「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、
「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。
(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。
(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)
■鳩の足
鳩と言えば声を詠む歌が多いが、足を詠む歌もよく見かけるような気がして検索すると、けっこうぞろぞろと出てきた。
鳩はどんな鳥ですか、特徴は、と聞かれたら、たいがいは灰色、大きさは20センチぐらい、ククゥククゥとくぐもった声、しばしば公園や駅前など人の多い場所に群れている、みたいなことをあげるだろうか。
じゃあ鳩の足はなぜ詠まれるのか。
細い小枝のような足で、足取りがけなげな感じがする。冬は寒かろうと思うのも自然だろう。
ただし、小枝のような足は鳩に限ったことではない。人間の前で歩き回ってみせる鳥はあんまりないから、結果として、しばしば鳩の足が人の目にとまるのかもしれない。
良きことのあるとぞ鳩ら向きかふるわつしよわつしよと桃色の足
米川千嘉子 『一葉の井戸』
わがめぐり次々と鳩が降り立ちて赤き二本の足で皆立つ
奥村晃作『鴇色の足』
鳩の足赤いまばらな人影のなかをひたひたひたひたあかい
本田瑞穂『すばらしい日々』
殺羽根の管にをさめて白鳩の足に結ふべき小き文よ
ルビ:殺羽根【そぎはね】管【くだ】白鳩【しらはと】結【ゆ】小【ちひさ】文【ふみ】
森鴎外 「明星」M41・1
ひとあしずつあゆむさだめのハトたちが地球の砂利をまたぎてゆくよ井辻朱美(出典調査中)
鳩の脚の寒さへ贈るくつしたの打ち棄てられて冬がふかまる内山晶太「詩客」2017-04-08
片足の鳩
鳩の足を詠む歌を探すと、片足の鳩を詠む歌が見つかる。
跛脚の鳩がきのふよりわが庭に雌をともなふよき転機あれルビ:跛脚【かたあし】斎藤史『風に燃す』
餌ひろう一本脚の鳩がいてじれったくなればすぐに飛びたつ杉崎恒夫『パン屋のパンセ』
片脚のない鳩のいた野草園 肉体という勇気を思う小島なお『展開図』
鳩は、釣人の残した糸が足に絡まって、足を失うことがある。
実際に見たことがある。
たまたま立ち寄った公園の池のほとりに多くの鳩がいて、半分ぐらいが片足だった。ほんとうにかわいそうだった。
餌がほしくて近くに来たので、とってやろうと手を出すと逃げてしまった。
片足があるうちはまだいい。両足をうしなって横たわっているものもいた。
糸を捨てていった釣人に、この光景を見せたい。
目に入った範囲の糸だけでも片付けたかったが、そんななまやさしい量ではなかった。あとから公園あてにハガキで投書した。
2022.8.9
鳩と言えば声を詠む歌が多いが、足を詠む歌もよく見かけるような気がして検索すると、けっこうぞろぞろと出てきた。
鳩はどんな鳥ですか、特徴は、と聞かれたら、たいがいは灰色、大きさは20センチぐらい、ククゥククゥとくぐもった声、しばしば公園や駅前など人の多い場所に群れている、みたいなことをあげるだろうか。
じゃあ鳩の足はなぜ詠まれるのか。
細い小枝のような足で、足取りがけなげな感じがする。冬は寒かろうと思うのも自然だろう。
ただし、小枝のような足は鳩に限ったことではない。人間の前で歩き回ってみせる鳥はあんまりないから、結果として、しばしば鳩の足が人の目にとまるのかもしれない。
米川千嘉子 『一葉の井戸』
わがめぐり次々と鳩が降り立ちて赤き二本の足で皆立つ
奥村晃作『鴇色の足』
鳩の足赤いまばらな人影のなかをひたひたひたひたあかい
本田瑞穂『すばらしい日々』
殺羽根の管にをさめて白鳩の足に結ふべき小き文よ
ルビ:殺羽根【そぎはね】管【くだ】白鳩【しらはと】結【ゆ】小【ちひさ】文【ふみ】
森鴎外 「明星」M41・1
ひとあしずつあゆむさだめのハトたちが地球の砂利をまたぎてゆくよ
井辻朱美(出典調査中)
鳩の脚の寒さへ贈るくつしたの打ち棄てられて冬がふかまる
内山晶太「詩客」2017-04-08
片足の鳩
跛脚の鳩がきのふよりわが庭に雌をともなふよき転機あれ
ルビ:跛脚【かたあし】
斎藤史『風に燃す』
餌ひろう一本脚の鳩がいてじれったくなればすぐに飛びたつ
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』
片脚のない鳩のいた野草園 肉体という勇気を思う
小島なお『展開図』
実際に見たことがある。
たまたま立ち寄った公園の池のほとりに多くの鳩がいて、半分ぐらいが片足だった。ほんとうにかわいそうだった。
餌がほしくて近くに来たので、とってやろうと手を出すと逃げてしまった。
片足があるうちはまだいい。両足をうしなって横たわっているものもいた。
糸を捨てていった釣人に、この光景を見せたい。
目に入った範囲の糸だけでも片付けたかったが、そんななまやさしい量ではなかった。あとから公園あてにハガキで投書した。
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