井上法子『永遠でないほうの火』
翼竜にたましいありや スイッチを切ればまばゆき虹の音量
井辻朱美『クラウド』
まばゆすぎる綺羅が底鳴りしてみせるこの獰猛な海というやつ
井辻朱美『クラウド』
生きもののごとく油槽に流れこむ五千リッターの重油まばゆし
外塚喬『喬木』
病院を出れば世界はまばゆくて日傘でつくるひとりぶんの影
岸原さや『声、あるいは音のような』
風いでて波止の自転車倒れゆけりかなたまばゆき速吸の海
ルビ:波止【はと】 速吸【はやすひ】
高野公彦『水木』
つっぷした緑の大地まばゆくてなんて深いのこのきりぎしは
佐藤弓生『薄い街』
菜の花の点描となりゆくまばゆさはみえない雪がふっているのか
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
はにかんでまばゆいばかりの明け方にあなたの首の骨を折りました
笹井宏之『ひとさらい』
まばゆいこと右手に灯せば左手はあなたを覆う影となろうか
渋谷美穂「早稲田短歌」43
春鳥はまばゆきばかり鳴きをれどわれの悲しみは渾沌として
前川佐美雄
女いて朱夏まばゆくて一握の銀貨をくれと言えば頷く
谷岡亜紀
家族分展げて干せばまばゆくて傘とはこんなに輝くものか
ルビ:展【ひろ】
中畑智江『同じ白さで雪は降りくる』
啼くこゑが君をみえなくしてしまふ夕日まばゆきかなかなの路
渡辺松男『雨(ふ)る』
窓の外のまばゆいひかり車内にてひかりはすべて書物となりぬ
木下こう『体温と雨』
瀬の光るまばゆさ遠くやわらかきいたみ盗癖のことにかかわる
林安一
楊子くはへ障子いづれば午近き日ぞまばゆけれつかれし瞳
ルビ:午【ひる】
前田夕暮『収穫(上巻)』1910
きっと光の裏側はもっとまばゆい或る夏の日にわたしは歌う
加藤治郎『混乱のひかり』
もうすぐ空があの青空が落ちてくるそんなまばゆい終焉よ来たれ
永井陽子『葦牙』
けっこう多かったので、好みで選びました。
■2021年4月29日追加
乾きたるプールの底に立つひとのまばゆし死後のひかりのやうに
楠誓英『禽眼圖』
雲の上に出でてまばゆきまかはんにやはらみたくわうの中を飛びゆく
高野公彦『水苑』2000
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