2021年3月6日土曜日

お金を詠む 1円~9円(随時更新)


お金や金額を詠み込む短歌をピックアップしています。

硬貨やお札は、物体としての外観や質感の個性があり、そこから詩情が引き出されます。
また、「◯◯円」という金額の数字にも、詩情を引き出す力があり、なかなか興味深いと思います。

たっぷり味わってください。

1円

拾われぬまま一年が過ぎてゆくチョークまみれの一円硬貨
入谷いずみ『海の人形』2005

 ウエディングヴェール剥ぐ朝静電気よ一円硬貨色の空に散れ
穂村弘『シンジケート』1990

一円のアルミの硬貨落ちている畳の冬陽路傍のごとく
岡部桂一郎『一点鐘』2002

ネットにて反対を書く 一円玉のような軽さと思えども書く
吉川宏志『鳥の見しもの』2016

なげやりに暮らしているとおさいふの一円玉が増えてくるのよ
本多真弓『猫は踏まずに』2017

パーマでもかけないとやってらんないよみたいのもありますよ 1円
永井祐『日本の中でたのしく暮らす』2012

 「二個一円!」みやげもの売る中国の少女群がる雷雨のように
ルビ:二個一円【ニコイーチエン】
俵万智『サラダ記念日』1987  

 星一つ書いて一円もらいたい億万長者も夢じゃないのに
中川聡  「早稲田短歌」43号

2~4円


もやもやとだまされてゐる春日暮れ二円切手のうさぎ愛ごくて
ルビ:愛【め】
水上芙季『水底の月』2016

西友のレジ袋(M)2円なり買うとき今日は怒りが湧いた
染野太朗「詩客」2013-02-22

あなたがせかい、せかいって言う冬の端 二円切手の雪うさぎ貼る
笹川諒『水の聖歌隊』2021


5円


五円玉を糸で吊して壁に貼り船の揺れ見る今日は十五度
森尻理恵 (出典調査中)
 
五円玉 夜中のゲームセンターで春はとっても遠いとおもう
永井祐 
(出典調査中)

断固たる面持ちで五円玉めがけ放尿している「九郎耄碌」
高柳蕗子『回文兄弟』

Jちゃんと舐めし膝の血「十円玉?」「五円玉の味?」舌ひからせて
大野道夫『秋意』


荻野神社賽銭箱に届かない五円玉がきらきら転ぶ
飯沼鮎子『土の色草の色』

ともかくも今の幸せ享受するレジ袋代五円を払って
蒼井杏『瀬戸際レモン』


6~9円


かりかりのコロッケ八円ほくほくと揚がるあがるね箸にはさまれ
加藤治郎『昏睡のパラダイス』1998

1円未満 2021・3・8追加


絵葉書の夢二の猫は出てゆきぬ一銭銅貨の月の出る夜に
橘夏生『セルロイドの夜』

一銭であめ玉三個を買いし日の橋のたもとにありし駄菓子屋
宇佐美ゆくえ『夷隅川【いすみかわ】』

五十銭貰って/一つお辞儀する/盗めば/お辞儀せずともいゝのに
夢野久作『猟奇歌』

0 件のコメント:

コメントを投稿