2022年12月22日木曜日

レア鍋日記 2022年

 →レア鍋日記とは


■【レア鍋】視神経


2022年12月22日
本日の闇鍋全短歌データ 124,027首

「視神経」って短歌によく使われている気がしていましたが、私の「闇鍋」には3首しかありませんでした。

解体の部品を垂らすケーブルは視神経のごとしも 絡まる
加藤治郎『昏睡のパラダイス』1998

視神経は交叉したまま モノレールの窓に青葉の街暮れてゐる
魚村晋太郎『銀耳』2004

視神経の束をあげたいヘッドライトは夜の湿度を切りひらくだけ
平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』2021

まず、それぞれにすごくビジュアルとしていい歌だ、と感じます。
視神経って普通はあんまり見たことがないものですから、これは目に浮かべるための一般的比喩表現ではなく、感覚的に目に浮かびそうな気がする(特に3首目)、というレベルのビジュアルです。実体験でなく、イメージ体験を喚起する、というか。


「視神経」という言葉からなんとなく、この写真みたいな感じに細かく枝が広がっているものを思い浮かべてしまうんですが、いかがでしょう?
上記の短歌も、少なくとも1首目,2首目はこれみたいです。

そこまで考えて、現物は見たことはない、だから実体験の喚起ではないけど、画像でこういうものを見たかもしれない、だとすると普通の比喩かしらと思えてきてしまいました。

気になって調べてみたら、その結果、確かにそういう画像はありました。

が、おどろいたことに、枝分かれしているのはどうやら血管であり、視神経ではないみたいです。

なんだこれ? 問題発生かしら???
まあでも、詩歌的には、事実より通念、そしてなにより語感やイメージがものをいうのであって、上記の作品を貶めるつもりは毛頭ありません。念のため。

さて、ついでなので、俳句と川柳も探してみました。
俳句は私の「闇鍋」と、現代俳句協会のDBその他大型DBでも探しましたが、一句もありませんでした。

川柳では、「闇鍋」で次の1句を発見。
視神経に一本薔薇の木が混じる
情野千里『川柳作家全集49』
視覚イメージとしては上の方に置いた短歌作品と似た捉え方をしているようです。
「視神経」のイメージ描写として非常に美しく、「視神経」という語のイメージ領域を拡大する作品だと思います。

「おかじょうき」のDBにはナシ。

なお川柳データバンク※には上記情野千里の句のほかに2句ありました。興味がある方はご自分で見てきてください。
※このサイトは、類想句を避けるなどのトラブルを防ぐことを目的の一つとしているようです。また、「無断で利用することは著作権上の例外を除き著作権者の許諾が必要」と書いてあります。それは法律通りです。著作権侵害は特別な場合を除いて親告罪ですから、このサイトに作品を置いてあるということは、無断使用はトラブルになるぞという警告の意味があると思えます。だたその法律なかで例外として「引用」は認められています。情野千里の句は、既に他のサイトでも引用されていて代表作のようですし、「引用」の条件を意識しなが引用させていただきました。

 

■【ニャン鍋】エゴサーチ

2022年10月20日
本日の全短歌データ 123,831首

「エゴサーチ」は2首あった。感触としてはもっとありそうな語。
新しい人の歌の入力が足りないのかも。

エゴサーチにあつらえむきの日に階下ふたり離別の手順を終えて
睦月都 2012年短歌研究新人賞応募作

エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)

上記の

エゴサーチ+リツイートって死体から髪を抜いてる老婆っぽくない?
伊舎堂仁(出典調査中 作者サイトより)
をみて、ついでに「リツイート」も調べた。この他に4首発見。

「釜石にいくためにガソリンが欲しい」リツイートできず涙流しぬ
田中濯『氷』

フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)

会心のツイートしたあとRT確認しにゆく自意識あわれ
ムラムラと承認欲求湧く夜は褒められツイートRTせり
上記2首 笹公人「詩客」2012-10-12

なお「ツイート」(「リ」なし)は6首あった。

■【レア鍋】フォロワー

フォロワーがbotと死人で14人 誰に届くこともないリ・ツイート
懶い河獺(出典調査中)

を見て、ついでに検索してみたら「フォロワー」はこのほか2首あった。

青空を鳥のかたちに切り抜いて摑む/離れるフォロワーの数
大西久美子『イーハトーブの数式』

陸上部女子限定のグループ名「さくらんなー」はフォロワー多数
千葉聡『短歌は最強アイテム』2017

■【レア鍋】リスニングテスト

2022年10月18日
本日の全短歌データ123,825首

「リスニングテスト」なんてなさそう、と思いながらきまぐれに検索してみたら3首もあった。

リスニングテストが聞こえるアメです「始め」と言ったらなめてください
伊舎堂仁『トントングラム』2014

リスニングテストの漏れる校舎から欧米人の巨大な会話
岡野大嗣「詩客」2017-06-03

君の声思い出してるリスニングテストの問いと問いのあいだに
近江瞬『飛び散れ、水たち』2020


■【レア鍋】ヒメジョオン

2022年8月26日
本日の短歌全データ122,967首


もう誰も月を覚えていない昼はるじおん咲きひめじょおん咲き
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』2015

