高柳蕗子の短歌評論ブログ「ひょーたん」です。 テーマ別短歌コレクション。短歌の評論に関わる雑メモなど。ロビン・D・ギルさんにご協力いただいた狂歌コーナーも。#短歌評論 #高柳蕗子 #ひょーたん
2023年7月2日日曜日
ネプリ初体験 「かばんネプリ2023夏」
うすうす知ってはしたが手にしたことはなかった。
所属誌「かばん」では、
6月号「短歌とネットプリント」という特集に連動し、かばん会員の題詠「紙」をネプリで発行しました。
(私も1首参加してます。)
(画像は読めない程度にぼかしました。)
今回は内輪感があふれた内容ですが、 全国のコンビニ(セブンイレブン・ローソン・ファミマ)で安価で受け取れる、 というのはずいぶんと便利じゃないでしょうか。
ちなみに今回のネプリは A4モノクロ1枚もので、たったの20円でした。
2023年6月28日水曜日
ちょびコレ17 家を壊す+空
ひさしぶりに再開です。
佐藤弓生 『眼鏡屋は夕ぐれのため』
壊されてゆくとき家の内臓が空に呑まれているのが見える
土井礼一郎 『義弟全史』
わが家を壊す朝に散りたまる玻璃あり青き空を映して
佐伯裕子 (出典調査中)
壊さるる空き家のなかの落書きの麒麟があふぐ初めての空
渡辺南央子 『天空のかすみ草』
雲の崖ゆ風なだれ来よ家毀す犯意にわれの革るべし
ルビ:革【あらたま】る
春日井建『青葦』
屋根や天井がなくなるから、空が見える。
今まで屋内にあったものが空にさらされる。
家は生き物に準ずる感じ。魂が昇天する。
とりまとめると、そういう感じであるようです。
「空」と言っていないけれど、次の2首もその仲間。
はじめてのそして最後の夕日浴び解体家屋はからだを開く
勺禰子『月に射されたままのからだで』
空き屋なる家を毀てるふる雨に昭和残像の便器がのぞく
池田裕美子 『時間グラス』
そうなると気になるのは、家を壊す歌で「空」が出て来ない歌です。
どんなことを書くんでしょう?
路地奥の家なれば機械入れられず解体は人の手もて行う
奥村晃作『キケンの水位』
どつしりと大樹のやうに建つ家を壊さむとする重機に礼す
ルビ:礼【ゐや】
大西久美子『イーハトーブの数式』
家ひとつ取り毀された夕べにはちひさき土地に春雨くだる
小池光『日々の思い出』
けふにかけてとり毀す家から忘れずにもちだされる死者のもの
平井弘『振りまはした花のやうに』
壊れたる家を素手もてなほ壊すあの日の父の怖ろしかりき
逢坂みずき『まぶしい海』
なるほど。いろいろある。
「家」を壊すことに「加害」であるような感じは、なんとなく全体として共通している気がします。
2023・6・28
2023・07・07 追加
においごと家屋は解体されてゆく記録されない巣穴の記憶
雛河麦「かばん」202306
*****
2023年6月17日土曜日
短歌による座談会3 おっぱい
そこで、
「短歌さんたちに自発的に参加していただき、
以下の三人半でお迎えする」
という実験的な趣向で、この場を開設いたしました。
・司会
・アシスタント
・鱶助くん(ふかすけ 深読みサポートAI)
+その愛人的ペットの花子
ご注意
歌自身が参加するという設定です。(作者が参加するのではない。)
歌は歌の言葉のみで参加し、自解はしません。
解釈は上記三人半が添える、というスタンスで運営いたします。
では、とざいとーざーい
◆お題 おっぱい
司会「えー、今回のお題は、[おっぱい]といたします。
なぜかというと、ふと目にした歌がそのとき印象深かったのに、一晩寝たらすっかり忘れてしまい、あの歌と再会できないか、との期待からです。」
[乳房][乳首]などはどうします?」
田中教子『乳房雲』2010
司会「なるほど、確かにヒトも動物。すごくベーシックな事実に気付かされますね。」
もし僕が死んだときには棺桶におっぱいを敷き詰めてください
司会「むむ、なるほど、この場合、棺そのものが母の胸。それならベーシックですね。すごく奇抜ではありますが。」
[女子ら]ということは、中学生か高校生か、とにかく若い人だろうから、その[おっぱい]に[権力]とやらが備わるのはもう少し先。
で、[なつふく]といえば薄地で風通しの良い服で、その襟やら袖口やらの隙間から、そのぅ[権力]の兆しが、漂い出てきてる、かな?
