2022年5月10日火曜日

ミニ67  鳩の声(オノマトペ)

鳥の鳴く声はいろいろなオノマトペで歌に詠まれる。

今回は鳩の声のオノマトペ歌を集めてみた。
(オノマトペ以外の鳩の声の歌はこちら)

(「鳩」の文字を含む歌で、鳩の声らしい「ぽっぽ」などのオノマトペの文字列のある歌を検索した。
その方法で以下の歌を見つけたが、独創的なオノマトペは検索しにくいので、見落としがあると思う。)


日もすがらひと日監獄の鳩ぽつぽぽつぽぽつぽと物おもはする
ルビ:監獄【ひとや】
北原白秋『桐の花』1913

来て見れば監獄署の裏に日は赤くテテツプツプと鳩の飛べるも
北原白秋『桐の花』1913

ツチヤクンクウフクと鳴きし山鳩はこぞのこと今はこゑ遠し
土屋文明『山下水』1948

土鳩はどどつぽどどつぽ茨咲く野はねむたくてどどつぽどどつぽ
河野裕子『ひるがほ』1975

斑鳩きてぽぽうと鳴けば幾時代過ぎたるならむ頬づゑをとく
ルビ:斑鳩(いかる)
川野里子『五月の王』1990

山鳩のこゑに似るとふ日本語よほーほろほーほろ愛し日本語
ルビ:愛【かな】
小島ゆかり 『ヘブライ暦』1996

れれ ろろろ れれ ろろろ 魂なんか鳩にくれちゃえ れれ ろろろ
加藤治郎『昏睡のパラダイス』1998
(これは厳密にいって鳩の声じゃないかも)

電線に逆光の鳩一羽ゐてポーポーポポーが空に吸はるる
ルビ:空【くう】
小潟水脈『空(くう)に吸はるる』2003

ほうと鳴きほうほうと鳴く山鳩はみづからに命を絶つこと知らず
外塚喬『漏告』2007

ろうすくう、ろうすくうると啼きながら飛び立つ鳩の群れに混じりぬ
中沢直人『極圏の光』2009

山鳩のでいでいぽぽと啼くこゑのあけがたはみえぬ巡礼のゆく
渡辺松男『蝶』 2011

あさけよりも息ぐるしくも山鳩のぶふばふうぼぼぐふばふうぼぼ
渡辺松男『雨(ふ)る』2016

東洋の朝の果たてのひだまりにポオクルックポオ鳩の九重奏
ルビ:九重奏【ノネット】
富田睦子(出典調査中)

雉鳩のほうほうほろと鳴くこゑに冬の曇りは繭ごもりたり
影山一男(出典調査中)




●変わったものを発見!


春風のなかの鳩らが呟けりサリンジャーは死んでしまった
小島なお『サリンジャーは死んでしまった』2011




●オマケ 鳴く声以外の鳩のオノマトペ

良きことのあるとぞ鳩ら向きかふるわつしよわつしよと桃色の足
米川千嘉子 『一葉の井戸』2001

鳩の足赤いまばらな人影のなかをひたひたひたひたあかい
本田瑞穂『すばらしい日々』2004

体温の高き生き物ふくふくと鳩は廃ビルに巣をかけ殖える
齋藤芳生『桃花水を待つ』2010

次々とお墓にふれる子どもらの鳩の部分がふぁーんとひかる
笹井宏之 『ひとさらい』2011

ほろほろと日照雨に濡れて鳩あるく鳩はピカソに愛された鳥
小島なお 『展開図』2020

青虹のうなじ光りつつどの鳩もびくりびくりとすぐに驚く
小島ゆかり (出典調査中)


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