ヒメジョオン摘む人の誰もいなければ胸の高さに咲く線路脇
田宮智美『にず』2020

折ればほら茎に空洞がないものはヒメジヨヲンよとわが庭の花
永田和宏『置行堀』2021

ありふれた野草で、見た目は地味だけど名前が素敵、というねじれがあるから、もっと詠まれているかと思ったが、意外にも3首だけ。

■【ニャン鍋】スクロール

2022年8月9日
本日の短歌全データ122,966首

スクロールして行く度に果ては来てまた銀紙を噛んだ味だよ
久哲 うたのわH22.10.28

携帯の着信記録スクロールすればひらたく癒されている
江國凛(出典調査中 だいぶまえの「かばん」)

■【ニャン鍋】招き猫

2022年7月9日
本日の短歌全データ 122,622首

招き猫倒れしという写実歌のおそろしければこの花吹雪
藤原龍一郎『19××』1997

招き猫の無表情の爪紅し すぐ分かります分かるはずです
東直子『十階』


なお、俳句と川柳も1句ずつ。

招き猫水中の藻に冬がきて
波多野爽波『骰子』

招き猫は造花ばかりが描いてある
中村冨二『千句集』

■【レア鍋】蓋がない

2022年7月9日
本日の短歌全データ 122,622首

「蓋がない」ということを詠む歌は以下3首でした。
(検索文字列「蓋がな」「蓋のな」「蓋の無」「蓋な」「蓋無」で抽出し無関係なものを取り除いた。)

蓋のない記憶と思ふ 菜の花の瓶詰めにぽんと山の香がして
田村元『北二十二条西七丁目』2012

この海にぴったりとした蓋がないように繋いだ手からさびしい
虫武一俊『羽虫群』

蓋のない深い器に沈みたい無心にならず轆轤をまわす
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』


なお俳句は見つからず、川柳は1句ありました。

蓋のない顔で笑ってくれました 徳永政二


■【ナイ鍋】社会の窓

いや、無いだろうとは思いましたが、俳句で見かけたので、負けたくない、とも思って探したら、やっぱ短歌のほうは無かった。(笑)
難しい題材ですが、うまく生かした歌があったら教えてください。
2022年6月23日

俳句
テキ屋きて社会の窓からいわし雲 
大沼正明『異執』2013

「ズボンの前」みたいな言い方はどうかな。
1首発見。

へこをせし昔男は知らざらむズボンに前あきのファスナーあるを
浜田蝶二郎『からだまだ在る』1997


「チャックが開いている」的なことを詠む歌を探してみました。
「チャクラ」だ。けど、なんだか近い!

「だばだばにあなた漏れてる気をつけて胸のチャクラが開きっぱなしよ」
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

チャックが開いた、けど背中のだった……。

唐突に下の名前で呼ばれたら背中のチャックが開いてしまうよ
岩倉曰『harako』2022


歌はすてきだけど、これも違いますね。

きみの背の感触残るわが背骨 チャックを開くように別れき
田中槐(出典調査中)

なお、英語ではXYZと言うことがあるらしいですよ。

「eXamine Your Zipper(チャックを確認しなさい)」の略だとか。ほんとかな。

あと、社会転じて「理科の窓」とかいう人もいるらしい。

■【ワン鍋賞】ぺっちゃんこ

2022年6月21日
本日の闇鍋短歌データ122,733首

日月の球体通り過ぎてゆきぺっちゃんこなり母の死顔
渡辺松男(出典調査中)


なお俳句でも1句発見

駅の裏死んでるバッタぺっちゃんこ
久留島元「詩客」2012-11-16-11863

■【ニャン鍋賞】算段 【レア鍋賞】散弾

2022年4月27日
本日の闇鍋短歌データ122,432首

「算段」なんて言葉詠まないだろうと思ったが、意外にも2首発見。

この病気では死にませんよといふなれば生きる算段をせねばならず
斎藤史『秋天瑠璃』
 
水撒きのホースより虹 乙女らは恋の算段 葉陰に揺れて
村田マチネ『バベル』

一方、「散弾」はけっこうありそうだと思ったが、さほどではなく、3首だった。

やわらかな風の散弾てのひらに五つ集めて風に戻した
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013

車中泊の朝に迎える散弾を喰らったような窓の凍結
中山俊一『水銀飛行』

夏の柳の枝は太くて木洩れ日が散弾みたいに頬辺を差す
久真八志「かばん」2013・9

■【ワン鍋賞】蹴っ飛ばす

2022年4月21日
闇鍋短歌データ121602

春は何か蹴っ飛ばすようにして起き上がり前に進むような季節だよな、と思い。
「蹴っ飛ばす」「蹴り飛ばす」を、ひらがな表記等も含めて検索したら、なぜかたったの1首しかありませんでした。

先生に蹴り飛ばされて伏す床にトイレスリッパ散らばっていく
鳥居『キリンの子』2016

珍しい語でもないのになんで少ないのかしら。

2022年12月追記
すみません。「蹴飛ばす」「蹴とばす」なら16首もありました。


■【ワン鍋賞】四捨五入

2022年4月17日
闇鍋短歌データ121602

年齢を四捨五入で繰り上げて憂えるような馬鹿を死刑に
枡野浩一(出典調査中)