この歌はそこまでうがった見方はしなくていいのでは?」
確かに、この歌は[おっぱいの権力]について直接には言ってない。でも、ここは「短歌による座談会」なんでしょ。
歌は歌自身の言葉しか使えない。だから繋がりは僕らが見つけ出す、っていうコンセプトでしたっけね。」
司会「[おっぱい嫌い]? そりゃ確かに哺乳類として問題でしょうが、そのことがここまでの話にどうつながるのでしょう? 」
[揺らすだけ]という表現もすごいですねえ。いかにも無力そうな悲しみも感じさせつつ、子どもを抱いて揺らしてあやすイメージと、暖簾に腕押しのイメージがまじりあってて……。」
調べても見つからないので、落語で聞いたのかもしれません。」
いいこと? 哺乳類は、生まれたとたん授乳という[おっぱい]による支配がはじまるのよ。
これは単なる母性の歌じゃないですね。」
で、大の字を書けば大文字山になる。→大文字焼きみたい。
と、そこまではつながったんですが、[どこにでも火は点く]っていう飛躍は追いきれません。」
歌を、完成状態になる前の、イメージがちらかった状態までアンドゥし、リドゥしてみる。」
これ、AIのカン!
・[鼻]から入って(鼻胃カメラ的に)身体を内側から探り、
・欲求が[胃カメラ]になるといえば、男性の性欲。
でもそれは、例の[口が裂けても言っちゃいけないこと]なんだよ。」
やれやれ思えば遠くへ来たものだなあ……。
2023年5月5日金曜日
短歌による座談会2 お相撲さん
司会
アシスタント
鱶助くん(ふかすけ 深読みサポートAI)
という架空の三人を置き、
「短歌和歌たちが自発的に参加する座談会」
というコンセプトで編成してみました。
作者の歌人が参加するのでなく、歌自身が参加するという、ちょっと変わった趣向です。
追記:今回については、「スタッフが喋りすぎて、短歌の座談会になってない」とのご批判を短歌のみなさまよりいただきました。次回から改善いたします。
では、
とざいとーざーい
◆お題 お相撲さん
司会「[お相撲さん]って短歌にときどき詠まれていますよね。すごくいっぱい、というほどではないけれど、ああ、見たことある、と思いませんか。そしてそれは、けっこう印象深い歌ではありませんか。
というわけで、来たれ お相撲さんの歌!」
■身体の存在感(肉感・質感・体積・重量など)
司会「お相撲さんといえば、なんといっても身体の大きさ、重量感。」
エレベーターに乗らむとすれば現身の相撲取りひとりが先に乗りゐる
ルビ:現身【げんしん】
小池光『時のめぐりに』
杉山モナミ「かばん」2003・1
この歌の飛躍はそういうものを足下に見ながら一気に飛び越すものであり、読者はそれをうすうす感じる。その[うすうす]効果が、[わかる気がするけれど、何をわかったかわからない]なのである。歌のタイプのひとつだ。」
淡雪をあるけば臍があたらしい 空と抱きあう力士に出会う
ルビ:臍【ほぞ】
東直子『青卵』2001
まずは上の句の[淡雪をあるく]。なんとなくリフレッシュ感がある。
[淡雪]=[雪](世界を塗り替えるイメージ)
+[淡](そのかすかな始まりのイメージ)
さて、下の句。[空と抱きあう力士]は、そんな感じの力士と実際に出会ったのか、はたまた[淡雪]から生じたまぼろしなのか、わからないがいずれにせよ重要なのは、[空と抱きあう力士]というフレーズが、以下2点でイメージを適切に増幅した心象表現であることだ。
司会「(うう……。短歌のヘソの奥で変な猫に遭っちゃったよ。どうか早く次の歌、来てください。)」
日高堯子『雲の塔』2011
前川佐重郎『孟宗庵の記』2013
坂野信彦『銀河系』1982
