2020年2月19日水曜日

ミニ18  天の川

●現代歌人
あまのがわ上流をながされてゆくあなたのかなしみの箒星
笹井宏之(1982生)『てんとろり』2011

天の川そのかみしもを確かむるために浮かべつひとつ椰子の実
光森裕樹(1979生)『うづまき管だより』(2012)

天の川銀河アンドロメダ銀河衝突せむは弥勒のまへか
渡辺松男(1955生)『短歌』2018年1月号

負ふべくは負ふてゆくべし碧天を音なく流れゐる天の河
永井陽子(1951生)

天の川夜空に輝りぬ我の手の跡きえゆくやかの乳房より
高野公彦(1941生)『天泣』

さやぎ合ふ人のあひだに澄みゆきてやがてくぐもる天の川われは
岡井隆(1928生)『天河庭園集[新編]』

天の川地上にあらばははうへがちちうへの辺に解きし夏帯 
ルビ:辺(へ)
塚本邦雄(1920生)『魔王』1993

あまの川うお座くじら座みずがめ座天にも秋のみずはみなぎる
杉﨑恒夫(1919生)

天の川白き夜去りて朝風の中なる萩にくれなゐ走る
宮柊二(1912生)『忘瓦亭の歌』


●近代歌人
   ※近代は天の川の「白さ」を詠む歌がやや多い感じがする。全部ではないが。

天の河棕梠と棕梠との間より幽かに白し闌けにけらしも
ルビ:闌(ふ)
北原白秋(1885生)『雲母集』1915

滑川越すとき君は天の河白しといひてあふぎ見しかな 
吉井勇(1886生)

宵闇の旧街道をわがくれば天の川白し芦の湖の上に
古泉千樫(1886生)

あまの川棚引きわたる眞下には糸瓜の尻に露したゞるも
長塚節(1879生)『長塚節名作選 三』1987   歌は1903年頃の作

天の川そひねの床のとばりごしに星のわかれをすかし見るかな
天の川白き夜ぞらにかひな上げふれて涼しくなりし手のひら
与謝野晶子(1878生)

寝静まる里のともし火皆消えて天の川白し竹薮の上に
星合の七日も近き天の川桐の木末や浅瀬なるらん
正岡子規(1867生) 歌は1898年作

いささかの丘にかくろふ天の川のうすほの明りその丘の草
島木赤彦(1876生)

岩の秀に立てばひさかたの天の川南に垂れてかがやきにけり
斎藤茂吉(1882生)

天の川世の目あらはに相逢はむ恋にしあらば何かなげかむ
伊藤左千夫(1864生)

●古典時代の歌も少し
忘れにし人にみせばやあまの川いまれし星の心ながさを
新左衛門(?)『後拾遺和歌集』

秋風に夜のふけゆけは天の川かはせに浪のたちゐこそまて
紀貫之(872頃生)『拾遺和歌集』

天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや
柿本人麻呂 (660頃生)『萬葉集』 巻十

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