2021年5月23日日曜日

ミニ50 消しゴム


「消しゴム」を詠む短歌はけっこうありますが、短歌の中では何を消しているのか、調べたらおもしろそう。
 --というわけで集めてみました。

どんどん並べちゃいます。あきたところで離脱してください。
ただし、下の方には俳句・川柳もありますので、興味のある方はお見逃しなく。

「とてつもないけしごむかすの洪水が来るぞ 愛が消されたらしい」
笹井宏之『ひとさらい』2011

ひきだしに産みつけられて寄りそえるちびえんぴつとちびけしごむと
佐藤弓生『薄い街』2010

消しゴムも筆記用具であることを希望と呼んではおかしいですか
岡野大嗣『サイレンと犀』2014

いつぶりか消しゴムに触れ消しゴムの静けさが胸へひろがる火曜
柴田葵『母の愛、僕のラブ』2019

カップ麺の蓋に消しゴム乗せている 君のメールを待つ春の夜
喜多昭夫『君に聞こえないラブソングを僕はいつまでも歌っている』2014

落ちてしまった消しゴムをずっと思ってる時間さびしい机のように
渡辺良『日のかなた 臨床と詩学』2014

竜と星つめたいものの象に抜く消しゴムなればほのかににおう
井辻朱美『クラウド』2014

はるの雲なつの雲あきの雲ふゆの雲、消しゴムが見つかりません
小島ゆかり『泥と青葉』2014

もう二度と飛ばない(飛べない)ことにして床に貼りつく消しゴムひとつ
千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』2004

隠したまま返さなかった消しゴムのことなど 校舎は建て替えられて
齋藤芳生『桃花水を待つ』2010

臼歯ほどの消しゴムを取りに少年は小教室に戻りて来たり
楠誓英『青昏抄』2014

向日葵のつづく坂道あの夏は昭和の消しゴムでしか消せない
中畑智江『同じ白さで雪は降りくる』

消しゴムを拾ってあげただけなのに完璧な笑顔をされて泣きそう
谷川電話「かばん新人特集号」2015/3

消しゴムを八十円で新調す 時計のベルト変えて二学期
俵万智『サラダ記念日』1987

書くことは消すことなれば体力のありさうな大きな消しゴム選ぶ
河野裕子(出典調査中)

消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなってゆくのだ
萩原慎一郎『滑走路』2017

消しゴムでこすったような星空のあそこがアンドロメダ星雲です
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010

台風の迫る夜明けにシャープペンシルの消しゴム激しく使う
穂村弘『水中翼船炎上中』2018

食肉目ネコ科トラネコその四肢に肉球といふ消しゴムをもつ
西田政史『ストロベリー・カレンダー』1993

登校日 すべすべした手でかえされたMONO消しゴムのOが●
伊舎堂仁『トントングラム』2014

消しゴムで消すようにはいかぬこの国の一九三七年のつまづき
久々湊盈子『麻裳よし』2019

消しゴムの角が尖っていることの気持ちがよくてきさまから死ね
加藤治郎(出典調査中)

消しゴムの完き消しゴムの影ありぬ「白桜集(はくあうしふ)」を読みゆく春夜
ルビ:完(また)
高野公彦『水苑』2000  ※『白桜集』は与謝野晶子遺詠集

消しゴムの孤島に犀を飼わんとす言語漂流記をなつかしめ
寺山修司『月蝕書簡』(未発表歌集)2008


もっとたくさんありますが、短歌はこのへんにして、
以下、俳句と川柳を、私の好みでピックアップします。


俳句

消しゴムの消屑をわが掃納め
鷹羽狩行(出典調査中)

消しゴムの弾力冬の父の口
原田浩佑 第4回芝不器男俳句新人賞 応募作品 坪内稔典奨励賞 

消しゴムの腹より折るる遅日かな
五十嵐秀彦(出典調査中)

ささくれだつ消しゴムの夜で死にゆく鳥
赤尾兜子『虚像』1965

秋近き消しゴム急に痩せにけり
松浦敬親(出典調査中)

消しゴムや麓の川を川蒸気
攝津幸彦(出典調査中)

掃初の先に消ゴムまろび行く
秋元不死男
(出典調査中)

筆入れに消しゴム匂ふ鹿の声
佐々木六戈
(出典調査中)

朧夜の消しゴムで消す我が名かな
有馬朗人
(出典調査中)

消ゴムの滓みな長き避寒かな
四ツ谷龍(出典調査中)

川柳


消しゴムを持ってひたすら父を追う
定金冬二『無双』1985

消しゴムを半分持っていく未来
真美 第19回杉野十佐一賞 
2015・1

消しゴムの滓は一揆を企てる
岩根彰子
第19回杉野十佐一賞  2015・1

消しゴムは空白を書くためにある
松木秀(出典調査中)

大きな消しゴムが眠っている空
山本忠次郎 「バックストローク」13号

蝶が来るこの消しゴムを動かしに
倉本朝世『なつかしい呪文』2008

消しゴムのカスは無口なままである
たなかまきこ 
おかじょうき月例句会 2001・7

消しゴムのカスを丸めて作る オトナ
Sin  月刊「おかじょうき」
2009・7

消しゴムが廊下の隅に落ちている
三上玉夫 月刊「おかじょうき」2011・3


いかがでしたか?

1 件のコメント:

  1. 出典調査中とある松木秀さんは札幌川柳社でお名前を拝見したことがありますが今は短歌メイン?私は「きやり」でもう接点はありません。

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