[天秤だったら思いっきり傾くような感じ]は言い得て妙だと思う。テレビのむこうは肉体MAXでこちら側はゼロ。そういうアンバランスが詠まれている、と思う。アンバランスというのは、普通なら危ういわけで、たとえばイカダなら転覆する。けれども、テレビごしの別世界どうしのアンバランスでは何も起きない。そういう境界の特質みたいなことも味わえると思う。
田谷鋭『乳鏡』1957
(カラー放送の本格化は1960年。)
(Instagramのアカウント 気ままに短歌を詠む86歳との自己紹介あり)
松木秀『親切な郷愁』2013
東直子「短歌研究」2016・3
笹井宏之『てんとろり』2011
でも、だとして、結句の[三連勝や]はどう解釈しましょうか。」
司会「えー、まずは[リリィ、リリィ]。
伊藤一彦『遠音よし遠見よし』2017
世界の天地。人間は[前頭]という位置づけで、地上にどっしり足をつけて立つ。この身体感覚、新鮮ですよねー。」
「前頭四枚目より筆頭をただちに前線へ派遣せよ」
どこかの戦争。その戦況が悪くて、力士をどんどん前線に送っているらしい。そんな内容にも驚きますし、相撲番付で戦況の逼迫度合を表現していて、これってかなり珍しい使いかたではないですか。
これらの歌は[手紙魔まみ イッツ・ア・スモー・ワールド]という一連にあります。このタイトルは言うまでもなく、ディズニーランドのアトラクション[イッツ・ア・スモール・ワールド]から1字消したものです。
嘗めかけの飴がティッシュの箱にある世界へもどる道をおしえて
つまり、一連の主人公的存在である[まみ]が眠って、こういう夢にワープした、という設定です。」
鱶助「ディズニーランドの[イッツ・ア・スモール・ワールド]というアトラクションは、いろいろなワールドを楽しく巡るものだ。そして、この連作にもそれとなく、世界間を行き来するとか、同じ場所にいても別の存在へと変化して所属が変わるとか、そういうことが書いてある。例えば一連最初はこの歌だ。
アシ「(窓から逃げようとしている。なんと、すぐそこまで海が迎えに来ているのだ。)
力士はいかにも強そうですが、身体が大きすぎて、太平洋戦争当時の徴兵検査では[丙種合格]という最低ランクになることが多かったとか。招集される可能性が高いのはふつうなら最高ランク[甲種合格]の人なのでしたが、戦況悪化に伴い、ランクの低い人も招集されるようになり、戦士した力士もいたそうです。
それと、戦時中、野球や競馬は中止されても大相撲は継続していて、召集中の力士の番付地位は守られていたそうです。
まだまだ考えたいことがいっぱいあるけれど、本日はこれにて打ち止めー打ち止めー。
2023年3月27日月曜日
短歌による座談会1 駅の名前
同じ題材の短歌を集めてみると、いろんな人がバラバラに詠んだ歌なのに、歌たちが雑談をしているように見えてきます。
今回は、駅の名前について詠んでいる歌を集め、架空の司会とアシスタント、および、鱶助くん(ふかすけ 深読みサポートロボ)を置いて、座談会ふうに並べてみました。
■美しい駅名、素敵な駅名
司会「駅名にはけっこう美しいのがありますよね。好きな駅名とか、心惹かれる駅名とかありませんか。」岩田正
数へあぐれば螢田・富水などとよき駅名多しわが小田急線
『レクエルド 想ひ出』1995
秋月祐一
天空橋といふ名の駅よいつかしら降りてみる日はくるのだらうか
『この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく』2020
司会「アニメの世界のようですね。」
路線図の涯に名前の美しい駅があるのは希望と似てる
ルビ:涯(はて)
『千夜曳獏』2020
司会「言われてみればそうですね。逆にイマイチな駅名だったら……、いや考えないでおきましょう。」