■【ニャン鍋賞】うぬぼれ

2022年4月12日
闇鍋短歌データ121602

うち「うぬぼれ」or「自惚」という文字列を含む歌は以下の2首だけでした。

僕たちはうぬぼれ屋だからうぬぼれを売る 売り上げでひんしゅくを買う
宇都宮敦 朝日新聞夕刊2011年5月24

自惚の錯覚すなはち恋だから
 子供は要らない
  ザマア見やがれ
ルビ:自惚【うぬぼれ】
夢野久作『猟奇歌』(「夢野久作全集3」ちくま文庫1992)

■【ニャン鍋賞】大女

2022年3月30日
闇鍋短歌データ121568

うち「大女」(かな表記を含めて検索)を含む歌は2首でした。
「大きな女」など他の表現は対象外。

大女死すごと大き物語死して世界は荒涼とせり
松村由利子『大女伝説』2010

秋の夜を大女(おおおんな)となり怒りおり重たき足に月光を踏み
梅内美華子 『若月祭(みかづきさい)』1999



なお「大男」は以下5首発見。

大男が梅雨明けちかき街に来てそらの滑車をまはしはじめる
永井陽子『ふしぎな楽器』1986
チョコレートバーほどの電話取り出して大男話すいたくやさしく
米川千嘉子『一葉の井戸』2001
大男の黙狂ひとり暁【あかとき】の野辺に世界を支えて佇てり
山田消児『アンドロイドK』1999
ご近所の歯医者へ来たりて大男の太きおゆびに歯を抜かれたり
花鳥佰『しづかに逆立をする』2013
大男の欠伸チェロの黒ケース光は肩でうけとめるしかなく
東直子「短歌研究」201010
 

■【ナイ鍋】おっちょこちょい

2022年3月22日
闇鍋短歌データ121526首
「おっちょこちょい」という語を詠み込んだ歌なし。

5月17日追記「そそっかしい」を2首発見。
頬に一針縫いあとのあるきみのそのそそっかしさを海に還すね
東直子「かばん」200208
そそかしい走禽即死 空涙そおっと注ぐ蘇生せぬよう
高柳蕗子『あたしごっこ』

■【ワン鍋賞】粗忽

2022年3月22日

原因をつきつめてのちはかなきはつねとおもえば粗忽の釘ぞ
藤原龍一郎『切断』 

■【ニャン鍋賞】あんぽんたん

2022年3月22日

あぽぉーあぽぉーあんぽんたんのあっぽぉぱあでんじゃあでりしゃすAPPLE-PIE
神﨑ハルミ
(ピコ太郎よりはるか昔の作品。発表時期は定かではないのですが、作者がこの筆名を使っていたのははるか昔だから。)

青中の水中のああ自在片安本丹の背鰭峻烈
ルビ:青中【あおなか】、水中【みずなか】、安本丹【あんぽんたん】
依田仁美『異端陣』2005

■【レア鍋賞】まぬけ

2022年3月22日

うたうならデスクの隅の海綿のようにまぬけに孔をひらいて
佐藤弓生

あほまぬけ あほまぬけとぞビラ数へあほまで終りぬ九十三枚
※下線部分は傍点
安田純生『白珠』

護岸工事の音もまぬけな月曜日へたくそだった今日の仮病を
法橋ひらく『それはとても速くて永い』2015

■【ナイ鍋】おちおち

2022年3月17日
闇鍋短歌データ121101首
「不安でおちおち眠れない」などの「おちおち」を使った歌は、今のところ1首も収録されていない。

■【ワン鍋賞】てんてこ舞い

2022年2月13日
闇鍋短歌データ120980首

ちかごろ耳にしなくなったコトバ。
短歌に使われることも少なそうだが、どうだろうと思って探したら、1首だけ発見。

オリジナルのダンスを華麗に踊りますてんてこ舞いと呼ばれております
久保芳美「かばん新人特集号」2010・12

■【レア鍋賞】~をあなたに

2022年2月11日
闇鍋短歌データ120980首

「忘れな草をあなたに」という歌があるけれど、そういうふうに末尾が「~をあなたに」である短歌ってどうかなあと思って探してみたら3首あった。

うつくしき雨降り込めるフィルムの発火してゆくさまをあなたに
古谷空色(出典調査中:だいぶ前の「かばん」誌)

いつかまた逢えなくなるねと天界のブラックリストと野望をあなたに
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

かばんにはもれなく風、それももう目も眩む熱風をあなたに
鈴木智子『砂漠の庭師』2018

「~をあなたに贈る」など、「~をあなたに」が末尾でない例ならもっとありますが、すごく違う感じです。

■【ワン・ニャン・レア鍋賞】「○行」

2022年2月9日
闇鍋短歌データ120980首
うち「あ行」2首
  「か行」3首
  「さ行」3首
  「た行」1首
  「ら行」1首
  「ぱ行」1首

うへへへと忘却の彼方でカクレンボああお下劣なおまえのあ行
久保芳美『金襴緞子』金欄椴子

ネアンデルタールの水墨画のようなア行音 永遠といいaeonという
井辻朱美『クラウド』2014

かき・くるみ・きのこ・くり・くこ・こめ・かうじ秋はカ行の稔り豊けし
丹波真人『花顔』

名字にはたぶんカ行が似合うひと日射に耐えていたまっ白く
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

