2022年5月10日火曜日

ちょびコレ6 おーい

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、


「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)

■ おーい

「老い」という言葉は、なんだか重い人生を背負ってかがむような、老い縮むような語感である。
「おーい」と伸ばせば、背筋が伸びて明るい感じになるよね。

それはあんまり関係ないけれど、
今回は、「おーい」という呼びかけを詠み込んだ短歌を検索した。
11首。けっこうあるなあ。


透明な肉片、おおーいでてこいよ君と余白を嗅ぎたい
江田浩司(出典調査中)

犬の名を呼べども虚空8月の「さくらさくらさくらおーい!」
杉山モナミ ブログ「b軟骨」2010/11

オンライン舞台のラストに「おーい!」×「おーい!」 オハナシのせいにして手を振る
杉山モナミ 「かばん」2021・11

何年ぶりだろう活惚 おーいおーい記憶の井戸ゆ顕つ太鼓持ち
ルビ:活惚(かっぽれ)  顕(た)
佐佐木幸綱 『はじめての雪』

パソコンの前でときをり揺れながらおーいおーいとお茶に呼ばるる
田村元『北二十二条西七丁目』2012

あたしまだ青春するよ おーいおーい、そちらはいかが 返答はない
柴田瞳(出典調査中)

どの部屋を歩いてみてもどこにもいないおーいと呼んでも答えてくれない
加藤克己『游魂』

おーいと呼んでこたえなくふりかえり顔みせくるることさえあらぬまひるわが庭
加藤克巳『游魂』

どのように呼んでも返事のない雲は朝の息子のようなり おーい
田中教子『中つ國より』2013

おーいそこの後頭部たちが青空を見上げるような一語放てり
棉くみこ「かばん」時期不明

スカイプに現れるとき青リンゴみたいな顔でおーいと言う人
中山かれん「外大短歌」7号

俳句
おーいおーい命惜しめといふ山彦
山川蝉夫(高柳重信)(山川蝉夫句集補遺句集以後)

川柳
オーイオーイと叫びつづけている今も 松永千秋

雲  山村暮鳥

おうい雲よ
ゆうゆうと
馬鹿にのんきさうぢやないか
どこまでゆくんだ
ずつと磐城平の方までゆくんか 


あんまりコメントを思いつかないのはなぜだろう。
「おーい」という呼びかけは、ふつう、遠い相手への呼びかけである。
歌などには、その相手に届かない感じで詠まれることが多いような気がしている。
また、相手がばくぜんとして、時空を超えて呼びかけだけがどこかへ飛んでいく感じでもある。漫画なら、「おーい」という文字が空を飛んでいくように描くだろう。

2022・5・10

2024・6・30追記
漫画の「おーい」はうまく書けなかったが、
こんなのどうでしょう? →




0 件のコメント:

コメントを投稿