司会「えっ? そうだったんですか。最初は単に、実在の駅名を繋いでエスカレートして険悪になっていく場面をあらわすという趣向、と思いましたが、実は、〝現実から架空へと転じていく〟という進行要素も含まれていたんですね。」
■通過駅
司会「一瞬で通りすぎてしまう通過駅。停車はしても降りない駅。そういう縁の濃淡も詩心をくすぐりますね。」
光栄堯夫
降りずして過ぎてしまった駅の名を呟くいくつ秋の彼岸に
『向こう側』2009
司会「降りなかった駅名の回想は、ご縁を結べなかった人がたくさんいるという感慨にかさなるんですね。」
田村元
急行が置き去りにせし駅の名をいとほしみつつ夏逝きにけり
『北二十二条西七丁目』2012
司会「こちらは駅名と季節感。通過駅や降りなかった駅との縁の薄さが、季節の移ろいに重なるんですね。季節と駅名を関連付ける歌は、ここまでに夏と秋とがありましたが、春と冬はどうなんでしょう。」
この歌のおもしろさは、目的地が月であるらしいこと。銀河鉄道777の絵が一瞬よぎる視覚効果がそれとなくあること。そして、駅名で道草をくっているうち、月が置き手紙みたいになった、という魅力的な言い回しをしていることである。
=道草をくった→《月が半分に欠けるほど時がたち》→《月で待っていた何者かは去ってしまって》→月が置き手紙みたいに見える。
総合して、寓話めいた脳内思考の経緯をそれとなく想像さ……せる…よう…」
2023年1月26日木曜日
雑件摘録3★語感の素敵 2022年後半~2023年前半
語呂や語感はばかにできない。その効果は説明し難くて、微妙です。
ことばことばと何回も言っていると、脳裏のそのまた裏あたりに「小鳩」がちらっとよぎります。ませんか?
語呂の良し悪しは、声に出し耳で聞いて、自分の言葉のセンスにまかせて味わうもので、良し悪しの感覚には個人差もあるようです。それでも、同じ母国語(私は日本語)の下地を共有している人の多くに、一定の語感効果をもたらす現象はある。
といったことに関連する雑感を、ときどき書き留めます。
■横書きにしないほうがいい 2023・1・26
語感じゃないけど、こういうのは横書きにしないほうがいい。
冬の日は墜ちーぽんの葦のこる
富澤赤黄男
つい「ちーぽん」と読んでしまう。
■「うつしみ」といえば 2022・11・10
「うつしみ」は、現在生きている身、という意味。
ただ、はじめて耳にしたのは小学生のときで、当時、駄菓子屋さんで売っていた「うつし絵」みたいなものかと思いこんだ。
だって、古典の勉強をしていなければ、「うつし」という語は「移す」「写す」としか聞こえないでしょ。
移し絵=糊を塗った台紙に絵が印刷してあり、水にぬらして物にはりつけてそーっと紙をはがすと絵が転写される。(なお、透ける紙を使って絵を写し描く遊びも「うつし絵」と言っていた。)
小学生のときは文意を理解していなかったと思うが、その前後にもはかない雰囲気が漂っていたのだろう、
「この世界にあるのはその投影された「影」であり(=本体がどこかにある)、
私もみんなもその「影」であり、
死んだら次のからだにしんみりしんみりのりうつっていく」
みたいな感じで、それを視覚化して思い描いた。
さて、あとから正しい意味を知ったわけだが、その後も、「うつしみ」というと同じ絵が思い浮かび、その不思議な儚さを切り離すことはできない。
が、無理に切り離す必要を感じないほどしっくり来る。これって私だけなのだろうか。
「うつろう」という語とも語感の親和性が高いし。
うつしみのうつろひ繁したとふれば肺腑沛然(はいぜん)たる雨の中
塚本邦雄『黄金律』1991
みたいな感じ。
ついでに、なぜか、「雨」とセットになりやすい感じ、だったりしますか?