炎暑の車道が膨らみそうでわたしには月の世界とカ行のひとが
柳谷あゆみ『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012

サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく君の傘
俵万智『サラダ記念日』

そら、スカイ、スペース、砂漠 サ行とはとても広くて一色なもの
松木秀『RERA』

サ行音爽やかなものと感受せぬ金がざらざら一首を読めり
ルビ;金【キム】
大口玲子(出典調査中)

潮騒のやうなるサ行の訛りかなわたしは寿司も獅子も大好き
ルビ;寿司【すす】 獅子【すす】
逢坂みずき『虹を見つける達人』

崇福寺 正覚寺下 思案橋 サ行の音の響きあふ町
ルビ;音【おん】
三輪良子『木綿の時間』2016

た行しか知らぬ私は「土」と言う あなたのために「好き」の代わりに
大嶋航(出典調査中)

手の中のラ行のひとにさくら散るはんらはんらやあぶなうつし絵
依田仁美『異端陣』2005

ぽんと、ごくふつうの大きさの声で言うとききらめくあなたの「ぱ」行
杉山モナミ 「かばん」202112

「○行」を詠むということは、語感・音感をとらえ、それを読者と共有できる、という強気が必要だ。読者はその強気をうれしく感じる。そういう題材だと思う。


■【ニャン鍋賞】義憤

2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「義憤」2首

天の川って義憤に似てるひかりの波しゅるるる消えるまで抱きしめる
杉山モナミ「かばん」2019・08

義憤にも似た感情を壜に詰め色とりどりのピクルスにする
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』

■【レア鍋賞】ピースサイン


2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「ピースサイン」3首

喰ひのこされるまでゐてどうだつたのかザリガニらの鋏のぴいす
平井弘(出典確認中)

うまいこと利き手で鼻をかむひとの空いた片手でするピースサイン
山階基 (出典確認中 風にあたる拾遺2012-2015)

十年後に見て騙されたりしないよう小さめのピースサインにしとく
近江瞬『飛び散れ、水たち』

■【レア鍋賞】ほじる

2022年1月24日
闇鍋短歌データ120240首
うち「ほじる」4首
(「ほじくる」だけなら2首)

憎まれたグリンピースはほじくられチキンライスは冷めていったの
久保芳美『金襴緞子』

まずすべてほじくってから食べたきを西瓜の種は奥にまだある
染野太朗『人魚』2016

レーズンパンのレーズンすべてほじりだしおまえをただのパンにしてやる
戸田響子『煮汁』

相部屋の感想聞けば「鼻くそがほじれないんだ。鼻くそたまる」
俵万智『未来のサイズ』

■【レア鍋賞】くずもち

2022年1月19日
闇鍋短歌データ120240首
うち「くずもち」4首

橋を渡る娘たちはみな髪をまとめくずもちの中のあんこのごとし
小川佳世子『ゆきふる』2016
   くずまんじゅうのことかな?

一折のくず餅下げて会いにゆく そうですねえと答えるために
東直子『青卵』2001

み墓べに今日はまゐりぬ亀井戸の葛餅買ひて帰り来にけり
古泉千樫

君の好きな葛餅と颯の好きなウルトラマン持ち 361号室へ
永田淳『竜骨(キール)もて』2020

2022年9月13日火曜日

雑件摘録2★外国語

■Google Homeは「ヘグーグ」で通じた!

2022・9・13

Google Home のウエイクアップワード「オーケーグーグル」は8音。
呼びかけとして日本語的には長すぎる。

「タカヤナギさん」の7音が許容maxじゃないかな。

調べたところ、「オーケーグーグル」じゃなくて「ヘイグーグル」、さらには「ヘイブーブー」でもいいと書いてあった。

そこをなんとか、とばかり「ヘグーグ」を試したら、通じた!

アクセントは2音目を大げさに。
最初の「ヘ」は弱く、そしてさらに、あるかなきかの「ィ」を添えるといいようです。(笑)。


■万次郎流

2022・9・13

外国語のカタカナ表記は〝万次郎流〟も併記してほしい

これってもしかして、もとの英語の発音に近い?

耳で覚えたジョン万次郎は、「水」は「ワラ」、「夕方」は「イヴネン」と言っていたそうです。

(ニューヨークにいた私の母も万次郎流で、
アメリカ人にはわかるらしいけど、宇宙なまりの日本語みたいでした。)

でも、それはそれで混乱するわけで、
だから、外国語をカタカナで表記する場合は、

「ウォーター(ワラ)」

というふうに書いてくれたらうれしいな。


■ガチガチの日本語的カタカナ英語

一方、この真鍋博士のものすごく日本的なカタカナ英語も素敵。

https://www.youtube.com/watch?v=BUtzK41Qpsw&t=3039s


博士が話すからがんばって聞き取ってもらえるのかもしれないけど、これでもどうにか伝わるんなら、勇気でるなあ。


■日本なまりの英語

2022・9・13

どこかで見たんですが、なまるのは日本だけじゃないわけで、国ごとの特徴が出る。

https://www.youtube.com/watch?v=QkZxdfcQqfI

これは面白い動画です。


国ごとのなまりの人気投票というのがあるらしく、
それによると日本語なまりは11位なんですって。


2022年8月20日土曜日

ミニ69 雲の短歌(種類別)

