「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。
(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)
■星になる・星になれない
寺山修司『寺山修司青春歌集』
コレクションの発端は、上記の歌を見て、「星にならない・なれない」と詠む歌がときどきあると思ったこと。
びかびかの星にもなれぬ水煙をあげて来たりし象は倒れき
山下一路『あふりかへ』1976
霜は花と咲きて凍れる冬の詩を星とならざる射手にささげむ
三枝昻之『やさしき志士たちの世界へ』
春の星座になりそこなった白熊が眠るよ春の星座の下で
ひぐらしひなつ『きりんのうた。』2003
笑い上戸は星になりそびれるんだ親知らずなんか抜かなくていい
瀬戸夏子『ずぶ濡れのクリスマスツリーを』
次の歌は「星」でなくて「星間物質」。
にんげんは爆発しないで死んでいく星間物質になれない理由
ルビ;星間物質【ダークマター】
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』
南の島で父の落とした勲章をボクが拾う死んでも星は増えないのに
山下一路『世界同時かなしい日に』(第3歌集2024年12月刊行予定)
ここでハタと、
「星にならない・なれない」というのは例外であり、「星になる」がモトであると気づきました。
「星にならない・なれない」を理解するには「星になる」を理解しなくちゃ、ですよね。
というわけで、順序がおかしいけれど「星になる」も探してみました。
このうへもなき行のただしさいつか空にゆきて星となりたる
ルビ:行【おこなひ】
前川佐美雄『植物祭』
人間が死んだら星になるのなら夜でも空は明るいはずだ
松木秀『RERA』
洗いすぎてちぢんだ青いカーディガン着たままつめたい星になるの
北川草子『シチュー鍋の天使』
星となりて逢はむそれまで思ひ出でな一つふすまに聞きし秋の聲
与謝野晶子『みだれ髪』
想われているかも知れぬわがからだ星となり極北の空よぎり飛ぶ
高安国世『北極飛行』1960
沈黙が金になるまで真夜中の長距離バスが星になるまで
植松大雄(出典調査中)
君とゐて日本語の星空となるわが口蓋のプラネタリウム
小川真理子『母音梯形』2002
舞いあがるいちょうの黄が星になる都会の空も僕もだまし絵
るび:黄【きい】
神﨑ハルミ(作者hp)
流星となりて銀河を渡らんと彦星俺は酒をあおりいつ
ルビ:酒【しゅ】
依田仁美『異端陣』2005
うーむ、なんだかまだ考察を加えるほどではないかなあ。
変に中途半端に納得して読んじゃってる気がして、
その理由がわからない……。
2024・8・3
いかがでしょ。
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