雨季ゆゑに濃く太き雨そそぐときうつしみ吾の憂ひは消えよ
佐藤佐太郎『群丘』
気のせいかも。
うつしみの歌をもう少しあげておこう。
うつしみの吾(わ)がなかにあるくるしみは白(しら)ひげとなりてあらはるるなり
斎藤茂吉『ともしび』
うつしみの人皆さむき冬の夜の霧うごかして吾(わ)があゆみ居(を)る
佐藤佐太郎『帰潮』
うつしみという語うかびてよぎりたり眠りの中にまだ街はあり
三枝浩樹『時禱集』2017
うっすらとインクの染み うつしみのわたしをうつすことのない空
北川草子『シチュー鍋の天使』
影絵より影をはずししうつしみはひかり籠れる紙に向きあう
内山晶太『窓、その他』
うつしみを滝落つるなりきみあらぬこのうつしみを華厳の落つる
水原紫苑『武悪のひとへ』
■枕詞の一方通行 2022・11・2
枕詞は言葉の不思議ちゃんだ。そう思える要素がいくつかあるが、そのひとつが一方通行であることだ。
どういう意味かというと、「『ぬばたまの』は闇や黒にかかる、『ひさかたの』は光や日にかかる」などと覚えるけれど、
逆に、「○○にかかる枕詞って何かないか?」なんて考えてもほぼ無駄である。こちらの都合で探してもたいていは、無い。
いや、「逆引き」できるサイトは一応ある。だから「『秋』にかかる枕詞ってあるかな」というふうに探すことはできる。(「露霜の」だって。)
でも、枕詞は人が意図して作ったわけではない。
だから「『ぬばたま』が黒にかかるなら、赤にかかる枕詞もあってしかるべき」と思っても、そもそも、そういう具合にいろんなことをカバーしようという意図から用意されたものではないのだ。
冗談で、「しろたえの詩論ぬばたまの句論」と書いてみて、いい対句だと思ったのもつかのま、「『しろたえの』は『ころも』とかにかかるものじゃんか!」と気づいてしまった。
ここは「たくづのの詩論」などとすべきだろうが、それだと語感的にはいまいちになる。
でもね、それでも、枕詞にはなんだか魅力があってそそられ続けてしまいませんか。
しろたえの殺し文句と人乳は薄いからすすり続けてしまう
高柳蕗子 「かばん」2015・6
■意味がわからないとモンスター化 2022・10・27
医学か何かの論文のタイトルでこういうものがありました。「血中に一過性に出現した易動度が速い小腸型アルカリ性ホスファターゼ」
なんか血管の中に青いナメクジが生じて意外な速さで前進を巡るような恐ろしさだ。
■偶然の出会い とんとんトモダチ 2022・10・27
急に寒くなったので、そろそろと思って手袋を探し出し、テーブルにちょっと置いたところ、近くにトントンつながりのトモダチがいた!!
ミトン・クルトン・レキシントンで記念撮影しました。
「とん」がつくものはいろいろありますが、この組み合わせは総合的に語呂が良いし、ジャンルのバラバラ具合も絶妙だと思います。
●最初の「ミトン」を「布団」にかえてみる。アクセントが変わる。
ミトン・クルトン・レキシントン ↘ ↘ ↷
フトン・クルトン・レキシントン ↗ ↘ ↷ こころなしか弾みが悪くなる。
●レキシントンをバドミントンにしてみると?
ミトン・クルトン・バドミントン
アクセントは同じだが、「レキシントン」のクリアーな響きが、「バドミントン」では濁って重くなり、魅力激減。
●「クルトン」が「リプトン」だったらどうかなあ?
