2022年8月10日水曜日

随時更新 ちょびコレ4 2022/7・8・9

 ここは、日々なんとなく見つけたちょっとした短歌コレクションの置き場です。


ミニアンソロジーにしたいけれど、そこまでの歌数がない。でも、レア鍋賞ほど少ないわけでもない……。

そんな感じのときここに書いておきます。

■鳩の足 2022.8.9

鳩と言えば声を詠む歌が多いが、足を詠む歌もよく見かけるような気がします。


良きことのあるとぞ鳩ら向きかふるわつしよわつしよと桃色の足
米川千嘉子 『一葉の井戸』

わがめぐり次々と鳩が降り立ちて赤き二本の足で皆立つ
奥村晃作『鴇色の足』

鳩の足赤いまばらな人影のなかをひたひたひたひたあかい
本田瑞穂『すばらしい日々』

殺羽根の管(にをさめて白鳩の足に結ふべき小き文よ
ルビ:殺羽根【そぎはね】管【くだ】白鳩【しらはと】結【ゆ】小【ちひさ】文【ふみ】
森鴎外 「明星」M41・1

ひとあしずつあゆむさだめのハトたちが地球の砂利をまたぎてゆくよ
井辻朱美(出典調査中)

鳩の脚の寒さへ贈るくつしたの打ち棄てられて冬がふかまる
内山晶太「詩客」2017-04-08


片足の鳩

跛脚(かたあし)の鳩がきのふよりわが庭に雌をともなふよき転機あれ
ルビ:跛脚【かたあし】
斎藤史『風に燃す』

餌ひろう一本脚の鳩がいてじれったくなればすぐに飛びたつ
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』

片脚のない鳩のいた野草園 肉体という勇気を思う
小島なお『展開図』


■泳法 2022.8.9

泳法名のある短歌を探していてこの歌をみつけました。

なまえさえしらないかたち抱きしめるキッチンまでは背泳ぎでいく
杉山モナミ 『ヒドゥン・オーサーズ 』2017(Kindle 19人の作品集)


他にもけっこうたくさんあるので、各泳法ごとに少しずつピックアップします。

背泳

やがて来るピリオド思い背泳ぎで見送っている夜の飛行機
俵万智 『チョコレート革命』1997

父さんが死んだら一緒に住もうよと背泳ぎに来る母の言葉が
平山繁美『手のひらの海』2019


クロール

さようならいつかおしっこした花壇さようなら息継ぎをしないクロール
山崎聡子『手のひらの花火』2013

梅雨空のプールの水を割つてゆくあなたの凍るやうなクロール
林和清『匿名の森』2006


平泳ぎ

平泳ぎ競ふあたまが描きゆくサインカーブとコサインカーブ
光森裕樹『鈴を産むひばり』2010

平泳ぎで七夕飾り掻き分けて老婆になってもわたしだろうな
工藤玲音『水中で口笛』


そのほか

ソラリスの海で犬かきする夜の母とか星がわんさか浮かぶ
柳本々々「詩客」2018-05-05

泳ぐとき影と離れるからだかなバサロキックでめざす大空
光森裕樹『鈴を産むひばり』2010

バタフライ・ドルフィン・キックで切ってゆく水と光のバウムクーヘン
穂村弘『シンジケート』1990

■大仏 2022・8・7 

大仏のマトリョーシカは君のため原寸大でわかりあうため
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』


○大仏ってなんとなくちょっと好きなので検索してみました。

[検索文字列:大仏・だいぶつ・鎌倉+仏orほとけ・かまくら+仏orほとけ・奈良+仏orほとけ]

本日の全短歌データ122956首の中で14首みつけました。
上記はそのなかでイチオシ。大仏という題材の魅力のひとつは物体としての存在感だと思いますが、この歌はその捉え方が特に新鮮。

○この検索で見つけた歌の中でもっとも有名なのはおそらくこの歌。

鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな
ルビ:御仏【みほとけ】なれど釈迦牟尼【しゃかむに】は美男【びなん】
与謝野晶子『恋衣』


以下いろいろな大仏の歌。与謝野晶子の歌に応答するようなうたがあります。また背中の窓も注目ポイントのようです。


かまくらの大きほとけは青空をみ笠と著つつよろづ代までに
著【き】
伊藤左千夫『左千夫歌集』1928 

葉がくれの蝉の声やみて大仏の御顔をてらすゆふづく日かな
木下利玄(出典調査中)

目路さむき冬田向うの山もとに夕陽を浴びたる大仏殿の屋根
木下利玄(出典調査中)

新芽立つ谷間あさけれ大仏にゆふさりきたる眉間の光
ルビ:新芽【にひめ】
中村憲吉『林泉集』

なでしこや大仏道の道ばたに君が捨てたる貝がらの咲く
吉井勇(出典調査中)

あたたかく大仏殿の鴟尾に照る陽よこの先のことはわからぬ
永井陽子『てまり唄』1995

かまくらやみほとけなれど釈迦牟尼はパンチパーマでピアス痕あり
望月裕二郎『ひらく』2009

さほどまで美男にあらず鎌倉の大仏さまは喰はせものなり
小熊秀雄(出典調査中)

横顔は多少美し大仏の背中に窓があいてゐるとは
小熊秀雄(出典調査中)

大仏の背中に二つ窓があるあれは翼の生えてゐた痕
大西久美子『イーハトーブの数式』

鎌倉のだいぶつさまの背にある窓ひらきたし頰杖つきたし
ルビ:背【せな】
北山あさひ『崖にて』2020

慣性の法則はもう壊れたし動いていいよ奈良の大仏
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013





俳句もいくつかありましたが、川柳の次の句が特に印象に残りました。

大仏の右の耳から鳩が出る
内田真理子『ゆくりなく』2010




右は冗談で書いてみた絵。




悪乗りしてもう1枚! 泳げ大仏君


左はなんとなく描いてみた絵
手が難しい。いつか上手になったらかきなおしたい。

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