雲の名前、巻積雲とか積乱雲とか、けっこう紛らわしいです。

でも、雲の通称は、なにかの形状になぞらえていてわかりやすい。入道雲・羊雲・いわし雲など、生き物になぞらえた名称が特に好き。

ふとそんなことを考えたので、雲の名称の入った短歌を集めてみました。

※作者独自の形容は集められたらいいのですが、探すのがたいへんで、たまたまし見つけたものがあれば、末尾に掲載します。

※名称でなく、「夏雲」(夏の雲)、「雨雲」(雨をもたらす雲)、「夕焼け雲」(夕焼けの色に染まった雲)、「鉛雲」(鉛色の雲)というように普通に形容したようなものは除く。

※雲の名前で短歌に詠まれる一番人気は「飛行機雲」だが、数が多いし、飛行機の軌跡に生じるもので、ちょっと異質だと思うので、別の機会に取り上げたい。

以下分類してカウント、そのなかから歌をピックアップします。 

本日の短歌データ総数 122,967首


積乱雲:せきらんうん 49首

強い上昇気流の影響で鉛直方向へ発達する巨大な雲。雲底から雲頂まで12,000 メートルを超えることもある。通称、入道雲、雷雲。

 入道雲 22首
 積乱雲 15首
 雷雲 12首

大空に何も無ければ入道雲むくりむくりと湧きにけるかも
北原白秋『雲母集』1915

靴の紐結ぶおまえの両肩を入道雲がつかんでいたよ
穂村弘『ドライ ドライ アイス』1992

元気でいてという願いはぼくのわがままで 積乱雲の切手はる
フラワーしげる 『ビットとデシベル』2015

積乱雲の鼓動見ながら坂のぼる日傘の膜をまとへるきみと
宇田川寛之 『そらみみ』2017

積乱雲山分けすれば頭からずぶぬれになる不運な八月
植松大雄『鳥のない鳥籠』2000

海の家の裏に隠れてこっそりと入道雲に空気を入れる
松村正直『駅へ』2001

いつわりのなき勢いに伸びあがる入道雲の真白きちから
久々湊盈子 『鬼龍子』2007

軍事用ヘリコプターがはつなつの入道雲に格納される
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013

縁側で濃いめのカルピス飲み干した入道雲がゆっくりほぐれる
藤本玲未『オーロラのお針子』2014

韻文をわが武器となし見あげれば積乱雲の翳の濃密
藤原龍一郎 『202X』2020

一通も出さないひとがついてくる入道雲が湧きあがる山
柳谷あゆみ 『ダマスカスへ行く 前・後・途中』2012


巻積雲:けんせきうん 36首

白い小さな雲片が多数の群れをなし、魚の鱗や水面の波のような形状をした雲。 絹積雲とも書く。 通称鱗雲、鰯雲、さば雲。

 巻積雲 1首
 いわし雲 18首
 うろこ雲 14首
 鯖雲 3首



目瞑ればまなうら寒くこがしつつ鯖雲なだるるふるさとなりき
河野裕子『森のやうに獣のやうに』1972

人に告げざることもおほかた虚構にて鱗きらきら生鰯雲
ルビ:鱗【いろこ】
塚本邦雄 『魔王』1993

一のわれ死ぬとき万のわれが死に大むかしからああうろこ雲
渡辺松男『泡宇宙の蛙』1999

会議室の窓にひろがる鰯雲 ギリシャ以前に多数決なし
小島ゆかり『憂春』2005

なにか撃たれやしなかつたかぽぽぽぽと鰯雲その集まるあたり
平井弘『振りまはした花のやうに』2006

みあげれば空いちめんのうろこ雲 秋は巨大な魚となりぬ
小島なお『乱反射』2007

あれこれとやりっぱなしの鰯雲そらに浮かべて髭剃られおり
奥田亡羊『亡羊』2007

鰯雲のうろこのなかへ釣り針のように突っ込んでゆく旅客機
笹井宏之『てんとろり』2011

うろこ雲いろづくまでを見届けて私服の君を改札で待つ
山田航『さよならバグ・チルドレン』2012

いわし雲が育ってひつじ雲になる 子どもに嘘を言いたくなりぬ
吉川宏志 (出典調査中)


高積雲:こうせきうん 29首

 小さな塊状の雲片が群れをなして、斑状や帯状の形をつくり、白色で一部灰色の陰影をもつ雲。通称まだら雲、ひつじ雲、叢雲(むら雲)

 羊雲 18首
 叢雲 10首
 はだら雲 1首


ひつじ雲それぞれが照りと陰をもち西よりわれの胸に連なる
小野茂樹『羊雲離散』1968

ひつじ雲風が集めている昼に変えられていく世界のかたち
小守有里『こいびと』2001

羊雲ひろく連なり現世にいまだ護るものなき身のかるし
横山未来子『水をひらく手』2003

指五本人間病に細りけり暗暗俺の心臓むら雲
ルビ:人間病【にんげんびょう】 
依田仁美『異端陣』2005(『乱髪~Rum-Parts』1991)

