真里子『行け広野へと』2014

冬来れば大根を煮るたのしさあり
細見綾子(俳句)

■2021.4.29追加

ベランダに干した大根ほそりゆきたり この冬も一人で生きる
田宮智美『にず』

冬の風つめたく晴れて/木の空に/大根の死骸かぎりなし
夢野久作『猟奇歌』

●夏大根
夏大根に家中の口しびれつつ今日終る 国歌うたはず久し
塚本邦雄『日本人靈歌』1958

さたうきび畑の唄をうたひきり夏大根ざくりときざむ母
笹井宏之『てんとろり』2011(筒井宏之名義文語)


とまれ古稀夏大根の曳く辛み
古沢太穂(俳句)

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