ミトン・リプトン・レキシントン
アクセントは同じだけれど、口があまり動かない「クル」のおとなしさに比べて「リプ」はシャープな刺激的な語感。
というわけで、この先、もし忘れなければ、
ミトン・リプトン・レキシントン
を超える組み合わせを探し続けたいと思います。
■挙動不審 2022・10・19
「挙動」はほぼ「挙動不審」という形で使われる。
単独なら、立ち居ふるまい、動作というだけの意味だが、「挙動」だけでも、きょろきょろするような落ち着かない不審なふるまいを想起させる。
■同音の脳内変換と語感 2022・9・22
同音異義語はおもしろい。
全く異なるものが同音という縁で脳内で出会う。意識することなく取り違えることもあるし、ダジャのようにわざと混乱させて楽しむこともある。
完全な同音でない場合は、「似ている」と意識されないままに、言葉Aに言葉Bのイメージが重なりそうになることが多い。
重なるのではなくて、重なりそうになるのだ。
つまり脳内に変換候補としていくつかの言葉が想起され、「これかな?こっちかな?」と吟味する過程でそれが起きる。
たとえば、「ノウゼンカヅラ」という花の名前は、最初の「ノウ」がなんだかすごく重い。
「ノウ」は、「脳」「濃」「能」「悩」という、比較的重い(少なくとも軽くない)イメージの語に変換されそうになる。
■コロナ感染症の名称 2022・9・15
「新型コロナ感染症」っていまだに言っていますが、いつまで新型って言うつもりでしょう。
適切にネーミングする余裕がなく話題になっちゃうと、もうそのまま使い続ける、っていう例ですね。
変異株の名前も、地名だったりギリシャ文字だったり、数字だったり、一貫させられなず不揃いなのもやむを得ないと思います。
■略称スマホ 2022・9・13
最近は商品やイベントなどなど、何でもネーミングの時には略称まで考えるのが普通らしいですが、以前はそうでもなかったと思います。
スマートフォンがみるみる世の中に行き渡ったころ、略称を考える機会がないまま、しかたなくスマホになっていったように感じました。
「スマートフォン」は長すぎる。
でも、「スマフォ」や「スマフォン」はなんだか言いにくい。
「スマホ」「スマホン」なら言いやすいけれど、「フォ」を「ホ」にすることにちょっと抵抗があり、しかも、「スマ」はなんだか「須磨」に通じ、そこに「ホ」をつけると「穂」か「帆」を連想しやすくて、それはモロ日本画的な和風のひびきだから、新しい電子機器に少し似合わないじゃないの、もっとこう、キリっとピカっとした略称にならないのかしら。
--と世のひとびとは無意識にかるーく悩んでいなかったか?
でも、誰かがテレビとかで「スマホ」と言い放ち、それを聞いて「ま、いいや、スマホでも、気の利く和風の秘書さんみたいで」というふうに一気に傾いた気がしている。
(完全に私見)
2022年12月22日木曜日
レア鍋日記 2022年
■【レア鍋】視神経
視神経って普通はあんまり見たことがないものですから、これは目に浮かべるための一般的比喩表現ではなく、感覚的に目に浮かびそうな気がする(特に3首目)、というレベルのビジュアルです。実体験でなく、イメージ体験を喚起する、というか。
※このサイトは、類想句を避けるなどのトラブルを防ぐことを目的の一つとしているようです。また、「無断で利用することは著作権上の例外を除き著作権者の許諾が必要」と書いてあります。それは法律通りです。著作権侵害は特別な場合を除いて親告罪ですから、このサイトに作品を置いてあるということは、無断使用はトラブルになるぞという警告の意味があると思えます。だたその法律なかで例外として「引用」は認められています。情野千里の句は、既に他のサイトでも引用されていて代表作のようですし、「引用」の条件を意識しなが引用させていただきました。
■【ニャン鍋】エゴサーチ
新しい人の歌の入力が足りないのかも。
睦月都 2012年短歌研究新人賞応募作
エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)
上記の
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)
田中濯『氷』
フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)
■【レア鍋】フォロワー
懶い河獺(出典調査中)
■【レア鍋】リスニングテスト
2022年10月18日
本日の全短歌データ123,825首