初期化されたたましいのように天心を吹かれてすぎる羊雲たち
井辻朱美『クラウド』2014

むらくもをやぶいて月はぬれぬれと潭の深きへ鰭を反せり
ルビ:
潭【ふち】
佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』2015

こころとふ閉ぢこめてみてもたいせつないちばん奥に浮くひつじ雲
渡辺松男『雨(ふ)る』2016

おしよせる夜の羊雲だきあえばあなたったら腕一本多い
飯田有子(出典調査中)


巻層雲:けんそううん 17首

 白いベール状の雲で空の広い範囲を覆うことが多い。通称うす雲。

 巻層雲 1首
 薄雲 16首


おもひ出は霜ふるたにに流れたるうす雲の如かなしきかなや
斎藤茂吉『赤光』1913

青き果のかげに椅子よせ春の日を友と惜めば薄雲のゆく
ルビ:果【み】
北原白秋『桐の花』1913

病み起きの眼に追ふ鳥のはるばると吸はれて白いうす雲があり
小玉朝子『黄薔薇』1932

秋空の絹層雲はたかくひろくクレープを焼く僕らの上に
ルビ:絹層雲【けんそううん】
早坂類『風の吹く日にベランダにいる』1993

待てど待てど人生おわるまで待てど返事は来ないそんなうすぐも
東直子「短歌研究」2011・8


積雲:せきうん 15首

 晴れた日によく発生する、綿のような形をした雲。 綿雲。

 積雲 3首
 綿雲 12首


夜に見れば不二の裾廻に曳く雲の白木綿雲は海に及べり
ルビ:裾廻【すそみ】 白木綿雲【しらゆふぐも】
北原白秋『海阪』1949

瀬戸内の海のさざ波 青空のはぐれ綿雲 南こひし
ルビ:南【みんなみ】
高野公彦『水苑』2000

(映写室の壁をたゆたう綿雲はアラル砂漠の朽ち船のゆめ)
島なおみ 第4回歌葉新人賞応募作 2005 

わたぐもに さうね つつまるるこの感じ うえつとどりいむはあけがたにあり
渡辺松男『蝶』2011

積み上げてなだれんばかりの積雲はゲネラルパウゼのようなあかるさ
井辻朱美『クラウド』2014


巻雲:けんうん 10首

 刷毛で伸ばしたように細い雲が散らばった形の白い雲。細い雲片はぼやけず輪郭がはっきりしていて、絹のような光沢をもつ。絹雲、すじ雲、はね雲、しらす雲。

 巻雲 3首
 すじ雲 7首


魚籃坂千年まへの穂すすきを照らして白き巻雲うかぶ
ルビ:魚籃坂【ぎよらんざか】
高野公彦『水苑』2000

巻雲の鰈の骨の透きとおり天とはつくづく遠いところ
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』2010

すじ雲のようなシールのはがし跡 お願い だけどいったい何を
雪舟えま『たんぽるぽる』2011


アーチ雲:アーチぐも 5首

 厚い積乱雲や積雲の下にあるアーチのような形をした雲。ひっくり返した巨大なお椀や皿の半分だけが見えているような形。通称ロール雲、棚雲。

 棚雲 5首


能登の海ひた荒れし日は夕づきて海にかたむく赤き棚雲
佐藤佐太郎 『地表』1956

手つなぎて夕棚雲を見てをりつ智紀はひだり結哉はみぎ
ルビ:夕棚雲【ゆうだなぐも】 智紀【ともき】 結哉【ゆうや】
(詞書:長男次男)

喜多昭夫『青霊』2008

※以上の分類名称と説明は気象用語としてのものですが、短歌に出てくる雲の名称と内容は気象用語としての意味においてあまり厳密なものではありません。


おまけ 何かの形に見える雲

「雲」+「かたち」で検索し、雲をなにかの形になぞらえている歌をピックアップ。
そのほかの表現で雲の形をあらわした歌もたくさんあると思いますが抽出していません。


誰も知らない島のかたちで雲が行く。させられたことはわすれなさいね
兵庫ユカ『七月の心臓』2006

ふっくらと河馬のかたちの雲浮く日ハローワークに行くのはやめる
藤島秀憲『二丁目通信』2009

鳥のかたち魚のかたちの雲浮かび未だ人なるわれは地に在り
徳高博子『ローリエの樹下に』2012

本州のかたちをしたる雲うかぶ 四国の雲はそのそばに添ふ
小池光『思川の岸辺』2015

Vサインしてる巨大なしろくまのかたちの雲の下に我が町
土井礼一郎「かばん」2017.7

おし花のかたちに雲がうかびをり諦めながら寄り(死ね)ゆくこころ
藪内亮輔『海蛇と珊瑚』2018

わがめぐりかぜの触手は織りなして雲ははるかな刺繍のかたち
井辻朱美(出典調査中)

恐竜のあぎとのかたちの雲浮びおまへを初めておまへと呼びき
山田富士郎(出典調査中)

人体のかたちの雲といってから恥ずかしそうに小石を蹴った
吉野裕之(出典調査中)


今日は、こんなところで。

2022年8月14日日曜日

雑件摘録1 標語 

■標語 夕暮れの一番星は反射材 20220・8・14


古くから詩歌に使われている言葉は、いわばいろいろな味を引き出す調理法のレシピがいっぱいある。使われてこなかった言葉にはそれがないから使いにくい。詩歌の言葉ではないという違和感が強い人もいる。

