2022年4月27日水曜日

ちょびコレ1 一反もめん

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、

「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)

■一反もめん

「一反もめん」が、どんなふうに歌に詠まれるのか、着想のしかたに興味があって集めてみた。

3首しかないので「レア鍋」に入れようかと思ったが、そもそも歌数が多いとも思えないから「レア」とする意味がない。

本来の意味の一反もめん(A)と、妖怪のそれ(B)(「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくるので親しまれている)と、両方あり得る。判別しにくいが「飛ぶ」と書いてあれば後者だろう。


短歌

垂乳根のははわだかまりほぐせずに押し入れの中で一反木綿
山下一路『スーパーアメフラシ』2017

老いてなおうさぎは白きままにして一反木綿のごとくのびおり
花山周子『林立』2018

未来にはいまだ形のなきものを一反木綿の飛びさうな空
川野里子『硝子の島』2017


俳句

木枯や一反もめんぼろぼろに
高橋龍『句控 上屋敷』2018

一反木綿雨後をふくらむジャック&ベティ
野間幸恵


川柳

あんたこそいったんもめんになっちゃえば
なかはられいこ


上記のなかでは川柳の「あんたこそ……」が、いちばん「一反もめん」という語にそなわったどことなく雰囲気(A 白い、長い、きまじめ)+(B 鬼太郎の仲間妖怪で空を飛ぶがあまり強くないユーモラスな姿)を生かしていると思った。

「あんたこそ」とは、なんと言われての反論だろう。
わからないが、この反論には、窮鼠猫を噛むというほどの威力がないところが味わいだと思う。
優しくて気の弱い子が半泣きで
せいいっぱいで言い返したようなセリフ。
でも人が良すぎて、この程度になっちゃったみたいな、威力のなさ。
だから相手も「なんだそりゃ」と少し面食らっていそうである。

2022・4・27

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