鳥たちは遊びのやうに北を指しわれにちひさき骰子残れり
ルビ:骰子【だいす】
水原紫苑『びあんか』1989
さいころの詩歌的なイメージといえば、
双六の賽の禍福のまろぶかな
久保田万太郎
というわけで、「さいころ」を詠み込んだ短歌を探してみました。
自分の予見を超える歌に好感を抱くのが私の性分。
上にピックアップしたのはそういう歌です。
ただし、私の予見に当てはまったかどうかなんて、良し悪しとぜんぜん関係ないです。
以下の歌もご紹介します。
「さいころ」という題材は、ドラマっぽい緊張感+理屈っぽい文脈を誘発する傾向があるのかな?
賽に出た「自由」を握り締め爺が見送るフェリー仙台ゆき
蔦きうい「レ・パピエ・シアン」75号 2005.4
ルビ:3(産) 4(死) 遊(すさ)
伊波虎英 「短歌人」2016年3月号
西田政史 『ストロベリー・カレンダー』
ルビ:骰子(さいころ)
石田比呂志 『邯鄲線』2010
中島裕介『Starving Stargazer』2008
サイコロを振ればねっとり落ちてくるゾンビの番は毎回ウケる
ナイス害 サイト「うたの日」より
思い出すために振ってるサイコロの1の目、そんな国もあったね
工藤吉生 作者ブログより
サイコロを振るのは神で在ることを与へられつつ在るこの世界
香川ヒサ『ヤマト・アライバル』2015
このほか、俳句・川柳も少しあげておきます。
俳句
美しきサイコロほどの火事ひとつ
佐々木秀昭 『隕石抄』2008
骰子の一の目赤し春の山
波多野爽波 『骰子』
柿本多映 web「週刊俳句」2013/12/15
川柳
言い出せずサイコロ一つが病んでいる
山田楓子 月刊「おかじょうき」2006・04
右側通行 サイコロを売る店が並び
中村冨二『千句集』
月光や いかさま賽は亡母に返す
定金冬二『無双』
サイコロが止まってぐらり動く水
藤田めぐみ 「おかじょうき」2013・10
さいころの6がでるまで金曜日
樋口由紀子『めるくまーる』2018
四進む誰かが賽を振ったので
鳴海哲子「おかじょうき」2001・02
なお偶然見つけましたが、こういう詩もありました。
十年 安西冬衛 『軍艦茉莉』
十年。白い陶器製の骰子に似た世界。不潔よりも不潔な清浄。
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