2022年5月17日火曜日

ちょびコレ8 のんのん

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、

「レア鍋賞」ほど少なくもない……、

そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)

■ のんのん

「のんのん」というオノマトペ、どうも意味が曖昧だ。
お祈りの対象を「のんのんさま」という場合があり、仏壇に手を合わせるときなどに、子どもに「のんのん」と教える。
この「のんのん」は、お祈りの動作と祈る心のさまを表しているだろう。

よもぎは白い葉裏をみせて水に浮く のんのんさまのにおいのお部屋
東直子『青卵』

ネット辞書を調べてびっくり。
以下のように、いっぱしの意味があったのに、私がちっとも知らなかったということに。
むちむちの無知。

●精選版 日本国語大辞典「のんのん」の解説
のんのん〘副〙 (「と」を伴って用いることもある)
① 深い川や大量の水がながれるさまを表わす語。
※玉塵抄(1563)四「ふかい水は声ものんのんと流れておともせぬぞ」
② 勢いのよいさまを表わす語。
※思ひ出(1933)〈太宰治〉一「裏の空屋敷には色んな雑草がのんのんと繁ってゐたが」
※大菩薩峠(1913‐41)〈中里介山〉東海道の巻「あとはひっそりとして百匁蝋燭の炎がのんのんと立ちのぼる」
のんのん〘名〙
① =のの
② ともしび、あかり、灯明、また、それらが明るく燃えることをいう、幼児語。

短歌の用例をさがしてみた。

のんのんとわたしのなかに蠢いている大阪よ木津川安治川
江戸雪『昼の夢の終わり』

おお確かに! これは水流の勢いのオノマトペだ。

来世など知らず解せず土は土春のんのんと迫り来るなり
松木秀『RERA』
花冷えの夜にのんのんずいずいと飲みてあやしき混沌に入る
傍点:のんのんずいずい
高野公彦『水苑』2000

この2首の「のんのん」も、勢いを表していると思う。
じゃあこれは?

でこぼこの花梨頭といふ言葉 のんのんとしてくわりんは実る
ルビ:花梨頭【くわりんあたま】
小島ゆかり『憂春』

これは花梨が実る生命力の勢いのよさだけでなく、「灯る」感じも混ざった表現だと思う。
祈りの意味も混じっているかな。

ところで、ドリフターズの「いい湯だな」の囃子言葉に「ビバノンノン」というのがある。
「ビバ」はおそらくイタリア語やスペイン語の「VIVA」(万歳)みたいな感じだが、「ノンノン」は何だろう。
否定の「ノン 」ではなんだか意味が通らない。
たぶん「のんびり」の「のん」だ。
それなら「のんびり万歳」になる。


2022・5・17


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