「リスニングテスト」なんてなさそう、と思いながらきまぐれに検索してみたら3首もあった。
リスニングテストが聞こえるアメです「始め」と言ったらなめてください
伊舎堂仁『トントングラム』2014
リスニングテストの漏れる校舎から欧米人の巨大な会話
岡野大嗣「詩客」2017-06-03
君の声思い出してるリスニングテストの問いと問いのあいだに
近江瞬『飛び散れ、水たち』2020
■【レア鍋】ヒメジョオン
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』2015
ヒメジョオン摘む人の誰もいなければ胸の高さに咲く線路脇
田宮智美『にず』2020
■【ニャン鍋】スクロール
本日の短歌全データ122,966首
スクロールして行く度に果ては来てまた銀紙を噛んだ味だよ
久哲 うたのわH22.10.28
携帯の着信記録スクロールすればひらたく癒されている
江國凛(出典調査中 だいぶまえの「かばん」)
■【ニャン鍋】招き猫
本日の短歌全データ 122,622首
藤原龍一郎『19××』1997
招き猫の無表情の爪紅し すぐ分かります分かるはずです
東直子『十階』
なお、俳句と川柳も1句ずつ。
招き猫水中の藻に冬がきて
波多野爽波『骰子』
招き猫は造花ばかりが描いてある
中村冨二『千句集』
■【レア鍋】蓋がない
2022年7月9日本日の短歌全データ 122,622首
「蓋がない」ということを詠む歌は以下3首でした。
(検索文字列「蓋がな」「蓋のな」「蓋の無」「蓋な」「蓋無」で抽出し無関係なものを取り除いた。)
蓋のない記憶と思ふ 菜の花の瓶詰めにぽんと山の香がして
田村元『北二十二条西七丁目』2012
この海にぴったりとした蓋がないように繋いだ手からさびしい
虫武一俊『羽虫群』
蓋のない深い器に沈みたい無心にならず轆轤をまわす
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』
なお俳句は見つからず、川柳は1句ありました。
蓋のない顔で笑ってくれました 徳永政二
■【ナイ鍋】社会の窓
難しい題材ですが、うまく生かした歌があったら教えてください。
テキ屋きて社会の窓からいわし雲
大沼正明『異執』2013
「ズボンの前」みたいな言い方はどうかな。
1首発見。
へこをせし昔男は知らざらむズボンに前あきのファスナーあるを
浜田蝶二郎『からだまだ在る』1997
「チャックが開いている」的なことを詠む歌を探してみました。
「チャクラ」だ。けど、なんだか近い!
「だばだばにあなた漏れてる気をつけて胸のチャクラが開きっぱなしよ」
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015
チャックが開いた、けど背中のだった……。
唐突に下の名前で呼ばれたら背中のチャックが開いてしまうよ
岩倉曰『harako』2022
歌はすてきだけど、これも違いますね。
きみの背の感触残るわが背骨 チャックを開くように別れき
田中槐(出典調査中)
「eXamine Your Zipper(チャックを確認しなさい)」の略だとか。ほんとかな。
あと、社会転じて「理科の窓」とかいう人もいるらしい。
■【ワン鍋賞】ぺっちゃんこ
2022年6月21日本日の闇鍋短歌データ122,733首
日月の球体通り過ぎてゆきぺっちゃんこなり母の死顔
渡辺松男(出典調査中)
なお俳句でも1句発見
駅の裏死んでるバッタぺっちゃんこ
久留島元「詩客」2012-11-16-11863
■【ニャン鍋賞】算段 【レア鍋賞】散弾
やわらかな風の散弾てのひらに五つ集めて風に戻した
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013
車中泊の朝に迎える散弾を喰らったような窓の凍結
中山俊一『水銀飛行』
夏の柳の枝は太くて木洩れ日が散弾みたいに頬辺を差す
久真八志「かばん」2013・9
■【ワン鍋賞】蹴っ飛ばす
■【ワン鍋賞】四捨五入
■【ニャン鍋賞】うぬぼれ
僕たちはうぬぼれ屋だからうぬぼれを売る 売り上げでひんしゅくを買う
宇都宮敦 朝日新聞夕刊2011年5月24
子供は要らない
ザマア見やがれ
ルビ:自惚【うぬぼれ】
夢野久作『猟奇歌』(「夢野久作全集3」ちくま文庫1992)
■【ニャン鍋賞】大女
大女死すごと大き物語死して世界は荒涼とせり
松村由利子『大女伝説』2010
秋の夜を大女(おおおんな)となり怒りおり重たき足に月光を踏み
梅内美華子 『若月祭(みかづきさい)』1999
なお「大男」は以下5首発見。
