2020年7月1日水曜日

青005 夏のまんなか素足は体をすこしだけほうり投げる あおびょうたーん  杉山モナミ

「たーん」は「ターン」(turn)?


夏のまんなか素足は体をすこしだけほうり投げる あおびょうたーん
杉山モナミ 『ヒドゥン・オーサーズ 』2017

足が体を「あおびょうたーん」と「ほうり投げる」。
おもしろい歌だが、特に、「あおびょうたーん」の伸ばす部分の効果がすごいと思う。
その効果について仮説を書こう。

「あおびょうたん」とは未熟なひょうたんのことだが、隠語として、痩せて顔色が悪い人のことをさすほうが多い。この歌ではひ弱な自分を鼓舞するニュアンスも含むようだ。

それがただの鼓舞にとどまらない。「あおびょうたん」は自分自身のことなのだろうが、空も「あおびょうたん」なのかな、という感じがちょっとしないだろうか。

なぜかというと、「あおびょうたーん」がオノマトペ的に働いて、体が空中で「ターン」する感じがするからだ。
体がひるがえって裏返って空になる、とでも言ったらいいのか。

このように書くと、そんなことはどこにも書いてない。と思う。
こういうふうに、明確化させずに無意識領域で、ちょっとそう思わせるにとどめておくような表現があるのだ。

空の無限が妖怪みたい


ひるがえる……、うらがえる……。

「あおびょうたーん」の「ターン」は、そういう瓢箪空間を裏返して内側をさらけ出しそうな、空間をゆがめる効果があると思う。

ひょうたんといえば、『西遊記』に、呼びかけた相手が返事をすると中に吸い込んで溶かしてしまう恐ろしい瓢箪が出てくる。
空の無限を詠む人はいくらでもいるが、こういうふうに、空の無限を裏返された妖怪みたいに描く歌は、ものすごく珍しい。

以上




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