2021年5月1日土曜日

ミニ44 セロテープなど

「テープ」といったら、何を思い浮かべるでしょう。


1 粘着テープ類(セロハンテープ・ガムテープなど)
2 紙テープ(船出、ゴール、誕生会の装飾など)
3 録音・録画用テープ 今はほとんど使われず、別のメディアにかわっている。

そのほかにもあるでしょうが、今日は、上記のなかで一番身近な粘着系テープを詠む歌を集めてみました。

■セロハンテープ

まずはセロテープ。
そう多く詠まれているわけではないけれども、いろいろな特徴が捉えられています。

あめいろの空をはがれてゆく雲にかすかに匂うセロファンテープ
笹井宏之『てんとろり』2011

はみだせるセロハンテープの裏がはに濁つた指紋の白さが残る
大西久美子『イーハトーブの数式』2015

すごく言いたかったんだね透明なテープの端を見つけたみたい
山階基『風にあたる』2019

民衆は感謝をしない すり切れた地図はテープの光がつなぐ
千種創一『砂丘律』2015

ゆっくりとうすく光を引き伸ばし銀のひかりで切るセロテープ
鳥居『キリンの子』2016

取りこんだ布団の上であすの皮膚みたいなセロハンテープを剥がす
藤本玲未『オーロラのお針子』2014

セロテープ引きだし続けているような雨音 渋谷は空に傾く
千葉聡(出典調査中)

セロテープを引いては切っての音がする仕切りの向こう昼からずっと
相原かろ『浜竹』2019

セロテープカッター付きのやつを買う 生きてることで盛り上がりたい
永井祐『広い世界と2や8や7』2020

いつまでを友だったのかセロテープ透ける向こうが学生時代
小島なお『展開図』2020

セロテープで直した眼鏡を掛け続けクラスメートを愛するタイプ
穂村弘『ラインマーカーズ』2003


■ガムテープ


ガムテープを詠む歌はまだ少ないようです。

(上)と(下)のこくごの本を(下)に入る日ガムテープで一冊にした
伊舎堂仁『トントングラム』2014

ガムテープひときれ壁に残る夜を印刷室に淡き光源
田中濯『氷』2014
 
ガムテープ四本、養生テープ五本、ただ一日で使い切るなり
千葉聡『海、悲歌、夏の雫など』2015

■その他の粘着系テープ


記憶をむすぶ場所には白いTの字のテープが貼られここからは水
東直子「かばん」2001・12

メンディングテープで掲示してあった無知を回収して参ります
柴田瞳(出典調査中)

一切のかざおとの止む場所へきてまぶたの裂け目に貼るキズテープ
狩野悠佳子「早稲田短歌」43号 2014/3 


上達しないいくつかのこと真っ直ぐにタトルテープを貼りつけるとか
法橋ひらく 『それはとても速くて永い』2015
※タトルテープ=信号を記録した磁気テープ。たとえば図書館の蔵書に貼り、感知マーカーで未手続き持出しを防止する

まなぶたを白きテープで留められし人のからだに影おとす人
木村友「かばん」2018/6

※死化粧で、ひらいてしまっている目を閉じさせるためにテープでとめることがあるというが、そういう処理をされている遺体だろうか。


このように、セロテープ等はけっこう詠まれている。
がまだまだ〝詠みしろ〟があるように思える。

なお、短歌では上記のようにときどき見かける題材で、川柳でも見かけるのだが、俳句ではなぜなのか不思議なほど詠まれていない。

※セロテープ・セロハンテープは、私の俳句データベース(約32000句)のなかに1句もなく、現代俳句協会のデータベース(収録句数不明)にもたった1句しかなかった。



0 件のコメント:

コメントを投稿