2021年5月7日金曜日

ミニ46 さいころ

ピックアップ


サイコロを作る機械を壊したらサイコロになりかけが溢れ出す
穂村弘「小説すばる」2012・1

さいころにおじさんが住み着いている 転がすたびに大声がする
笹井宏之『てんとろり』2011

ネクタイのサイコロ模様をはずませて人近づいてくるティールーム
俵万智『チョコレート革命』1997

鳥たちは遊びのやうに北を指しわれにちひさき骰子残れり
ルビ:骰子【だいす】
水原紫苑『びあんか』1989



さいころの詩歌的なイメージといえば、

双六の賽の禍福のまろぶかな
久保田万太郎

みたいな感じが順当ではないでしょうか。

短歌ではどう詠まれているのか。
やっぱ、禍福がまろんで、いっきに人生が変わるとか、運に翻弄されるとか、そういうことかしら?

というわけで、「さいころ」を詠み込んだ短歌を探してみました。
自分の予見を超える歌に好感を抱くのが私の性分。
上にピックアップしたのはそういう歌です。

ただし、私の予見に当てはまったかどうかなんて、良し悪しとぜんぜん関係ないです。

以下の歌もご紹介します。

「さいころ」という題材は、ドラマっぽい緊張感+理屈っぽい文脈を誘発する傾向があるのかな?


賽に出た「自由」を握り締め爺が見送るフェリー仙台ゆき
蔦きうい「レ・パピエ・シアン」75号 2005.4

賽の目の3の向かうに4のありて神の遊びに転がるまでよ
ルビ:3(産) 4(死)  遊(すさ)
伊波虎英 「短歌人」2016年3月号

骰子ヲフツテ出タ目ノ十倍ガアナタノ不快度数ニナリマス
西田政史 『ストロベリー・カレンダー』

骰子を振ればころりと転がって賽の河原の石ころである
ルビ:骰子(さいころ)
石田比呂志 『邯鄲線』2010

自らを骰子として一擲す 目をイカサマなくらいに開けて
中島裕介『Starving Stargazer』2008

サイコロを振ればねっとり落ちてくるゾンビの番は毎回ウケる
ナイス害 サイト「うたの日」より

思い出すために振ってるサイコロの1の目、そんな国もあったね
工藤吉生 作者ブログより

サイコロを振るのは神で在ることを与へられつつ在るこの世界
香川ヒサ『ヤマト・アライバル』2015


このほか、俳句・川柳も少しあげておきます。

俳句

美しきサイコロほどの火事ひとつ
佐々木秀昭 『隕石抄』2008

骰子の一の目赤し春の山
波多野爽波 『骰子』


サイコロの目の出る方に雪ばんば
柿本多映 web「週刊俳句」2013/12/15

川柳

言い出せずサイコロ一つが病んでいる
山田楓子 月刊「おかじょうき」2006・04

右側通行 サイコロを売る店が並び
中村冨二『千句集』

月光や いかさま賽は亡母に返す
定金冬二『無双』

サイコロが止まってぐらり動く水
藤田めぐみ 「おかじょうき」2013・10

さいころの6がでるまで金曜日
樋口由紀子『めるくまーる』2018

四進む誰かが賽を振ったので
鳴海哲子「おかじょうき」2001・02


なお偶然見つけましたが、こういう詩もありました。

十年      安西冬衛 『軍艦茉莉』

十年。白い陶器製の骰子に似た世界。不潔よりも不潔な清浄。










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