大男が梅雨明けちかき街に来てそらの滑車をまはしはじめる
永井陽子『ふしぎな楽器』1986
チョコレートバーほどの電話取り出して大男話すいたくやさしく
米川千嘉子『一葉の井戸』2001
大男の黙狂ひとり暁【あかとき】の野辺に世界を支えて佇てり
山田消児『アンドロイドK』1999
ご近所の歯医者へ来たりて大男の太きおゆびに歯を抜かれたり
花鳥佰『しづかに逆立をする』2013
大男の欠伸チェロの黒ケース光は肩でうけとめるしかなく
東直子「短歌研究」201010
■【ナイ鍋】おっちょこちょい
2022年3月22日闇鍋短歌データ121526首
「おっちょこちょい」という語を詠み込んだ歌なし。
東直子「かばん」200208
そそかしい走禽即死 空涙そおっと注ぐ蘇生せぬよう
高柳蕗子『あたしごっこ』
■【ワン鍋賞】粗忽
藤原龍一郎『切断』
■【ニャン鍋賞】あんぽんたん
2022年3月22日ルビ:青中【あおなか】、水中【みずなか】、安本丹【あんぽんたん】
依田仁美『異端陣』2005
■【レア鍋賞】まぬけ
■【ナイ鍋】おちおち
闇鍋短歌データ121101首
「不安でおちおち眠れない」などの「おちおち」を使った歌は、今のところ1首も収録されていない。
■【ワン鍋賞】てんてこ舞い
2022年2月13日
闇鍋短歌データ120980首
久保芳美「かばん新人特集号」2010・12
■【レア鍋賞】~をあなたに
2022年2月11日
闇鍋短歌データ120980首
古谷空色(出典調査中:だいぶ前の「かばん」誌)
いつかまた逢えなくなるねと天界のブラックリストと野望をあなたに
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012
かばんにはもれなく風、それももう目も眩む熱風をあなたに
鈴木智子『砂漠の庭師』2018
■【ワン・ニャン・レア鍋賞】「○行」
2022年2月9日
闇鍋短歌データ120980首
うち「あ行」2首 「か行」3首 「さ行」3首 「た行」1首 「ら行」1首 「ぱ行」1首
うへへへと忘却の彼方でカクレンボああお下劣なおまえのあ行久保芳美『金襴緞子』金欄椴子
ネアンデルタールの水墨画のようなア行音 永遠といいaeonという井辻朱美『クラウド』2014
かき・くるみ・きのこ・くり・くこ・こめ・かうじ秋はカ行の稔り豊けし丹波真人『花顔』
名字にはたぶんカ行が似合うひと日射に耐えていたまっ白く柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012
炎暑の車道が膨らみそうでわたしには月の世界とカ行のひとが柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012
サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘俵万智『サラダ記念日』
そら、スカイ、スペース、砂漠 サ行とはとても広くて一色なもの松木秀『RERA』
サ行音爽やかなものと感受せぬ金がざらざら一首を読めりルビ;金【キム】大口玲子(出典調査中)
潮騒のやうなるサ行の訛りかなわたしは寿司も獅子も大好きルビ;寿司【すす】 獅子【すす】逢坂みずき『虹を見つける達人』
崇福寺 正覚寺下 思案橋 サ行の音の響きあふ町ルビ;音【おん】三輪良子『木綿の時間』2016
た行しか知らぬ私は「土」と言う あなたのために「好き」の代わりに大嶋航(出典調査中)
手の中のラ行のひとにさくら散るはんらはんらやあぶなうつし絵依田仁美『異端陣』2005
ぽんと、ごくふつうの大きさの声で言うとききらめくあなたの「ぱ」行杉山モナミ 「かばん」202112
「○行」を詠むということは、語感・音感をとらえ、それを読者と共有できる、という強気が必要だ。読者はその強気をうれしく感じる。そういう題材だと思う。
闇鍋短歌データ120980首
うち「あ行」2首
■【ニャン鍋賞】義憤
2022年1月24日闇鍋短歌データ120240首
うち「義憤」2首
■【レア鍋賞】ピースサイン
闇鍋短歌データ120240首
うち「ピースサイン」3首
近江瞬『飛び散れ、水たち』
■【レア鍋賞】ほじる
闇鍋短歌データ120240首
うち「ほじる」4首
久保芳美『金襴緞子』
まずすべてほじくってから食べたきを西瓜の種は奥にまだある
染野太朗『人魚』2016
レーズンパンのレーズンすべてほじりだしおまえをただのパンにしてやる
戸田響子『煮汁』
相部屋の感想聞けば「鼻くそがほじれないんだ。鼻くそたまる」







