2021年5月25日火曜日

お金を詠む10 お金(金額なし)

お金


生活がやってきて道の犬猫が差しだす小さく使えないお金
フラワーしげる『ビットとデシベル』2015

たましひがちつとも売れやしない日にあなたがくれたお金を遣ふ
光森裕樹『鈴を産むひばり』2010

夜のひきあけと思うころおい梟がもっとお金が欲しいと鳴けり
石田比呂志『滴滴』1986

おはじきがお金に変わり、ながいながいあそびのはての生のはじまり
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』2015

ジャケットは観音びらき風の中 おかねをもたせてあげたいのです
雪舟えま『たんぽるぽる』2011

お客さんだけどお金ははらってない気分で秋風に当たってる
永井祐『広い世界と2や8や7』2020

たましいを少し削ってなめてみるお金の味に少し似てきた
鳥居萌「本郷短歌」第3号 2014

ちり紙にくるんだお金てのひらにぬくめて帰るふゆのゆふやみ
東直子『青卵』2001

川を見ながらラムネを飲んだ睫毛まで白くなりたる祖母のお金で
東直子「歌壇」2012・11

大丈夫花屋に並ぶいろいろの花ならみんなお金で買える
生田亜々子「詩客」2012-09-14

人のために命をかける準備するぼくはスイカにお金を入れて
永井祐『短歌ヴァーサス』11号 2007

海だというものそれからお金というもの これからがレベルEだ
瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016

水に火がぶどうのように実ってもテレビの中ではお金も買える
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

この先はお金の話しかないと気づいて口を急いでなめる
虫武一俊『羽虫群』2016

アルバイトの感想聞けばまだお金もらってないからわからぬと言う
俵万智『かぜのてのひら』1991

日に一度お金のことを考える飼い犬の目を見つめるように
木村友 2017・11東京文フリフリーペーパー第63回角川短歌賞予選通過作より

一年はレシートの中早く過ぐ、お金を使っただけの一年
花山周子『屋上の人屋上の鳥』2007

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