解決法のひとつに「両者を組み合わて使う」というのがある。

これは役所で目にしたポスターで、いかにも奥ゆかしく目立たないように貼ってあった。


夕暮れの

一番星は

 反射材


全日本交通安全協会・毎日新聞社・警察庁


事故にあいにくくなるよう「反射材」使用を奨励する標語である。
詩歌表現が目的ではない。

だが、さっき言った「両者を組み合わて使う」の効果的な例であって、抒情的説得力は標語としての効力を高めていると思うし、詩歌表現としてもけっこうすぐれていないだろうか。

「反射材」が夕暮れの地上の星だというのはすごく風流なとらえかただし、しかもこの星たちは動き回るから、ホタルみたいな美しい光景が目に浮かぶ。


星のレシピ 〝地上の星〟

「夕暮れ」「星」は、詩歌に読みこなされて、メインのおかずにもなるし、他の食材を引き立たせることもできる万能食材のような詩材だ。

「反射板」という詩的に無愛想な単語も、これらとセットであれば、違和感は薄く、新鮮で印象的な表現になる。

そして「星」という語のレシピで、
「地上の光るものの比喩になったり呼応したりする」
というものがある。

新しいところでは、「地上の星」という歌もあるように、地上で輝くものや、転じて地上の人の業績の比喩になっているが、この〝地上の星〟というレシピ、実はうんと古くからある。

紀貫之の伝説「ありとほし」

紀貫之が旅の途中、馬上のまま蟻通神社の前を通り過ぎようとしたら急にあたりが曇って雨になり、乗っていた馬が病気になって倒れてしまった。

そのあたりに「蟻通し」という神様がいると聞いて貫之は歌を詠んだ。

かきくもりあやめも知らぬ大空にありとほしをば思ふべしやは

曇り空に星があるとわからないように、このあたりにありとほし様のお社があると気づけませんでした、という感じで非礼をわびているが、「蟻通し」を「蟻・と・星」に読み替えてそれとなく蟻を星に重ねてイメージアップしているのもちょっとプラス効果だ。
視覚的にも、地上に蟻が点々と散らばるさまを反転して夜空の星にしているような感じで、よくできていると思う。

双方向性

ところで、〝地上の星〟というレシピには、地上からは見えない、というニュアンスが加わることもある。

空の星は見上げれば見えるが、地上の星は同じ地上からは見つけにくい。
だから空から見守っていてくれるといい、という願いがこもる場合がある。
その思考は、空の星を見上げることで間接的に地上の星を思うことでもある。

こういう双方向性も星のレシピのひとつだと思う。


2022年8月9日火曜日

ちょびコレ15 泳法

「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、

「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)


 

■泳法

泳法名のある短歌を探していてこの歌をみつけました。


なまえさえしらないかたち抱きしめるキッチンまでは背泳ぎでいく
杉山モナミ 『ヒドゥン・オーサーズ 』2017(Kindle 19人の作品集)



他にもけっこうたくさんあるので、各泳法ごとに少しずつピックアップします。


背泳

やがて来るピリオド思い背泳ぎで見送っている夜の飛行機
俵万智 『チョコレート革命』1997

父さんが死んだら一緒に住もうよと背泳ぎに来る母の言葉が
平山繁美『手のひらの海』2019


クロール

さようならいつかおしっこした花壇さようなら息継ぎをしないクロール
山崎聡子『手のひらの花火』2013

梅雨空のプールの水を割つてゆくあなたの凍るやうなクロール
林和清『匿名の森』2006


平泳ぎ

平泳ぎ競ふあたまが描きゆくサインカーブとコサインカーブ
光森裕樹『鈴を産むひばり』2010

平泳ぎで七夕飾り掻き分けて老婆になってもわたしだろうな
工藤玲音『水中で口笛』


そのほか

ソラリスの海で犬かきする夜の母とか星がわんさか浮かぶ
柳本々々「詩客」2018-05-05

泳ぐとき影と離れるからだかなバサロキックでめざす大空
光森裕樹『鈴を産むひばり』2010

バタフライ・ドルフィン・キックで切ってゆく水と光のバウムクーヘン
穂村弘『シンジケート』1990


2022.8.9

ちょびコレ14 鳩の足

 「ちょびコレ」とは、

「ミニアンソロジー」というほどの歌数はなく、

「レア鍋賞」ほど少なくもない……、
そんな、ちょっとした短歌コレクションです。

(以前は「随時更新」として、いくつかまとめていましたが、
いま、1テーマ1ページの方式に移行しています。)


■鳩の足

鳩と言えば声を詠む歌が多いが、足を詠む歌もよく見かけるような気がして検索すると、けっこうぞろぞろと出てきた。

鳩はどんな鳥ですか、特徴は、と聞かれたら、たいがいは灰色、大きさは20センチぐらい、ククゥククゥとくぐもった声、しばしば公園や駅前など人の多い場所に群れている、みたいなことをあげるだろうか。
じゃあ鳩の足はなぜ詠まれるのか。

 細い小枝のような足で、足取りがけなげな感じがする。冬は寒かろうと思うのも自然だろう。
 ただし、小枝のような足は鳩に限ったことではない。人間の前で歩き回ってみせる鳥はあんまりないから、結果として、しばしば鳩の足が人の目にとまるのかもしれない。


良きことのあるとぞ鳩ら向きかふるわつしよわつしよと桃色の足
米川千嘉子 『一葉の井戸』

わがめぐり次々と鳩が降り立ちて赤き二本の足で皆立つ
奥村晃作『鴇色の足』

鳩の足赤いまばらな人影のなかをひたひたひたひたあかい
本田瑞穂『すばらしい日々』

殺羽根の管にをさめて白鳩の足に結ふべき小き文よ
ルビ:殺羽根【そぎはね】管【くだ】白鳩【しらはと】結【ゆ】小【ちひさ】文【ふみ】
森鴎外 「明星」M41・1

ひとあしずつあゆむさだめのハトたちが地球の砂利をまたぎてゆくよ
井辻朱美(出典調査中)

鳩の脚の寒さへ贈るくつしたの打ち棄てられて冬がふかまる
内山晶太「詩客」2017-04-08




片足の鳩

 鳩の足を詠む歌を探すと、片足の鳩を詠む歌が見つかる。

跛脚の鳩がきのふよりわが庭に雌をともなふよき転機あれ
ルビ:跛脚【かたあし】
斎藤史『風に燃す』

餌ひろう一本脚の鳩がいてじれったくなればすぐに飛びたつ
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』

片脚のない鳩のいた野草園 肉体という勇気を思う
小島なお『展開図』


 鳩は、釣人の残した糸が足に絡まって、足を失うことがある。
 実際に見たことがある。
 たまたま立ち寄った公園の池のほとりに多くの鳩がいて、半分ぐらいが片足だった。ほんとうにかわいそうだった。
 餌がほしくて近くに来たので、とってやろうと手を出すと逃げてしまった。
 片足があるうちはまだいい。両足をうしなって横たわっているものもいた。
 糸を捨てていった釣人に、この光景を見せたい。
 目に入った範囲の糸だけでも片付けたかったが、そんななまやさしい量ではなかった。あとから公園あてにハガキで投書した。



2022.8.9

2022年8月7日日曜日

ちょびコレ 大仏

 ここは、日々なんとなく見つけたちょっとした短歌コレクションの置き場です。


ミニアンソロジーにしたいけれど、そこまでの歌数がない。でも、レア鍋賞ほど少ないわけでもない……。

そんな感じのときここに書いておきます。


■大仏

大仏のマトリョーシカは君のため原寸大でわかりあうため
小野田光『蝶は地下鉄をぬけて』


○大仏ってなんとなくちょっと好きなので検索してみました。

[検索文字列:大仏・だいぶつ・鎌倉+仏orほとけ・かまくら+仏orほとけ・奈良+仏orほとけ]

本日の全短歌データ122956首の中で14首みつけました。
上記はそのなかでイチオシ。大仏という題材の魅力のひとつは物体としての存在感だと思いますが、この歌はその捉え方が特に新鮮。

○この検索で見つけた歌の中でもっとも有名なのはおそらくこの歌。

鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな
ルビ:御仏【みほとけ】なれど釈迦牟尼【しゃかむに】は美男【びなん】
与謝野晶子『恋衣』


以下いろいろな大仏の歌。与謝野晶子の歌に応答するようなうたがあります。また背中の窓も注目ポイントのようです。


かまくらの大きほとけは青空をみ笠と著つつよろづ代までに
著【き】
伊藤左千夫『左千夫歌集』1928 

葉がくれの蝉の声やみて大仏の御顔をてらすゆふづく日かな
木下利玄(出典調査中)

目路さむき冬田向うの山もとに夕陽を浴びたる大仏殿の屋根
木下利玄(出典調査中)

新芽立つ谷間あさけれ大仏にゆふさりきたる眉間の光
ルビ:新芽【にひめ】
中村憲吉『林泉集』

なでしこや大仏道の道ばたに君が捨てたる貝がらの咲く
吉井勇(出典調査中)

あたたかく大仏殿の鴟尾に照る陽よこの先のことはわからぬ
永井陽子『てまり唄』1995

かまくらやみほとけなれど釈迦牟尼はパンチパーマでピアス痕あり
望月裕二郎『ひらく』2009

さほどまで美男にあらず鎌倉の大仏さまは喰はせものなり
小熊秀雄(出典調査中)

横顔は多少美し大仏の背中に窓があいてゐるとは
小熊秀雄(出典調査中)

大仏の背中に二つ窓があるあれは翼の生えてゐた痕
大西久美子『イーハトーブの数式』

鎌倉のだいぶつさまの背にある窓ひらきたし頰杖つきたし
ルビ:背【せな】
北山あさひ『崖にて』2020

慣性の法則はもう壊れたし動いていいよ奈良の大仏
木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013





俳句もいくつかありましたが、川柳の次の句が特に印象に残りました。

大仏の右の耳から鳩が出る
内田真理子『ゆくりなく』2010


2022・8・7 




右は冗談で書いてみた絵。




悪乗りしてもう1枚! 泳げ大仏君



左はなんとなく描いてみた絵
手が難しい。いつか上手になったらかきなおしたい。